担当クラス
「ありがとうございます。まさか明戸高校の方たちに来ていただけるとは……」
学校についた式たちは、職員室に向かうと小学校の校長に担当する教室まで案内された。
「いえいえ、私たちも社会勉強のために来たんですから」
「この仮実習が生徒たちにも良い経験になるといいのですが。あ、申し遅れました。私はこの小学校の校長の加藤歩美と申します。今回あなたたちに担当していただくクラスは四年二組です。四年二組は多田洋治という男性教諭が指導しております」
「あ、私は春崎桃子です。よろしくお願いします」
「榊刹那です」
「式十四郎です」
四人は互いに自己紹介をした。
「聞くところによると、春崎さんは教師になりたいとか」
「はい。なので、今回は私の勉強も兼ねているんですよ」
「それはそれは。ただ、四年二組は癖が強い子が多いので、大変だと思いますが……。特に、今日は全員出席しているので」
「……そ、それぐらいじゃないと練習になりませんよー」
「顔が引きつっていますよ、春崎さん」
そんな会話を聞きながら、俺はいる意味があるのかな、と式は思っていた。
「さあつきました。ここが今回皆さんに担当していただく四年二組です」
「四年生かー。ちょうどいい感じだね」
「幼さを残しながらも、精神的には少しずつ大人になっていく時期ですからね」
「こりゃ面倒なことになりそう……」
加藤が教室の扉を開けると、中にいた生徒たちは一斉に式たちの方へと視線を向けた。
「皆さん。以前からお話していた教育実習生の方が来ました。これから一週間お世話になるので、あたたかく迎えてくださいね。それでは皆さん、自己紹介をお願いします」
「皆さん初めまして。この度実習できました春崎といいます。よろしくお願いします!」
春崎は元気よく挨拶をした。
「同じく実習に来ました榊です。よろしくお願いします」
「同じく式です。よろしくお願いします」
榊と式も、後に続く。
「水元さん。クラス委員のあなたが実習生の皆さんに学校のことを教えてあげてくださいね」
「はい、わかりました!」
水元と呼ばれた少女は元気よく返事をした。
「それでは多田先生、後はよろしくお願いします」
「わかりました。明戸高校の皆さん、私は多田と申します。加藤から既に聞いているかと思いますが、これから短い間よろしくお願いします」
多田は式たちに軽く挨拶をする。
「ではさっそく授業に入ります。一時間目は国語です。明戸高校の皆さんは最初は後ろから授業を見ていてください。生徒の皆は教科書やノートなどを用意してください……」
特に間を置くこともなく、授業が始まった。
「国語か。それなら俺でもなんとかなりそうだな」
「……式くん、小学生レベルですよ。なんとかして貰わなくては困ります」
式の呟きに、即座に突っ込みを入れる榊。
式は久しぶりに見る小学校の教室を見回してみた。すると、一つ誰も座っていない席を見つけた。
(あれ? さっき加藤先生は全員出席しているって言ってたと思うけど……)
そんな二人のやり取りを、じっと見ている視線があった。