ボランティア
「ほら、つきましたよ式くん」
クラスメイトの榊刹那に連れられて式十四郎がやってきたのは、小学校だった。
事の発端は、小テストで彼女に借りを作ってしまったことだった。
榊がテスト勉強を見てくれたおかげで、式は何とか赤点を取らずに済んだのだ。
貸しを作った榊は、そのお礼としてボランティア部の活動を手伝ってほしいと式に頼んだ。
今回、ボランティア部は小学校に出向いて小学生に勉強を教えることになっている。ボランティア部が出向く小学校は、地元でも有名な私立学校で、学力は公立小学校を遥かに上回っている。完全学力主義を採用しており、学力に関しては自身がある式たちだからこそ、このボランティアは成り立つのだ。
最も、式に関しては学力はあまり高くないのだが。
「式くんごめんねえ。無理言ってついてきてもらって」
「いや、春崎さんのせいじゃないよ」
式に話しかけたのは、ボランティア部に所属している春崎桃子だった。
彼女は本日他のボランティア部のメンバーと共に学校に行く予定だったのだが、他のメンバーが突然体調を崩してしまったため、同じクラスで学級委員である榊に頼み込んだのだった。
その際に、式も強引に誘われてしまった。
「そうですよ。私に借りを作った式くんが悪いのです」
「そ、そう言われると何も言い返せないな」
榊のきつい言葉に、たじろぐ式。
「でも、俺なんかが役に立つの? 自慢じゃないけど、俺はそこまで成績よくないよ」
「大丈夫だよ。私もあんまり頭よくないし。私は将来のための予行練習がてら来たって感じだし」
「将来の予行練習?」
「そう。私、小学校の教師になりたいんだ」
春崎は目を輝かせながら言った。
「小学校の教師ですか」
「うん。私自身は勉強もあまり得意ではなかったから意外に思われるかもしれないけど、私は学校の楽しさを皆に教えてあげたいんだ。そして、勉強する楽しさと大切さを子供たちに教えてあげたい」
「なるほど。しかし、これから教えに行く子供たちは勉強に関しては並大抵の公立校より遥かに進んでいますから、あまり参考にならないのでは」
「はは、そうだろうねえ。でも千里の道も一歩から、というしね。まずは子供に慣れるところから始めようかなと」
明確な目標に向かって真っすぐ進んでいく春崎は、式の目には眩しく見えた。
「だから、私は学校に申請したんだ。そしたら一週間くらい教育実習として小学校で学んできなさいって言われた」
「学校は勉強や将来に関することでしたら積極的にサポートしますから、春崎さんを全面的にバックアップしてくれるのでしょう」
「うん。だから、私は精一杯学ぼうと思うんだ」
「私たちも手伝いますよ」
「え、ちょっと待って、俺も!?」
話の流れで自分も勝手に入れられていたので、式は思わず口を出した。
「ええ、そうですが」
「なんで当たり前のような顔で言うんだろう」
「でも、式くんは私に借りがありますよね」
「……わかったよ。今回だけね」
借りを脅し材料に使われた式は、しぶしぶと同意した。