◆第一章 穢れし地上六厄災1◆
◆第一章 穢れし地上へ降りる者◆
地球は、天、地、獄に分かれている。天は神々が造りだし、穢れ無き場所。地は神々が人間に与えた楽園であったが人間はそこを壊し穢れた場所となった。獄、魔王が造りし闇に染まる場所。穢れが溜まり渦を成している。
闇と光の間に存在する中間所。そこは永劫に中間として在る場所だ。中間所は、魔と天どちらにも片寄ってはならない。
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早朝、一本の道を歩く女。白い雪のような肌。漆黒の髪。それは深い闇を溶かした様で腰下までの長さ。薔薇色の唇、全てを見透かす様な漆黒の大きな瞳。黒いミニワンピースはゴシック調で彼女の容貌に相応。黒いブーツが、一定のリズムを刻んでいる。
立ち止まるその前には両開きの扉。それが開く、部屋の中に敷かれる一本の光の道。女はその線の上を戸惑う事無く進んで行く。
「朝方からの呼び出し、一体何事?」
道が消え、灯る光。石造りのその場所には採光の窓は在る、しかし早朝では意味をなさない。
不満を述べる女の前には、黒いフードを被った人影。
「早々の呼び出し申し訳ない」
「本当よ。そう思うでしょ、椎叉[シイサ]?」
優美な笑みを浮かべ振り返る。現れたのは、一人の男。銀色の肩下までの髪。白い肌に右が紅、左が紫の異なった瞳の色を持つ。
「神と魔の血を宿す、憐華[レンカ]異瞳を持つ椎叉。パンドラの箱の事は知っているな?」
黒いフードの人物は淡々と話を進めていく。
「箱が開いたんでしょ?」
「六厄災が地上に放たれた。指令は『六厄災の封印』堕とす場合の烙印は君達に決定権を移す。『最低でも六以上』が条件だが」
「六厄災、神々でも手こずる奴ら。でも、私達が手を出して魔や神が納得するかしら」
「この件に神々は関わらないと言ってきた。魔も同様に」
「面倒な事は、中間人に……か」
「地上では範囲魔法陣を発動させる事。今より、地上に居る我らが同士の元に派遣する」
突如、石造りの床に浮かぶ淡いブルーの魔法陣。光の文字が何個も反転し、位置を変えて魔法陣の中心に並ぶ。外側には二重に重なる数列が二つ。淡いブルーだった光が徐々に、魔法陣完成の合図である紅光に変わっていく。
全てが紅く変化したその時、スモークが周りに充満し晴れたその場所に憐華と椎叉の姿はなくなっていた。