一人目の仲間:オッサン
「…ん、?」
植物の柔らかい感触。
どうやら俺は草むらの上に寝ているらしい。
やけに頭はスッキリしている。
…さっきのは夢だったんだろうか、この目を開ければわかる気がする。
「ここは…?どこだ…」
上半身を起こしてから周りを見渡す。
そこは見渡す限りの草原、知らない場所だ明らかに日本じゃない。
少し日差しが強い太陽が目を射す。
…やっぱり世界は滅んでなんかいないんじゃないか。
暖かい日差しにそう思った。
「お、起きたか坊主」
「あ、こんちは?」
声がしたので後ろを向いたらいい年したオッサンがいた。
とりあえず挨拶を返したけど、誰だ。この日差しのなかで黒いコートを着ているなんて少しおかしいんじゃないだろうか。
「見たところ坊主学生だろ、年は」
「え…と、年は16歳。伊神高校二年三組所属っす」
とりあえず年上には敬語。
にしてもこの人誰だ。髪はボサボサで無精髭も生えてるし、めちゃくちゃ怪しいな。
「それで、その、おじさんは…?」
「俺か?俺はまあ、殺し屋だ」
…へ?殺し屋!?いや嘘だろ?
そう思いながらも危ない人だということは確定だ。俺は座ったまま手々を使って後ろに後退した。
「…まあ、殺し屋っても今となっては元だけどな。おい、なぜ逃げる坊主」
「え、いや、殺し屋?いや嘘っすよね…?」
「いやいや、嘘じゃねぇよ?殺し屋だよ、殺し屋。カネさえ貰えりゃ何だって殺すぜ?」
ほれ、と言ってコートの内側から銃を出すオッサン…うぇぇえ!?
「やめっ!殺さないでぅぇ!」
腰を抜かした俺は立ち上がることもできず、ただ惨めに両手を降って泣き叫ぶだけだった。
「…殺さないでって、いやオジサン殺し屋だけど殺しが好きって訳じゃ…。まあいいか、俺にお前を殺す気はねぇよ」
そう言って銃をしまうとオッサンは俺の前に腰を下ろした。
そして手を差し出すと、
「俺は殺し屋の後藤仁。…これからよろしくな坊主。俺とお前は恐らく仲間だ」
握手を求めてきた。
「へ?仲間…?」
「そうだよ仲間だ。お前もあの白い場所でアナウンスを聞いたんだろ?確かf系統20536番地球だっけか、お前もそこ出身だろ」
f系統20536番地球。そう言えばあのアナウンスは僕のことをそこ出身の勇者とかいっていた気がする。…殺し屋のオッサンもあのアナウンスを聞いたってことは夢じゃなかったんだろうか。つまり、世界は本当に滅んだんだろうか。
「おい坊主、握手するのかしないのか、早くしてくれ、このまま握手しなかったら敵と見なすぞ?」
「あ…すいません!!」
あの銃で撃たれたらたまったもんじゃない。
恐る恐るオッサンの手をとる。
オッサンの手は、ゴツゴツしていて力強さを感じさせた。
「お、俺は高校生の相澤拓真、…っす、俺も多分そこ出身の仲間…です」
オッサンはニヤッと笑うと俺の手を力強く握り返してきた。
「そうか拓真、よろしくな。俺のことは仁でいい」
「は、はい仁さん。よ、よろしくお願いしまっす!」
一応、殺す気は無いみたいだし、仲間だったら心強そうだ。信用して大丈夫かな。
「あと他にも3人ほどいるが、今は周囲の探索に出ていてな。ちょっとしたら帰ってくると思うが」
…他にも3人いるのか、優しそうな人だといいな。
「そうだ、拓真。お前、職業はなんだ?」
「え、職業…は、学生っすけど…?」
「あぁ、いやそっちじゃなくて、貰っただろ?自分にあった職業と武器」
そうか、確か最後にあの場所で職業を貰ってそれでステータスを見て…。あれ?俺確か奴隷って書いてあったような?なんだそれ。
「ス、ステータス!」
急いでステータスを唱える。すると予想どうりに俺の手前にゲームみたいなステータス表記が現れた。
…やっぱ奴隷だよな…?
「あの、すいません、一ついいっすか?」
「なんだ?何か変な職業にでもなってたか?」
…変な職業。変ってか職業かこれ!?
「…奴隷ってなんなんすかね…?」
読んでいただき真に感謝いたします。