プロローグ
ようこそ!いらっしゃいました。
(迷いある世界)へ
私は迷惑(迷いある世界)のオーナーの椎名和樹と申します。
この世界について少し説明させていただきます。
その前に、
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迷惑というのは、迷いある世界(惑星)という意味です。
辞書に載っている迷惑ではありません。
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それでは、説明させていただきます。
迷惑とはいったいなんなのでしょうか?
簡単に言えば、パラレルワールドみたいな世界のことです。
3次元の世界には無数に迷惑が存在しています。
そして、その中の一つで生活をしているのが私たちなのです。
無数の迷惑は同時進行していて、それぞれの迷惑には自分がいます。
その自分は独自の答えを出し、ストーリーを進めています。
そのストーリーは一つ一つが違っていて、決して同じものではありません。
必ず異なった過程と結末になるのです。
どうゆう過程と結末になるのか誰も予想できません。
もし今ある世界で失敗して、またやり直したいと思った時。
次の#を叫べば無数にある迷惑の中から、今と似た状況に転送されて、やり直すことができます。
#我が名はH(時間)を司る者
これより迷惑へ行く
今、扉を開けよ!
そして信じたまえ己の信念を#
そう叫ぶと、10秒から20秒ほどで迷惑に転送が開始されます。
そんな魔訶不思議な世界がこの世に存在しています。
しかし迷惑には欠点があります。
それは転送されてから、周囲の人と話が噛み合わないことがあることです。
つまり、迷惑は無数に存在して、各迷惑には一人の自分が存在し、生活をしています。
その自分は独自のストーリーを進めていっている。
そのため、転送されたとしても、今の自分の状況と似た世界に転送されるだけであって、過去に戻った訳ではありません。
それまで独自のストーリーを築き上げていた自分が、どんな生活をしてきたのかは把握出来ないのです。
何となく分かっていただけましたか?
わからないなら、新しい世界だと思ってください。
数分前の新しい世界からスタートでき、周囲と会話が少し噛み合わない世界だと。
説明は以上になりますが、何か質問はありますか?
「はい!」
白い四角い空間に、俺一人だけいるのだと、完全に思い込んでいた俺は驚いた。
椎名さんの説明がおわると、明らかにさっきまで何も、誰もいなかったはずの俺の隣から、声が聞こえてくる。
「迷惑に転送される回数は、決まっているんですか?」
と俺の隣で、帽子を目深にかぶった少年が質問をしていた。
俺は驚き過ぎて、言葉がでなかった!人間、本当に驚くと何も言葉が出ないことが分かった。
そして椎名さんが返答をした。
「おっと、いい質問ですね。
完全に伝え忘れてました。
回数は決まっていませんが、転送1回に対して、あなたの寿命が60秒ほど短くなります。
だから、気をつけて使ってくださいね!人間の寿命には限りがありますから。
では、そろそろ時間なので、私はこれで失礼しますよ。
さようなら……」
ドアや窓一つない白い四角い空間。
しかし、椎名さんが壁に手を当てた瞬間、扉が開き、ものすごい風が入り込んできた。
目が開けられないくらいの突風が俺を襲った。
そして、辺り一面が真っ暗になり、意識が遠のいていった。
しばらくすると、風はおさまり、スマホのアラーム音が耳に鳴りひびく。