五話
次の日、体が丈夫なせいか、それともビルに会いたいという気持ちのせいか、ロマリーの熱は大分引いていた。彼女は朝と昼の間に言いつけられた仕事を終わらせ、今日もビルが通るのを心待ちにして待っていた。すると、
「ビル!」
いつもの通りビルがやってきた。ロマリーは急いで彼に駆け寄ると、昨日集めた木の枝を見せた。
「ビル、昨日寒いって言っていたでしょう?これを使って焚き木をしたら、きっと暖まるわ」
ロマリーはきっとすごく喜んでくれるはずだわ。と期待に胸を膨らませたまま彼の言葉を待った。
「ロマリー、こんな細い枯れ木じゃあまり意味ないよ」
「えっ」
彼はさらに言葉を続ける。
「それに今日の朝にはもうちゃんとした焚き木用のものが届いたんだ。だからそれはいらないよ」
「そ、そうなの」
彼女にとって全くの予期せぬ言葉。ひきつった笑顔を見せるのが精一杯であった。
「それよりロマリー。今日僕はすごく素晴らしいものを先生に見せてもらったんだ」
「素晴らしいもの?」
すぐに話題が変わってしまったが、戻す勇気はなかった。彼に嫌われたくなかったのだ。
「宝石だよ」
「宝石って何?」
「宝石っていうのはね、山のなかに眠っている赤や青など透き通った色をしている石のことだよ」
聞いたことも見たこともない彼女にとって、灰色の石に別の色がつくこと自体不思議なことであった。
「そろそろ僕は家に帰るね」
「えぇ」
そう言うとビルは歩き始めた。
少し歩くと、何かを思い出したらしく、足を止めこちらに振り返った。
「そうだ。その枯れ木、学校の雪だるまに刺したら良いかもね」
それだけ話すと彼はまた歩き出し、家へと向かっていった。