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12:オジサマだった

「何かあったのか」


 重厚な声だった。

 ああ、えーとほら、赤い彗星とか、光の守護聖とか言ったらニュアンスだけでもわかってもらえるだろうか。早撃ちコンマ3秒の帽子ガンマンでも、通報されそうなプロデューサーでもいい。

 そんな、非の打ち所のない美声だった。


「ベルデネモが怪我を」

「具合は」

「頭と腕を負傷して、今は眠っております」


 エクドバが受け答えしている。会話の相手は、そのまままっすぐにこっちの部屋に飛び込んできた。

 それは、オジサマだった。


「こちらのご婦人は」


 わたしという見慣れない異物に驚いたのか、一瞬目を丸くしたかと思うと、ヒゲジジイにまずそれを問う。

 ご婦人て。

 そんな単語がわたしに向けられたことにも驚くが、近くに来てベル君の容態を見始めたオジサマの容姿にも驚きしか出てこない。このオジサマは何者だ。見た感じ、40を数えたくらいだろうか。細くはないけど通った鼻筋に、ぐっと彫り込まれたような目。無精と言うには伸びているけれど整えたとは言い難い髭は、髪と同じ、サンディブロンドとでも言えば良いのだろうか、そんな感じの金より銀に近い色合い。背格好も大柄で引き締まっていて、ビール腹とは縁遠そうだ。

 もし想像力に自信があるのなら、前髪に不安のないジュード・ロウが筋肉増量して騎士っぽい格好をしたうえでフォトショップ補正入った雑誌グラビアに載っているところを想像して欲しい。

 あの映画をもし知っている人がいるのなら、ダチョウ倶楽部が吹き替えをしたジャン・レノ主演のフランスコメディで主演がジュード・ロウだと考えてもいい。ああ、絶対伝わらない。大人気だったらしくて十年そこら前にリメイクもあったけど、あの映画知ってる人をわたしは家族以外に見たことがない。わたしにしても近所にあったレンタルビデオ屋が潰れた時にくれたから知っているだけなのだが。

 卑怯だ。

 わたしの頭の中にはその単語ばかりがよぎる。

 イケボのイケメンナイスミドルとか、卑怯だ。この世にいていい存在じゃない。いるならハリウッドに行け、行ってくれ、そして世界の目を保養してくれ。


「記憶を失い、行き倒れていたところをベルデネモが保護したようです」


 ヒゲジジイがそう紹介している。まあ、ベル君は保護というより連行したつもりだったろうけれど、寝ている人に反論する口はないのである。

 ……目を、覚ますんだろうか。

 水色の髪の少年は、いまだ眠ったような状態のままだ。

 怪我の様子を確認していたナイスミドルは、眉間に皺を寄せて何かを考えるような素振りを見せ、それからヒゲジジイに向き直った。


「ジャデリク。ベルデネモを馬車に運んでくれ。すぐに神殿に向かう」


 あ、やっぱり神官が所属するのは神殿なのか。その指示を聞いて、弓の人が俄然ホッとした顔を浮かべている。

 それはともかくとして、ヒゲジジイの名前はジャデリクというらしい。

 三人がかりでベル君を運ぼうとしている間に、ナイスミドルはわたしに向き直った。


「慌ただしいところをお見せして、申し訳ありません。

 自分はロンゴイルと申す者。あなたは、記憶がないとのことでしたが……」

「そ、そうなんです。ここがどこなのか、どうしてここにいるのかもわからなくて」


 本心なのも間違いないけれど、精一杯憐れにみえるように頑張って儚い印象を作ってみる。

 弓の人がなんだか凄いジト目でこっちを見ている気がするが、無視だ、無視。

 ロンゴイルとかいうナイスミドルは微笑んで、こう言った。


「それなら、ともに神殿のある街までご一緒しませんか。

 大きな街ならば、あなたのことをご存知の方がいらっしゃるかもしれません」


 柔らかい言葉だったけど、それは同意を求めるものではなく、決定事項の響きがあった。

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