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本当の意味

「……そんなことがあったのか」


 志穂の話を聞いた多田が感想を漏らす。


「ねえ刑事さん。校長室や加藤の家をくまなく調べてね。何かしらの証拠が見つかるかもしれないから」

「あ、ああ。もちろんだ」


 園田は部下に指令を出し、直ちに捜査を開始した。


「それで、私はどうなるの?」

「……君はまだ10歳だから、少年院に入ることもない。だがこのまま普段通りに生活させることもできないんだ。処分としては、児童養護施設に入ることになるだろうな」

「そっか。まあ仕方ないよね」


 志穂は特に抵抗する気はないようだ。


「とりあえず、今から君が入ることになる児童養護施設を探し出し、受け入れの準備が整ったらそこに入ってもらう。では一緒に来てもらおうか」

「はい」


 志穂は園田に連れられ、パトカーに向かった。

 式とすれ違ったその時、志穂は小さな声でつぶやいた。


「お兄さんに伝言。この事件が終わったら、もうこの学校には関わらない方が良いよ」

「え?」

「何で私が石を処分しなかったと思う? やろうと思えば、石の処分くらいできたはずだよ。佐野の殺害にしたって、泥酔している状態なら力がない私でもトリックなんか使わずにいくらでも殺す方法はあったんだから。それ以外にも、もっと別の視点から考えてみた方がいいよ。それが三つ目の動機だから」

「何を言って……」

「この学校は何かおかしい。そういうことだよ。この学校には幽霊少女の怨念が渦巻いているからね。その狂気にやられた人間に襲われちゃうかも……」


 そう言い残して、志穂は立ち去った。

 式は先ほどの志穂の言葉を聞いて、これまでの推理を振り返ってみた。


(別の視点とはどういうことだ? 俺の推理が間違っていたということか?)


 しかし、志穂は自分がやったと認めている。


(例えば、彼女がミスをしたと思ったところを別の視点で考えてみよう。彼女が教科書類をロッカーではなく引き出しの中に入れたのは彼女のミスとしたけど、本当はロッカーに入れようとしたけど引き出しにあえて入れたということか? 佐野さんの殺害も、確かに酔った状態なら普通に殺せたのかもしれない)


 では、志穂があえてそれらをやらなかった意味とは?

 先程の志穂の言葉を踏まえて、式は推測してみた。


(もしかして、彼女はこの学校から離れたかったのか? さっき言っていた、この学校は何かおかしいっていう発言からしてそうとしか思えない。しかしその原因だった加藤先生はもう死んでしまった。ということは、他にも何か危険因子があるってことか……?)


 考えてみたが、これ以上確信に至る答えは出なかった。

 ともあれ、これで今回の事件は解決した。後は警察に任せることにしよう。




 数日後、榊が新聞を持って式の元に近づいてきた。


「式くん、志穂ちゃんのこと、聞きましたか?」

「え、何かあったの?」

「あの事件の後、彼女はとある児童養護施設に入ったのですが、そこで火災が発生して、志穂ちゃんを含めた数名の児童たちが行方不明になったそうです」

「火災が……?」

「ええ。隼人兄さんから聞いたのですが、原因不明の火災のようで。もしかしたら、志穂ちゃんが起こしたものかもしれないって言ってました」


 志穂が火災を引き起こした。

 確かに彼女ほどの人物ならそれを引き起こすことは出来るだろう。しかしそれならば何のために火災を起こし、行方不明になったのか。


「また犯罪を犯すつもりなのでしょうか……」

「でも、彼女が殺人を犯した理由は敵討ちするためでしょ。もう犯罪を犯す理由はないと思うけど」

「しかし、彼女は言っていたじゃないですか。今のうちに犯罪を犯しておいた方がいいって」


 確かにそういっていた。ならば本当に……?


「彼女が何を企んでいるのかわからないけど、今はどうしようもないんじゃないか」

「もう犯罪を犯さなければよいのですが……」


 榊は少女の生末を心配している。


(志穂ちゃん、君は一体何を……)


 その問いに答える声はなかった。

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