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教師からのお願い

一学期の期末テストが終わった七月中旬、小川篤史は幼馴染の服部留理と川口里奈と共に職員室に呼ばれていた。

呼ばれた理由は聞かされておらず、なんだろうと思いながら職員室の奥にある小さな部屋に通され、三人は椅子に腰をかけて待っていると、担任と同じ学年の教師の二人が入ってきた。

二人の教師の話を聞き終えると、留理と里奈は顔を見合わせる。

「はぁ!? オレが!?」

篤史はありえないという口調で頭を掻く。

三人が聞いた話は、毎年、夏休みに三泊四日で一年から三年までの特進コースが受験に向けて強化合宿を行い、学校指定されたホテルで勉強をする、というものだ。

「お願い! 去年、強化合宿で奇妙な事が起こったのよ」

篤史と同じ二年の特進コースの担任をしている市村恵子が、篤史に必死にお願いをする。

「強化合宿って一年から三年までの特進コースの生徒だけが行くんですよね?」

留理は恵子に確認する。

「えぇ、そうよ。ぜひ、今年は小川くんに来てもらって、何か起こったら解決して欲しいの」

「解決して欲しいって...オレは警察とかなんでも屋やないんですけど...」

篤史は困惑した様子で恵子に言う。

「わかってるわよ。でも、今までに色んな事件を解決している小川君に来てもらえれば、何か起こった時の気持ちや安心感も違うと思うの」

恵子は去年に起きた奇妙な出来事に不安を覚えているようで、その不安を打ち消すためにも篤史に強化合宿に来て欲しいと頼み込む。

「小川、校長や教頭、教師全員に相談した結果、今年だけ特別に普通コースの小川に来てもらおうっていうことになったんや。オレも特進コースの担当教科受け持ってるから参加するし...。二人で相談したんだが、小川一人では心細いやろうから幼馴染の服部と川口も特別に来て欲しいっていうことになったんや」

篤史の担任の由良幸太郎が恵子のフォローしつつ篤史を強化合宿に呼んだ事情を話す。

「由良先生がそこまで言うなら行くけど...」

篤史は自分の担任のフォローに仕方ないかという表情をする。

「ありがとう、小川君」

必死にお願いをしていた恵子の表情がホッとした表情になる。

「その奇妙な出来事ってなんなんですか?」

里奈は奇妙な出来事が気になって恵子に聞いてみる。

「強化合宿は反岡高校の指定のホテルで、海も近いんだけど海で溺れたり、ホテル内で足を骨折したり...しかも、自殺者まで出てしまって...」

奇妙な出来事を話す恵子は頭を悩ませているようだ。

「勉強が嫌になって自殺したんやないの?」

自殺者が出た事に関しては、奇妙な出来事と結ぶのはありえないという口調で聞く篤史。

「それもそうと言い切れないのよ。自殺した生徒は前々から脅迫されていたみたいで。強化合宿に行く前に相談されていたの。もちろん、足を骨折した生徒も海で溺れた生徒もね」

「脅迫された理由はわからないんですか?」

留理もそれはおかしいと思ったようだ。

「わからないの。生徒本人も脅迫される覚えはないと言ってたし...。今年はまだ脅迫されたっていう生徒はいないんだけど、今年も何か起きそうで怖いのよ。それで小川君にお願いしたってわけなのよ」

恵子はまだ拭えない不安な気持ちを篤史に告げる。

「今年は脅迫される生徒がいいひんのやったら大丈夫やと...」

篤史はせっかくテストが終わったのに、面倒臭い事に巻き込まれたという口調で言った。

「そんなこと言って...。市村先生は不安やから来て欲しいって言うてるんやろ? 協力してあげたら?」

里奈は篤史の態度に呆れながら、ため息混じりで篤史に言う。

「何も起こらなければいいんやし...。特進コースの生徒と一緒に勉強出来るなんてこれから先ないんやし行こうよ」

留理は滅多にない機会に行く気満々で、篤史に諭す。

「服部の言うとおりやぞ? 二学期の成績がアップするかもな」

幸太郎はニヤリと笑いながら篤史に言う。

「由良先生まで...」

篤史はさらに仕方ないなとなり苦笑いをする。

「仕方ないな。行こうか」

「ありがとう」

篤史の意を決した言葉に、恵子はホッとした表情を見せた。

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