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勇者Lv99  作者: 鍋島ひろき
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プロローグ

 心地よい夜風が頬を撫で燭台のロウソクの炎を揺らす、椅子に深く腰掛け揺れる炎をぼんやりと眺めなていると思い出したくもない事を思い出してしまう。

持っていたスキットルに入っていたウイスキーを記憶を拭うように軽くあおってみるが胃がカーっと刺激されるだけで何も変わらない。

ピーティーな香りの混じったため息を漏らしていると過去の記憶が蘇ってきた


 思えば初めはとても幼稚な事だったのかもしれない、大人からしたらとるに足らないような事だったのかもしれないが子供の時分にはそれがとても辛かったし初めのケチが一生ついて回るとも思ってなかった。


俺は―――「イジメ」られていた。


思い出したくもないが思い出してしまう最初の嫌な記憶は小学生の頃だ。

俺のお袋は外国人で俺は所謂ハーフ、オヤジは日本人だが何かと忙しい仕事なもんで転勤することもあり我が家は住まいを移すことがあった。

丁度幼稚園から小学校に上がる際にオヤジが都会から地方へと転勤となりそれに合わせて俺の新しい生活も新天地でということになり、慣れない地で右も左も分からないがピカピカのランドセルを背負ってこれからの学校生活に期待を抱きながら小学校に通った。

 入学式から暫くして違和感を覚えた、クラスメートの視線がおかしい・・・全員ではないが一部から違和感のある視線をぶつけられている気がすると幼いながら思った、きっと気の所為だとさほど気にもとめないでいた、この頃は友達も僅かながら出来て特に不自由もなかった。

 2年生になったある時初めて女の子に遊びに誘われた、小学2年生の頃だし特に恥ずかしがることもなくそれを受けれいて遊ぶことにする。

クラスメートの女の子3人を家に招き入れるとお袋が「モテモテでいいわね」なんて茶化して来たのを覚えてる、2階の自室でみんなでゲームで遊んで暫くして俺がトイレに立ち、物の3分程だったハズ…部屋に戻ってくると一人も居なくなってた、何処にいったんだろうと部屋を見回しているとすぐに異変に気がついた・・・

 机の上の物やゲームやランドセルの中身が窓から捨てられていた、頭の中が混乱してグルグルと周り胸の鼓動が早くなり締め付けられる・・・なんで?どうして?そんなことが頭の中を駆け巡って行く。

整理のつかないまま投げ捨てられたものを回収しに行く、玄関に靴がない事に気が付きとっくに出ていったんだなと察する。

捨てられたものをガチャガチャと回収していると悲しがこみ上げてきて涙がホロリとこぼれた、自室に戻り呆然としているとお袋が入ってきて「お友達は?」と聞いて来たので「帰った」とだけ告げた。

お袋に心配をかけたくないという気持ちがあったからいま起こった事は伏せておいた。

翌日足取り重く学校に向かうと上履きを隠されるという定番の嫌がらせがあり、教室にはいってみれば机の中のモノがゴミ箱に突っ込まれていた。

犯人はわかってる、例の3人に何故あんな事をした?アレもお前達の仕業か?と問いただしたがしらばっくれられる、先生に言いつけてやるといい職員室に言って先生に洗いざらいぶちまけてやった、先生からお叱りが行くと思っていたが先生からはもう一度よく話し合ってみろと言われるだけで先生からのお咎めは無かった。

この頃から俺に対するイジメが始まりどんどんエスカレートしていった、何故こんな事をする?俺がなにをしたと聞いても「死ね」「ウザイ」と言われるだけで理由を聞かされることはなかった。

 小学生特有の●●菌なんて言われる嫌がらせされ汚物扱いされて自分が汚いのではないかと思いこむようになった、ハーフである自分が浅黒い肌をしてるせいじゃないだろうかと思い肌が真っ赤になるまで擦ったりもした…この時から自分が触れると他人は不愉快になると想うようになる。

 イジメを受け友達も離れ孤立していく自分、両親にも言えず巧妙に心配をかけまいと隠し続けてきた・・・お袋やオヤジが心配してくれる度に胸が傷んだが両親という支えのおかげでなんとかやってこれた。

 ある時、早帰りでいつもより早く帰宅するとお袋が泣いていたお袋はなんでもないと誤魔化して笑顔を作っていたが俺の脳裏に嫌な予感がよぎった…そういう勘はよく当たる。

耐え難きを耐え自分の環境を帰るべく私立中に進学する事を決意し日々勉学に励んでいたある日…一本の電話が・・・お袋が車に轢かれた・・・即死だったらしい

頭が真っ白になり身体が震えた、すぐにお袋が担ぎ込まれた病院に行き変わり果てたお袋を見て涙が止めどなく溢れ嗚咽が止まらなくなった、職場からすっとんできたオヤジも呆然としてただお袋を見つめていた・・・。

