アパートでの殺人
「どこのアパートだ。案内してくれ」
「わかりました。車でお送りします」
「お前たちは引き続き事情聴取を続けろ。現場捜査も忘れずにな」
園田は部下たちに指令を出す。
「あの、隼人さん。僕も行っていいですか?」
「……まあいいだろう。ただし現場には入れないよ」
「ありがとうございます!」
「なら、私たちはこちらに残っています」
「こっちでもなんか新しい情報が手に入るかもしれないからね!」
榊と春崎は学校に残るようだ。
「わかった。けど無理はしないようにね。じゃあ行こうか式くん」
「はい」
式たちは発見された遺体の元へと向かった。
式たちが辿り着いたアパートは、先日訪れたばかりの佐野家があるアパートだった。
(ここか。ということは……)
今回の被害者が誰なのか、おおよその検討はついていた。
「状況は?」
園田が近くにいる刑事に話しかける。
「はい。被害者は佐野祐樹。今年娘を亡くしたばかりで家に引きこもっていた無職のようです」
「やっぱり……」
「やっぱり? 心当たりがあったのか」
式の言葉を聞いた園田が尋ねる。
「はい。彼の娘があの小学校の児童だったんですよ。けど心臓病で亡くなったらしくて。それで一度ここに来たことがあったんです」
「ほう。それなら、小学校の殺人事件と関連性があるかもしれないな」
式も同感だった。
「となれば、恐らく犯人の動機はその小学生ということになるな」
「そうですね。彼女についても調べた方がよさそうです」
それは後で調べるとして、まずはこの事件だ。
「それで、死体はどんな感じなんだ?」
「はい。死体が発見された場所はアパートにある一階のエレベーター前です。首が切断されていて、大量の血し
ぶきが飛び散っている状況になっています」
説明を聞きながら、式たちは死体の元へと訪れた。
「……これは、むごいな」
そこには、先ほどの報告通りとなっている無惨な死体があった。
首が切断されており、辺りに血しぶきが舞っている。それ以外に異常な点は見られない。
「検死はもう終わっているか?」
「今やっています」
「わかった」
式は首の切断面とエレベーターのドアをじっと見ていた。
「……」
式の頭にはどうやって殺したのか、その方法が一つ思い浮かんでいた。
(でも、まずは死亡時刻が判明しないとわからないな……)
こればかりは検死が終わるのを待つしかない。
その間に、調べられるところはしっかりと調べておこう。
「あの、このエレベーターは動くんですか?」
近くにいた刑事に尋ねる。
「君は?」
「この子は式くん。今回の事件に協力してくれる少年だ。過去に殺人事件を解決したことがあるから、捜査の邪魔をしないという約束で協力してもらっている」
「そうですか。それでこのエレベーターですが、一応動くようです」
「このエレベーターの情報って何かありますか?」
「ちょっと待ってね……」
刑事は資料をあさる。
「あった、これだ。結構古いタイプのエレベーターでね。たまに止まってしまうこともあるらしい。調べたところ、このエレベーターには欠陥があるようだ」
「どんな欠陥だ?」
「このエレベーターはセンサーで検知するタイプのようで、そのセンサーには死角があるようです。つまりその死角に例えばものが挟まってしまっても、安産装置が作動せずにそのまま動いてしまうようです」
「それは重要な欠陥ではないか……」
「ええ。このアパートは築年数も相当経ってますし、エレベーターが導入されていること自体珍しいですね。それ故に定期的な検査なども行われていなかったようです」
「なるほど……」
その情報を元に、式は推理を始める。
(それなら、俺が思い描いている殺害方法が出来そうだ。しかし問題が一つあるが……)
その問題は、推理だけでは思いつかない。
「すいません。ちょっとアパートの周りを調べてもいいですか?」
「見張り付きならね」
「問題ありません」
式は見張りの刑事と共にアパートの周りを調べたが、目的のものは見つからなかった。
(ということは、ここにはないのか……)
必死に頭を回している式に園田が話しかける。
「何か見つかったかい?」
「いえ、何も」
「そうか。とりあえず一旦学校に戻ったらどうかな? あっちの捜査も進んでいるだろうし。僕はしばらくここを調べているよ」
「そうですね、いったん戻ります」
園田の言う通り、式は学校に戻ることにした。




