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児童たちの推理

 殺人事件が起きたため、本日はホームルームが終わり次第警察の事情聴取を受けてから帰宅ということになった。

 その間、式と春崎はクラスの生徒たちから話を聞いていた。

 まずは、窓際の一番後ろにある席に座っている三上志穂から話を聞いた。


「ねえ、今回の殺人事件どう思う?」

「どう思うって、何が」

「ほら、犯行時間とか、誰が犯人なのかって……」

「……そうね」


 志穂は少し考えた後、自身の考えを話した。


「私は少なくとも、外部犯である可能性は少ないと思う」

「理由は?」

「全くの無関係な人間が学校に侵入したら、誰かに見つかってしまう可能性が高いから。まあ衝動的な犯行だったら、そういうリスクを度外視で行うかもしれないけど」

「なるほどね」


 志穂は続ける。


「後は犯行時間だけど、私は昨日の放課後から夜にかけて殺害されたと思う」

「それは何で?」

「セキュリティの問題かな」

「セキュリティ? ……そうか」


 志穂の言葉を聞いた式は納得する。


「もし夜に犯行が行われたのだとすると、学校のセキュリティに引っかかっちゃうよね。どこか別の場所で殺してから運んだのかもしれないという考えは、セキュリティがあるからで説明がつく」

「な、なるほど」

「まあ昔はこの学校も今みたいな警備会社から借り受けた機会を使ったものじゃなくて、夜は見回りをしていたみたいだけどね。それがもし今も続いてたなら、今回の事件は起きなかったかも」


 志穂の推理に式は驚く。


「す、すごいね。そこまで考えてるんだ」

「そういうお兄さんはどう考えてるの?」

「え、俺はよくわかんないよ。誰が殺したとか、どうやって殺したとかはさ」

「……ふーん」


 そういうと志穂は机の引き出しから本を取り出した。


「お兄さん、次の子に話を聞かなくていいの?」

「え?」

「このクラスで情報収集するんでしょ」


 どうやら志穂にはお見通しのようだ。


「あ、ああ。じゃあまた」

「……」


 意味ありげに見つめる志穂から離れ、式は次に中央の列に座っている松木高志に話を伺った。


「松木くん、君は今回の事件をどう思う?」

「どう思うって言われてもなー。そもそもなんで校長が殺されたんだろうな」

「動機か……。校長先生って、何か恨みを買うようなことをしてたりするのかな」

「いっぱいあるんじゃない? 例えば俺たちのような児童なら校長に怒られたりしたらムカつくこともあるでしょ」

「でも、さすがにそんな理由で殺人をしたりなんてするかな……」

「するでしょ」


 松木は断言した。


「お兄さんニュース見ないの? 世の中にはくだらない理由で殺人をする人間なんてたくさんいるよ。だから今回ももしかしたらそういったくだらない私情で行われているんじゃないかな」

「……そっか。ということは君も外部犯の可能性はないって思ってる?」

「うん。この学校のセキュリティ厳しいし、夜7時になると赤外線が作動してそれに触れたら直ちに警備会社に通報がいくんだって。だから愉快犯が侵入して殺したってことは考えられないし、夜7時の時点では既に校長は殺されていたんじゃないかな」

「なんでそんなこと知ってるの」

「多田先生が言ってたよ。だから学校に忍び込んで悪さをするなよっていつも釘刺してるんだ」

「……」


 松木の言葉を元に推理をする式。


「次は水元に話を聞いてみれば? あいつ意外な目線で物事を見るし、なんかわかるかもよ」

「わかった。話聞かせてくれてありがとう」


 続いて右端の列の一番前に座っている水元空に話を聞く。


「水元さん、今回の事件についてどう思っているか聞いてもいい?」

「私ですかー? そうだなあ、私は先生の誰かが殺したんじゃないかって思ってます」


 いきなり驚愕の発言をする水元。


「どうしてそう思うの?」

「まずはセキュリティがあるから外部犯は考えられないですよね。じゃあ児童か先生が犯人ってことになるけど、校長先生は大人だから、児童が殺すのは難しいんじゃないかなって思います」

「それは体格的な問題で?」

「はい。犯人がどうやって殺したのかはわかりませんが、刃物を使うにしろ鈍器を使うにしろ校長先生を殺すのは無理なんじゃないかな。刃物だったら力がなくて致命傷を与えられないし、鈍器だったら重くて満足に持てないと思いますし」

「でも、六年生なら体格的にもできそうな子はいるんじゃないかな。特に最近の子は発育も良いって聞くし」


 式が反論する。


「あ、そっか。じゃあできなくはないのかー。そこまで考えてなかったですね」

「水元さんは、今回の事件は計画的犯行だと思う?」

「はい。犯人はこの学校の関係者でほぼ確定でしょうし」


 水元はきっぱりと答える。


「なるほど。ありがとう、いい話が聞けたよ」

「いえいえ」


 水元から離れ、次の児童に話を聞こうとしたその時、


「式くん、春崎さん、ちょっといいかな」


 と園田が教室にやってきて式たちを呼び出した。


「隼人さん。僕たちに用ですか?」

「ああ。次は君たちから話を聞こうと思ってね」


 そう言われた式と春崎は、別室へと移動した。

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