 オヤジはその後手際よく通夜等の手配を進めた、突然の訃報に親戚らが国内外からすっとんできて俺とオヤジにお悔やみ申し上げていったがショックが強すぎてよく覚えていない。

通夜の席で近所の人や先生もきてくれた焼香のあとに物陰に座り込んでぼーっとしてると大人達の会話が聞こえてくる・・・近所の人だった。

 なんとなく聞き耳を立てるととんでもない事を言ってるのが聞こえてきた、「死んで良かった」「死んで清々した」と、ニヤニヤと笑いながらそんな事を言っている大人達を見てなんでお袋がそんな事を言われなければならないんだと思い唖然とし、はっ、と思い出した・・・お袋がしばしば泣いていたがまさか・・・きっとお袋も俺のように周りから疎まれていたのだろう、だがこうなってはなにもできない、悔しくて悔しくて吐き気がしていた。


 淡々とお袋の49日も終わり遺骨はお袋の母国のタイに納骨する事になった、お袋を轢いた犯人も未だに分からず心の支えを半分失った俺は幾らか自暴自棄なっていき学校も休みがちになり引きこもりになっていた、オヤジもお袋を失った辛さを汲んでくれたのか不登校児になった俺に特に厳しいことを言うこともなかった。

引きこもって数ヶ月がたったある日、することもなく自室から空を眺めているといきなり窓が粉々に砕けた、驚いて身を引き窓の外を眺めると走り去っていく制服姿の男が5人・・・きっと俺が通うはずの中学やつだろう、学校に行かずいつの間にか卒業して中学になっていたがイジメは家にいてもついてくるようだ。

心の平安というのは俺にはきっと訪れないのかも知れないとそんなネガティブな事を考えながら陰鬱な気持ちで日々を過ごしていた。

中学1年の冬・・・寒さが厳しくカラカラに空気が乾いた夜に何やら焦げ臭い香りが鼻をついて目が覚めるとなんと家の周りから火の手があがっていた、オヤジを叩き起こし着の身着のまま脱出して消防を呼ぶも鎮火した頃には家は黒焦げになっており俺は住処を失った。

 アパートを借りそこに居を移した、失火というわけでもないのに何故火の手があがっていたのか甚だ疑問であったがその後の調査で放火らしいと言うことが判明した。

 まさか・・・とまた脳裏に嫌な予感が浮かんだ、そこまでするだろうか・・・イジメにしちゃ度が過ぎないか?考えれば考えるほどそんな予感がしてくる…。嫌な予感を確かめないといけないと思い行きたくない学校へ行く決心をした。


 もう2学期も終わろうとしてるのに初登校と妙な感じだが先生に一言挨拶を終えてから教室に向かう、横開きの扉をガラリとあけると一斉にこちらを驚いたようにクラスメートが見る。

 訝しげにする者やニヤニヤと訳ありな顔をする者もいる、とりあえず自分の席の場所を聞くも無視されるのでそれらしい席につくと、ピシャリと顔に丸めた紙を投げられた、なにか書いてあるので紙を開いてみると・・・「死ね」とだけ書かれていてそれを投げたであろう連中がヘラヘラ笑っていた。

 放課後先生に呼ばれ色々と今後について話をされ教室に戻ってみると誰だか名前も知らない女子が一人いて「ねぇ・・・」と話かけてきた。

名前も知らない彼女はどうやら俺と小学校も同じで"事情"を知っているらしく心苦しく思い俺に打ち明けることにしたらしい、彼女が言うにはやはり俺の家は焼かれたらしくしかも度胸試し的にゲーム感覚で焼かれたとか・・・やっぱりなと嫌な予感が的中して不思議と思ったほど驚きもしない。

そのとんでもないゲームに関わった連中の事を聞き出し彼女に礼を言い帰路につくと沸々と怒りがこみ上げてきた、誰に頼ってもどうせどうにもならないと思い込んで自分で復讐してやると心に決めた。

