森の中にて
ど素人の初作品な上に見切り発車です・・・・。更新遅いですが気長に見守ってやって下さい。アドバイス・感想是非お寄せください。
第一章 全ての始まりは確かに此処だった
第一節 森の中にて
「くっそっ!何処だよここっ。」
山中に少年の声が響き渡った。しかし、その声には木霊すら返らず、辺りは再び静寂に呑まれた。
「まいったなぁ。まさか僕まで拉致られるとは思ってもなかったよ。」
少年は頭を掻きながら立ち上がるとそう呟いた。年の頃十六、七歳のその少年は、不思議な雰囲気を纏っている。まだ幼さの残るようでいて飢えた獣を思わせるような容貌。背は百七十センチ程だろうか。細身の身体からは、制服の上からでもその下にある鍛えられた筋肉が見て取れる様だった。少年は倒れた時についたと思しき木の葉やら土やらを叩き落としながら、持ち物を確認していく。
「携帯、財布、ipod、それから・・・」
ここまでは、まぁ普通の男子高校生なら日常的に装備しているだろう。が、ここからがマズかった。
「銃は、無事か。予備マガジンもある。手榴弾も緊急キッドも無事だな。おっと、タグ、タグ!」
なんと米軍兵士もかくやっと思うような装備が出て来たのである。首から下げられて胸元に揺れているのはどうやらドッグタグらしい。
「携帯は・・・・お、動く動く。圏外なのはまぁほっといていいかな。財布の中身も取られて無いみたいだし、こりゃ営利目的じゃ無い事は確実みたいだな。」
・・・どうやら彼は、自らが拉致された事を自覚した上で、山中に転がされていた事も何も受け入れている様だった。さらに犯人の思考まで推理し始めたのである。と、その時、
「人の、声っ!」
彼ははっと声のした方角へ視線を向ける。
「どうやら、犯人のアジトは近いみたいだね。じゃあ僕が拉致られたのも結果オーライって事だよな。これで成果無かったら・・・。・・・父さんに確っ実に殺される・・・。」
なにやら自分に言い聞かせる様に物騒なことを呟いた少年は、確認のために広げていた持ち物を手早く装備する。その手つきは熟練の兵士のようだった。
「よしっ、じゃあちょっくら解決目指して動いてみますか。」
そういうや否や彼は突然駆け出した。木々が鬱蒼と生い茂り、足場も不安定な山の中を、
獣の様に少年は駆けた。その眼は目の前を流れる草木を逃さず捉え、その腕は迫る枝葉を的確に打ち払い、その脚はバネの様に歪な大地を蹴った。洗練されていながら荒々しいその走りは、見る者を魅きつける不思議な美しさを持っていたが、その時間は長くは続かなかった。
「ここか。」
少年は脚を止めて呟いた。森の奥まで進んだ所で、突然木々が開けた場所に出たのである。
地面に野球場の様なすり鉢状の大きな穴が開いていて、その底に白い建物が見えた。
「山中の森の奥、大規模な土地整備がなされた所に白い建物って・・・・。漫画じゃあるまいに。」
・・・まぁその感想もしょうがないと思えるほどテンプレートな状況である。
「ま、簡単に見つかって良かった。人の声が届く位だからそんなに遠くは無いとは思ってたけど。」
言いながらも少年は周囲を警戒していた。遠巻きに周りを一周しながら地面に手をついたり、木の枝で掘り返したりしている。傍目からみたら異常者としか言いようの無い行動である。「見張りはいない。トラップも無し。よっぽど腕の立つ用心棒が居るのか。狙われもしないのか。それとも単なる間抜けなのか。開けてみなけりゃ解らない・・・か。」
どうやら警備・防衛状況を確認していたらしい。いよいよもって唯の高校生とはかけ離れた行動が目立ち始めたが、本人は至って
当然の事と淡々と作業をこなしていった。そろそろ一周し終わるといった時、突然彼はその表情を険しくした。
「地面が乱れてる。・・・・・ここで何かあった?足跡から裸足はひぃふぅみぃの四つ。靴履いてんのは七人。・・・・・あぁ、さっきの声は此処か。」
どうやら彼が来る前に一悶着在った様である。
「ま、いずれにせよ中に入らない事には始まらないしな。・・・・これ超過手当て出んのかな・・・。」
ひとりごちて少年は慎重に建物に近づいていった。