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美女と野獣の最後の恋  作者: 猫塚ルイ


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第4話

頭上で、大きな、大きなため息が聞こえた。


「……狼さんはやめろ。ルークと呼べ」


「え?」


「え……?」


呆気に取られて顔を上げると、彼はどこかバツが悪そうに視線を逸らしていた。


「俺の名は、ルークだと言っている。お前はお前でいいのか?」


「あっ、はい!ルークさん…ですね…!私は、ベルです!」


名前を呼び合う。


それは、私を「喰らう魔物」としてではなく、一人の「人間」として認識したということだろうか。


「……大体の事情は分かった。手当ての礼だ。治療薬くらいなら、作ってやってもいい」


「えっ……!本当ですか!?」


私は飛び上がるように立ち上がった。


視界がぱあっと明るくなる。


お父様が助かる。


希望という名の光が、私の胸を焦がした。


「ありがとうございます、ルークさん……!本当に、ありがとうございます……!!」


私は、彼の前で何度もお辞儀を繰り返した。


喜びのあまり、先ほどまでの恐怖なんて、どこかへ吹き飛んでしまった。


だが、彼はは冷静にその大きな爪を立てて私の歓喜を遮った。


「だが、条件が3つある」


「条件…?何ですか……?」


私は、彼の言葉に、我に返った。


覚悟していた。


なにかを差し出せと言われることも。


だが、彼の口から出た言葉は、予想外のものだった。


「……1つは、俺の館の簡単な家事をお前に任せたい。お前のような令嬢にできるかは知らんがな」


「家事……?それぐらいでしたら…」


「2つ目は、夜に一人で外に出るな。何があってもだ」


「……は、はい」


「そして最後に3つ目は、俺が留守のとき、誰がやってきても、決して扉を開けるな。絶対にだ」


私は三つ目の条件に、奇妙な違和感を覚えた。


これではまるで、私を守ろうとしているのか、それとも……。


「……つまり、私はここで、ルークさんと一緒に過ごすということですか?」


「……俺は、人間が嫌いだ。…だが、お前が父を想うその心は、……信じてもいいと思った」


ルークはそう言うと、不器用そうに顔を背けた。


「薬は一週間で完成する。それまでお前はここで過ごせ。……嫌なら、今すぐ去れ。薬もやらん」


一週間


家ではお父様が待っている。


でも、ここで逃げれば薬は手に入らない。


それに、こんなにも慈悲深い条件があるだろうか。


私は彼の琥珀色の瞳を見つめ返し、一際力強く答えた。


「……分かりました。その条件、すべて謹んでお受けします」


私は、自分の決意を彼に伝えた。


お父様のため。


私は、一週間、ルークさんの館で一緒に過ごす。


それが、私の人生の、終わりの始まりなのか


それとも、新しい何かの始まりなのか。


このときの私には、知る由もなかった。

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