 翌日カバンに金槌を忍ばせ登校した、一日中復讐の事を考えながら過ごし放課後、連中の集まる部室に殴り込んだ、声を荒げて

「お前らが・・・お前らがやったのか!!!!!!」

と怒りに振るえ問いただすと

「なんで焼け死んでないんだよ?焼け死んだらちょーウケたのに、ギャハハ!!!」

と言われそこからは怒りのままに鞄の中の金槌を振るった、不意打ちで一人の横っ面をぶん殴ってやったがそこからは複数人から反撃をウケてリンチされた。

よく考えれば無謀だった、1人で殴り込むなんて・・・怒りで我を忘れてしまった事を反省したが猛烈なリンチに為す術もなく気がついたら病院のベッドの上だった。

 どうやら血まみれで校庭の隅に転がっていたらしくそのまま救急車を呼ばれて今に至るらしい、オヤジが心配そうにこちらをみているが「大丈夫」と震えた声でいってみせた。

 その後オヤジは学校に息子があんな目にあってるのはどういう事だと抗議しにいったが知らぬ存ぜぬで全く話にならなかったらしくオヤジも途方にくれていた。

 退院の日になってオヤジがぽつりと・・・

「あっち(タイ)でやり直してみるか?」

とつぶやいたので

「うん・・・!」

と小さく頷いた、そして俺は何も言わず嫌な思い出しかなかった学校を後にしてオヤジと二人バンコクに向かった。


 バンコク郊外の祖父母の家に着くと祖父母はとても歓迎してくれた、母の教育のおかげでタイ語と英語はある程度話せる。

1年生からのやり直しとなったが再び新しい地でやり直すことにした、そして新たに決意も固めた

もう俺は誰にも負けないようになろう、誰よりも強くなりあのクズ共を何時か殺してやると

俺は燃えていた、怒りと憎しみは何よりも自分を強くすると信じて人を憎みこの世を恨んだ

辛酸を嘗めるだけの人生だったがこれからは自分の靴を舐めさせてやるとそれからは毎日を何時か果たそうとする復讐の為自分の牙を研ぎ続けた。

 遊ぶ事もせずただひたすらに強くなるために鍛え勉強にも励んだ、周りの人間が遊んでいるあいだもただひたすらに己を鍛えた、何故こんなに努力するのか他人に聞かれてもなんと答えていいかわからずお茶を濁すが心中のこの世への憎しみだけが自分を前にすすめていた。


 それから10年以上の月日が流れ、向かう所敵なしの実力を身に着け某国の工作員として世界を飛び回っていた。

 工作員といえは聞こえがいいが要は殺し屋だ、ただ俺は政治の陰謀に使われるのはごめん被るのでテロリストや重犯罪者のようなクズ殺す専門の掃除屋になった。

クズを潰すのはなんとなく心がすっきりする・・・心が晴れることはないが晴れない心の気晴らしくらいにはなる。

ある時日本で仕事をする機会があり10年以上ぶりに日本に帰ってきた、懐かしくも苦々しい日本の空気に浸っていると思い出されるのは苦痛の日々。

早く仕事を終えて帰ろうと思い手早く仕事を済ませ空港へ向かおうとレンタカーを飛ばすが・・・気がついたら辛い思い出の詰まったあの町に向かっていた。

 今はもう空き地になった我が家のあった場所の前に車を止めて町をうろいていると聞き覚えのある声が・・・そうだアイツだ!あの日俺をリンチした・・・

10年以上前の出来事なのにはっきり覚えている、間違いないと確信し声をかけた

「オイ!!!」

「あ?・・・な、なんだコイツ・・・」

「久しぶりだなぁ・・・分かるか俺が・・・オメェに家を燃やされた・・・」

「は??ああ・・・中坊の頃の!あーあー忘れてたわ、なんだテメェ今頃・・・」

「俺らぁはテメェのこと1度たりとも忘れたことはねえよ」


ヤツはすっかり腰が引けていた自分のやったことを反省もせずのうのうと暮らしてきたかと思うと怒りがこみ上げてきた。


「ふ、ふん、だからなんだよ!やろうってのかコラ!!!」

「おいやっちまおうぜコイツ!こっちは5人いるんだ負けっこねえよ!」

「ウジ虫共が・・・テメェら全員血祭りにあげてやらぁ」


身長2m体重180kg鍛えに鍛え上げた巨体から繰り出されるパンチで四人の頭があっという間に砕かれた


「ヒィィィィ!!!や、やめて・・・助けて・・・なんで俺だけ・・・!」


命乞いするヤツに拳を振り上げて言った


「俺だってあの時思ったよなんで俺だけってな・・・死ねや!!!」


顔面に拳を叩きつけようとした刹那、眼の前が光り全身が光に包まれた・・・

光が徐々に収束していき気がつくと全く別の場所にいた


「召喚成功です!!」

「これはまた強そうな・・・レベルは?」

「少々お待ちを・・・」


奇妙なオブジェや模様のある石造りの部屋の中で妙な格好をした連中が俺を取り囲んで何やら騒いでいる

ここはいったい・・・俺はどうなったんだ?


「でました!!!嘘っ・・・この男・・・れ、Lv99です!!!」

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