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12.闇夜があけるとき
そして二人の少年は本人たっての願いで玄徳を宮城の隅に隠し、一直線に楊家へ向かい、明け方、一人の少女と運命の出会いを果たした。唯一生き残り、白い陽光に煙る惨殺の跡に立ち尽くしていたあの少女と――。
二人は命あるものを救うために楊家に赴いたはずだった。だが少女以外は誰もがすでにこと切れていた。
しかし二人はここで楊珪己と出会った。
そして己の罪を直視したのである。
不用心に押し開いた門、踏みにじられた朝顔の青紫の鮮やかさ。
幾多の死体、血塗られた室内。
涙をこぼして崩れ落ちた少女、そして――。
「君達は必ず生きるんだ。いいね」
二人を宮城から逃がす際、そう言ってほほ笑んでみせた玄徳の表情。
こみあげてきた想い、突き上げてきた激情――。
それらすべてを二人は今でも覚えている。




