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クラスでの聞き込み

 翌日、式たちは休み時間にクラスの児童たちから佐野未来についての聞き込みを行っていた。


「水元さん、佐野未来ちゃんについて何かご存知ですか?」


 榊は学級委員の水元空に話を伺っていた。


「そうですねぇ……、彼女は誰にでも優しくて、中々クラスの輪に入れない子でも手を引っ張って中に入れたりして、皆で仲良くなるのが得意な子でした。私なんかよりも遥かに学級委員に向いていましたよ。勉強も得意でしたし。私もテストでわからないところがあったら聞いてたな」

「そうですか……。ところで、未来ちゃんが心臓病になったのは何時頃からなんでしょうか」

「さあ、未来ちゃんの病気については詳しく知らないから、わからないですね。あ、でも三年生の頃は外で遊んでいるところをよく見ていたから、多分それ以降なんじゃないでしょうか」

「……なるほど、わかりました。お話ありがとうございます。ではまた」




 一方、春崎は野球が得意な松木高志に話を聞いていた。


「佐野のこと? ああ、あいつとはよく休み時間に一緒に遊んでたな。昔から運動神経がよかったらしくて、野球もすぐに感覚を掴んで適応してたよ。野球のセンスもあると思うし、六大学野球で一緒にやってみたいな、って思ったりもしたかな」

「六大学野球って……。もうそんなところまで考えてたの?」

「だって、夢は大きく持たなきゃ、でしょ」


 小学生ながらすごい夢を持っているんだな、と春崎は感心していた。


「あ、ところでさ、未来ちゃんは運動が得意って言ってたけど、でも彼女は心臓病だったんでしょ? じゃあ運動をしてたら危ないんじゃないかな」

「そんなの、後天性の心臓病だから、運動をやっていたころはまだ大丈夫だったんでしょ」

「なら、いつ彼女は心臓病になったの?」

「……そういや、何時なのかな。小四になってからあいつと遊んだ記憶はないから、多分小四になったくらいじゃないかな」

「……そっか、ありがとね、いろいろ教えてくれて!」




 そして式は、何故か彼を遠ざけている三上志穂に佐野未来について聞いていた。


「ねえ志穂ちゃん、佐野未来ちゃんについて知っていることがあったら教えてくれないかな?」

「……何でお兄さんに教えなきゃいけないの?」


 質問に質問で返す小学四年生の少女。


「いや、ちょっと気になってさ。だって、君たちのクラスメイトなんでしょ? だったら俺たちも現在は同じクラスメイトなんだから、情報を共有してもいいんじゃないかな」

「むちゃくちゃな論理だね」


 志穂はくすっと笑った。


「……あの子は、私と同じくらいの成績だったから、テストで勝ったり負けたりすることが多かったかな。例え小テストだとしても、負けたらちょっと悔しかったよ」

「プライベートな交友はなかったの?」

「別に。私友達あんまいないし。あの子は明るい子だったからよく話しかけてくれたけど」

「……彼女の対応は嬉しかった?」

「……まあ、ちょっとは。おせっかいだなあと思ったこともあったけど」


 志穂の言葉に、式はプッと噴き出した。


「どうしたの、お兄さん」

「いや、君と俺って似てるなって思って。俺もクラスメイトにおせっかいされることがあるんだよ」

「そうなんだ」

「うん。あ、一つ聞きたいんだけど、彼女が心臓病になったのって、いつくらいだかわかる?」

「……知らない」

「そっか」


 その言葉を聞いた式は立ち上がり、


「質問に答えてくれてありがとう。じゃあね」


 と言って立ち去ろうとした。


「……ねえ、お兄さん」


 しかし、志穂がそれを遮る。


「ん、何?」

「私はお兄さんの質問に答えたんだし、お兄さんも私の質問に答えてもらおうかな」

「いいけど、どんな質問?」


 志穂は式の目をすっと見据えて、


「子供が大人よりも自由なものって、何だと思う?」


 と尋ねた。


「……漠然とした質問だね」

「直感でもいいから答えてみて」

「そうだなぁ。……午後の時間とか?」

「は?」


 予想外の答えが出たのか、素っ頓狂な声を出す志穂。


「いや、大人って基本的には五時とか六時くらいまで仕事するだろ? でも子どもは、例えば小学生は三時くらいには学校が終わるよね。だったら、その時間分は大人よりも自由があるじゃん……って思ったんだけど」

「……ぶふっ」


 式の答えを聞いた志穂は思わず吹き出してしまった。


「お、お兄さん、まさかそんな答えが出るとは思わなかったよ」

「え、違うの!?」

「……まあそれも正解で良いかな。予想外の答えだったし」


 志穂は身を震わせながら答える。それほどにもツボに入ったのだろうか。


「じゃあ君の考えた答えは何なの?」

「それは自分で考えてよ。まあ、お兄さんなら解けるんじゃない? そんな発想ができるんだったら」


 そういって志穂は腹を抱えながら式の前から立ち去った。

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