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気がつけば、眼に染みる陽光が眩しい。
……悠理は花詞の女主人に肩を揺らされていた。はじめは自分の置かれている状況が全くわからなかったが、次第に現実を認識する。
此処は花詞の裏口。壁に凭れ、座り込んだ形で眠り込んでいたらしい。何時いつから此処に棄て置かれたのだろう、おかしな体勢で寝ていたせいか背中も痛む。
明らかな悠理の異質さに、発見した女主人は事情を訊きたがった。
内で休むようにとすすめてきたが、振り切って家路を辿る。世話に成るのは煩わしいし、早く自室で落ち着いて、眠り直したかった。
蜜とやらの効力は未だに悠理を支配しているようで、ぼんやりとして、怠い。全身が疲弊に包まれている。
果たして、何処からが夢なのか、何処からが現実なのか。今の悠理には分からなかった。ちせと喫茶舖に入ったことも、裏路地の娼館に案内されたことも覚えているが、目覚めれば花詞だなんて。
虚ろを歩いているように、ふらふらとマンションに辿りつく。
朧げな意識でも、身体は住み慣れた家を覚えていて、無事帰ることが出来た。そのまま寝台に倒れ込み、夜迄寝てしまう。
やはりと云うべきか、父親は何も云わない。一晩家を開けたことを尋ねもせず、行き先にも興味すらないといった様子で、全くいつも通りに接してきた。
柔和な彼の笑顔に際し、悠理に浮かんだのは、これまでも幾度となく思いついていた考え……ひょっとしたら、真実の父親では無い。
息子の成育に対し、関心が薄い。
あの女と交際していた縁で、誰と為したかも分からぬ私生児を引き取ってくれたのかも知れない。破天荒な彼女に育児など出来る筈がないと判断して。きっと彼の考えは当たっている。同居などしていたらおぞましく、今よりも弄ばれ尽くしていただろう。
父は薄情ではないし、住む処も金銭も用意して呉れて、不自由はさせない。学校も通わせてくれる。全くの他人であるどころか、惚れた女が自分以外の男と作った子供であるのにも関わらず、此処までしてくれるという事実に感謝しなければならない。
彼と自分は貌のつくりも似ていない。ただ、あの女を愛してしまって、翻弄されたという点に於てだけは、似通っているのではと悠理は思った。




