彼女は、ブランコに乗りたい夢を数十年かけて叶えた
数十年ぶりに訪れた、小学校。
校庭には、ブランコが揺れていた。
今日は学校は休み。生徒は1人も来ていない。
私はイタズラ心がわき、ブランコに乗ってみた。キシキシとした、鎖の音。老朽化が進んでいる、ブランコに負担をかけないように、そっと漕ぐ。
こんな形でかつての夢が叶った事に、想いがこみ上げる。
涙が出そうになった。
私は学校に、馴染めない子どもだった。クラスで浮いてしまい、一部のクラスメイトからはイジメも受けていた。
担任教師は扱いにくい私に、どう接すれば良いか困っていた。
イジメに対しても、なんの処置も取らなかった。
弱っていく私を見かね、両親は田舎に引っ越す事を決意した。転校直前の、最後の登校日。
校庭のブランコを見て、『一度でいいから、乗りたかったな』と寂しくなったのを、まだ覚えている。
あれから数十年。色々あったけど、私なりに頑張ってきた。
かつての夢を叶えた今の自分を……あの時の、子どもの頃の私がみたら……『頑張ったね』 と褒めてくれるだろうか?
「市長、こちらにいたんですか!? 」
いけない! 秘書に見つかってしまった。
「勝手な行動は、やめてくださいよ。予定が分刻みで、決まっているんですから」
素直に謝る。
「ごめんなさいね。かつて、この小学校に通っていたから懐かしくて」
秘書から、ハイハイと受け流される。
「それで、視察の結果は? 」
私は気持ちを切り替え、仕事モードに戻る。
「そうね。学校側から要望のあった通り、遊具の全面改修が必要ね。全ての子ども達が、安全に楽しく遊べるようにするわ」




