一話
今年も寒いさむい冬がきた。ある村に住む少女は家の窓から今日も空を見上げていた。
雪は今日もひっそりと降り、積っていく。そんな雪が少女はあまり好きではいなかった。それなのになぜ外を見ているのか。それはこの時間になると歩いてくる彼に話しかけるためであったからだ。
「あっ」
少女は彼の姿が見えるとすぐさま家のドアを開け、彼を迎えた。
「ビル!学校終わったのね」
歩いてくる人は三人。その中の一人が少女の声に反応した。
「やぁ、ロマリー。今日も家の手伝いをしていたのかい?」
ビルと呼ばれた少年はロマリーと呼ぶ少女の前で仲間と共に足を止めた。
「そうよ。けれど、この雪のせいであまり遠くの村まで行けなかったの。それによりいっそう寒いし、雪なんて嫌いだわ」
それを聞いたビルの両側にいた友人はひそひそと笑いを我慢しているようであった。
ロマリーは学校も通うことのできない家の生まれ。とても裕福とは言えなかった。そのため着る服も十分な暖かさの服など着れるはずもなく、今も服からはみ出た手と足は真っ赤になっている。
ビルの友人達はその容姿を見て笑っていたのだった。
しかしロマリーは気づいていなかった。ビルとの会話に夢中だったからだ。
「雪が嫌いだなんて言ったらかわいそうだよ。そうだ。ロマリーは雪だるまを作ったことがあるかい?」
「いいえ、ないわ」
「今ちょうど話していたんだ。学校に大きな雪だるまが出来たら良いのにねって」
「ビル、そろそろ行こうぜ」
話が弾んでいると、ビルの友人が声をかけてきた。するとビルは、
「あぁ、そうだね。ロマリー、またね」
そう言って帰っていってしまった。
その夜、ロマリーは自分の持っている全ての服を着込み、大分すり減ってきた手袋と靴を履き、両親を起こさないようにそっと家を出た。ドアを閉めると急いでランプに灯りを灯す。誰も歩いておらず、雪だけが伸び伸びと降っているだけだった。