再会
自分の何倍もあるようなススキを物ともせず、少年は駆け抜けていく。
恥ずかしながら、私は何度もずっこけそうになりながら置いていかれまいと必死だった。
ようやく少年が歩みを止めてくれたのは、私が「もう限界」と言おうとした矢先。
2mはあろうかと言うほどのススキ畑は急に終わりを迎え、ススキが刈られた土地に急に現れたのはこじんまりとした日本家屋であった。
「よかった。お家があったんだ。」
なーんだ。てっきり変な世界に迷い混んでしまったのかと思っていた。
異世界ーー冴えない人生を送る奈々が現実逃避としてよく読んでいたのが異世界の物語だった。
まさか、現実に起こるはずは無いと分かっているからこそ、ああいう物語は良いのだ。
いくら冴えなくても、奈々には大切な家族もいるし実家の愛犬も大事だ。
そんな急にすべてを投げ出して違う世界になんてとても考えられないだろうと思っていた。
でもよかった。
何でこんなところにいるのかは全くの不明だけどこの家の形からして日本であることは間違いなさそうね。
所で少年はここの子供だろうか。
子供に耳と尻尾つけさせるなんて、やや悪趣味な気もするけど・・・。
心の声には重い蓋をして家の軒先へ歩みを進める。
ふと回りを見渡すと、あの少年はどこかにいなくなってしまっていた。
「お礼、いい忘れちゃった。」
まあいいか。きっとまた会えるだろう。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいますか?」
奈々はすりガラスの引き戸の玄関を3回ノックして家の人を呼んでみた。
すると、「はーい」と返事があるや否や玄関の引き戸がガラッと開く。
・・・誰もいない?
そう思った瞬間、磁石が引き付けられるようにからだが勝手に家のなかに入っていってしまった。
「うわわわわわっ、ごっごめんなさーい!からだが勝手に・・・」
決して不法侵入ではない!
それだけはアピールさせて!
そう思いながらもどんどんと家のなかを進んでいってしまう。
奈々の足は前後に動いておらず、二足とも揃えたまんま。
ほぼ直立不動の状態で引っ張られていく。
「もう、いや~~~~~~~!」