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美女と野獣の最後の恋  作者: 猫塚ルイ


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第2話

むせ返るような土の匂いに混じり


野性味を帯びた、けれどどこか高貴な香を思わせる「獣の臭い」が鼻を突く。


そして、私は見てしまった。


木々の切れ間に、時を止めたかのように佇む石造りの館。蔦が絡まり


苔生してはいるが、かつては王族でも住んでいたのではないかと思わせるほどの威容を誇る建物。


その門前に、巨大な「影」が座り込んでいた。


「っ……!」


悲鳴が喉の奥で凍り付いた。


それは、噂に聞く『狼の獣人』そのものだった。


全身を硬そうな灰色の毛皮で覆われ、その体躯は、四足で座っていても私を見下ろすほどに巨大だ。


もし立ち上がれば、私の二倍は優に超えるだろう。


そして、目が合った。


らんらんと琥珀色に輝く瞳。


それは暗闇の中で獲物を捉える冷徹な輝きを放ち


圧倒的な威圧感とともに、触れる者を拒絶するような深い、深い孤独を纏っていた。


蛇に睨まれた蛙のように、私は指先一つ動かせなくなった。


(食べられる…薬を手に入れる前に、私はあの方の餌になるんだわ……)


逃げなきゃ。


そう思うのに、足は地面に縫い付けられたように動かない。


私は、死を覚悟した。


だが、その時だった。


「……ぐ、ぅぅ……」


低い唸り声が、静寂を切り裂いた。


けれどそれは、私を威嚇する声ではなかった。


耳を劈くような獰猛な響きではなく、喉の奥から漏れ出た、耐えがたい「苦痛」の混じった喘ぎ。


よく見ると、彼の巨大な右の前足が不自然な角度で折れ曲がっている。


その足首を、無慈悲な鉄製のトラバサミが深く噛み砕いていた。


鋭い棘が肉に食い込み、灰色の毛皮はどす黒い血で濡れ、丸太のように腫れ上がっている。


「あっ……!」


恐怖を上書きしたのは、反射的な同情だった。


あんなに強そうな方が、こんな森の奥で


独りきりで罠にかかり、誰に助けを求めることもできず苦しんでいたなんて。


「……大変…!あ、あの!ちょ、ちょっと待っていてください……!」


私が声をかけると彼と目が合った。


しかし彼の返事も聞かずに、その場を離れた。


彼が何かを言おうとしていた気もするけれど、構ってはいられない。


私は必死で周囲を探索し、先ほど見つけた止血と鎮痛に効く「銀月草」を掴めるだけ摘み集める。


そして、履き古したスカートの裾を力任せに引き裂き、ありったけの力で長い布を作り出した。


再び戻ると、彼は先ほどと同じ絶望的な体勢のまま

私を射抜くような目で見つめていた。


その瞳には、人間への不信感と、運命を呪うような諦念が入り混じっている。


「お前、人間だろ……。逃げずに戻ってくるとは、何の真似だ。俺を嘲笑いに来たのか?」


「……お、驚かせてしまって、ごめんなさい!でも、そのお怪我……放っておけなくて」

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