7.夜更けの散歩者 side G
タイトル変更しました。
夜が明けるまではまだしばらくある。
そんな時間に動き出す人間はそういない。
聖女の剣の指導に時間を取られ、書類仕事がたまり夜更けまで執務室で励んでいたが、眠気が襲って捗らず、眠気覚ましに少し見回りをしていたところだった。
城の回廊を歩いていると、見回りの人間とは違う気配にゴードンは気が付く。
そこで、予想外の人物を見つける。
小柄だが身軽な冒険者スタイルの人物が城内の廊下を歩いている。
明らかに不審者だ。
一気に距離を縮め、肩を掴んで振り向かせようとするが向こうの反応が早く、振り向きざまバックステップを取った。
右手は宙に浮いたが、すぐさま剣を抜けるよう構える。
相手は攻撃態勢ではないが、動きやすいよう低く構えている。
少しでも動いたら、足を狙い攻撃するつもりだ。
「何者だ。ここで何をしている。」
声をかけると相手の張り詰めた空気がフッと消えて、聞き覚えのある女性の声が返ってきた。
「騎士団長さん、だったんだ。びっくりした。」
普通の立ち姿になり、近づいてくる。
いつものドレス姿ではないが、顔を見るともう一人の異世界人サクラだった。
なぜそんな格好でこの時間フラフラしているのか問うと、昼間寝過ぎて眠れないから散歩をしていたと。
服は一人で着られる服を探したら、これしかなかったらしい。
冒険者の服を女性のタンスに入れるか謎だが。
頭から足の先までサッと眺め、ところどころある土汚れと血が少し染み込んでいるのが見つけられた。
「散歩ですか、他に何かされたとか。」
きょとんとした顔をした後、「あ~…」と言いながら考え込んでいる。
怪しまれる行動をした自覚があるんだろう。
「庭に出た時、花が綺麗だったので少しガーデニングを。土いじり好きなのでつい…。」
服汚しちゃいましたね、と自分の服を見下ろす。
あどけなく笑う姿に無邪気さが窺える。
血の汚れを指摘したら、きっと刺で刺したと言い訳するんだろう。
「もう、眠くなったので帰りますね。おやすみなさい。」
手を振りながら、足早に去る姿を見ながら小さく問いかける。
「なぜ、あなたは魔獣の血を付けているのですか?」
この王城周辺には魔獣は存在しない。
少し離れた森の中では生息しているが、どこでどうして付けたというのか。
しかも会話を交わす前の動きは戦い方を知っている者の動きだ。
聖女がいた国は平和で戦いのない所だと言っていたはずなのに。