◆第一章 穢れし地上六厄災1◆
◆第一章 解き放たれし六厄災◆
「大変でございます!」
白い輝石で造られた一本道、それは時と時の境になる道。一人の若い男が叫びながら走っていく。やっと辿り着いた六角形の部屋。その部屋の中は、まるでプラネタリウムの様になっている。男は部屋に入るや否や、床に跪いた。
「申し上げます。封印されし六厄災が、地上へと放たれました」
部屋中がざわめき始め、辺りが明るくなる。六角形の壁は階段のようになっており、黒いフードを被った何十人もの人々が座っている。
「「厄災が地上にと?」」
「「大変な事になった」」
「「何故こんな事態に?」」
部屋に響き渡る疑問の声。ざわつく部屋の中心、水晶に映るのは手足を拘束され獄中に座り込む一人の女性。
「「彼女は?」」
「厄災を放ち人間の女、名をパンドラと。直ちに拘束し、獄へと移したところにございます」
「「厄災の状況は?」」
「我が隠密に追わせましたが未だに報告は御座いません。上層部の方々に、指示を仰ごうと参りました」
「「すぐさま地上に人員を送ろう」」
「「しかし、六厄災は神々でさえ手こずる程の力を有しておるのだ。そう簡単には……」」
「「神々への使いは送ったのか?」」
「はい、ですが今回の事には一切関わらない。そちらで処理を、との事に御座いました」
「「何と!」」
「「だから我々は人間などに箱を渡すことに賛成しなかった!それを強引に」」
「…………只今、隠密からの信号が途絶えたと連絡が」
「「隠密が?!……一体どうすればいいのだ」」
「「…………ならば“彼女”を地上へと送ろう」」
「「“彼女”を?」」
「「神と魔の力を有する“彼女”なら……六厄災を亡くしは出来ぬとも、封じることは可能かもしれぬ」」
「お言葉ですが、いくら“彼女”でも一人で六厄災を相手にするのは……」
「「彼の言う通りだろう」」
「「なれば、我らの中からどなたか行くか?穢れし地上に……」」
ピタリと静まりかえる部屋。今までのざわめきが、まるで嘘のように静寂が訪れる。
「でしたら、彼はどうでしょうか?我が教え子で御座いますが、私より強く高い【リョク】を持っております」
「「彼か、彼なら良いだろう」」
「「皆の者、承認を」」
透明だった水晶に、紅い光が浮かぶ。
「「……なれば、すぐさま下界へと遣わそう。六厄災を封じる為」」