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王弟が愛した娘ー音に響く運命ー現代パロ  作者:


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工場見学と、悪魔な妹

工場見学と、悪魔な妹

(ロクに寝れなかったな...)

休みの日にセラに会う。それだけのことで睡眠すら乱されるなんてどうかしてる。

連絡先を交換したものの、大方予想通りというか、返事は殆ど返ってこなかった。

何を着ていくか。

迷った末に白のシャツ、黒のパンツを手に取る。

「あ、お兄ちゃんもしかして今日その女の人来るの?」

「....なんで知ってる。」

「だってたかが工場行くのにそんなに服悩まないじゃない。ねえ、私も行っていい?」

「それはダメだ。」

「ええー、しょうがないなあ。これあげようと思ったのに。」

「何だ?」

「シーワールドの招待券。丁度2枚あるんだけどなあ。」

ニヤニヤと笑う妹は確信犯だ。普段は天使の妹だが実は悪魔な面も持ち合わせていたらしい。

「....最初か最後、一瞬なら会わせてやる。ただし何も言うなよ....!」

「はあい。やばい、そんな必死なお兄ちゃん初めて見た。お姉ちゃんに言ってもいい?」

「やめろ。あいつだけはダメだ。」

とやかく言う妹の相手をしながら階下に降りれば母と姉が出かける支度をしているようだった。

「あら、レオ今日デート?」

聞いてくるのは噂の姉、フェルシオーネだ。

「ちげえ。」

「ふーん?昨日あんなにソワソワしてた癖に?」

「黙れ。」

「お姉様にそんな口聞くわけ?いいけど。シャッツから聞くから。」

「シャッツ、俺の方が確実にお前を可愛がってるぞ...!」

「でもお兄ちゃん、招待券あげたのにお礼も言ってなーい。」

「いや、それは....ありがとう。」

「ははっレオが大人しく従ってる!どんな子なわけ?」

「本とお菓子大好きでお兄ちゃんに興味ないんだって〜」

「シャッツ....!」

「なにそれウケる。でもお菓子好きなら丁度いいんじゃない?うちに連れてくれば。」

「それで今日来るらしいよ?」

「ほーう?それは会ってみたいな。」

「お前ら、マジでやめろ.....」

「フェル、そろそろ行かないと遅れるわよー」

「はーい」

「お姉ちゃんもお見合いなんでしょ?楽しんできてね。」

「見合いに楽しいも何もないよ。めんどくさい。」

「あんたがいつまでも相手を見つけて来ないからいけないのよ。少しはレオを見習いなさい。」

「あいつは遊んでるだけだろ。」

「でも今本気の子がいるんでしょ?私も会ってみたいわ。」

「恋人ですらないんだ。頼むからやめてくれ。」

「ならさっさと落としてらっしゃい。行くわよ、フェル。」

出て行った姉と母を見送ると既に胃が痛い。そろそろ向かわねば約束の時間に遅れてしまう。

「じゃあ俺も行くから後でな、シャッツ。」

「はあい。」

鏡の前で髪を整えると失いかけた自信が少し蘇る。セラの私服を見るのは初めてだ。膨らみそうになる想像を慌てて押しやると車のキーを開けた。

セラの家はお世辞にも綺麗とは言えないアパートの一角だった。行っている学校から言えば家はそれなりに裕福なはずだが....

考えていればドアからセラが出て来た。白のTシャツにカーディガンに緩めのパンツ。シンプルなネックレスとピアスは特にレオを意識したとすら思えないがレオの心臓を揺らすには十分だった。

(いや待て、可愛すぎるだろ....)

「レオくん」

薄くだが化粧もしているらしい。年頃の女の子なのだから当然と言えば当然なのだが、セラがしているイメージがなかっただけに意識してくれているのかと期待してしまう。

「服、似合うな....」

「工場大丈夫かな?邪魔にならない?」

「全く問題ない。乗れよ。」

ドアを開けて促すとセラが助手席に足を滑りこませた。運転席に乗り込んでハンドルを握る。いつも運転するこの車もセラが隣に座っているだけで違う車になったようだ。

(死んでも言えない、手汗でハンドルが湿っているなど...)

「工場、遠いの?」

「20分ぐらいだな。そう遠くない。」

「レオくん大丈夫?目の下、少し隈があるように見える。」

それはお前が――――

言える、わけがない。お前とのデートを意識して眠れなかったなんて。

「....少し考え事をしてたんだ。お前は眠れたか?」

「今日起きないといけなかったから頑張って読むのやめて寝たんだよ〜」

そういうセラはどこか誇らしげだ。彼女にとって漫画は人生の最重要事項なのだろう。

「漫画以外に好きな物ないのか?お菓子は分かってるけど。」

「アニメとか美術館行ったり....あとはピアスをちょろっと集めたり?」

「ピアス?」

「うん。ハンドメイドのとか見ると、つい見ちゃう。他のアクセはあんまなんだけどね。」

プレゼントは決まりだな。いい情報を得たと喜ぶレオの心は悲しくなるほど正直だ。

「レオくんは?何か好きなものとかあるの?」

「俺か?俺は....建築物見たり、偶にゲーセン制覇したり....物で言うなら香水はよく集めてるな。」

「建築物とゲーセンて差がすごいな....

香水って私全然分かんないんだけど、一本で何種類もブレンドされてるんだよね?」

「まあちょっと二重人格みたいなところがあるのは認める。香水はそうだな。一本一本違うから面白いな。好みを把握して調香師に合うものを俺は作って貰ってる。」

「自分用のを作ってもらえるの?」

「ああ。気になるなら今度行くか?」

「気にはなるけど何も知らないから敷居が高い気がする....」

「なら今度香りだけでも試しに行こう。それならハードル下がるだろ。」

「それもそうかな...」

ここで次を取り付けてシーワールドまで漕ぎ着けなければならないのだ。道のりは長い。

工場前に着くと、社員たちが声をかけてくる。

「おはようございます、レオ様。」

「レオ様、今日は雰囲気が一段と....」

セラを見て言いかけた社員をひと睨みするとそそくさと退散して行った。会社で見せる顔とセラに見せる顔は随分違う。セラが戸惑わなければいいが....

「お兄ちゃん!」

前から走り込んできたのは現れると約束していたシャッツェルだ。余程セラに会いたかったらしい。

「その方が....!綺麗な方!名前は何と言いますの?」

「セラです。レオくんの妹さんですか?」

「はい、シャッツェルと申します。今後ともよろしくお願いしますわ!」

「こちらこそ...?」

セラは戸惑うどころか若干引いている。当然だ。恋人でもない男の妹にこの勢いで来られれば普通は引く。

「お兄ちゃん、シーワールドの券はどうなったの?」

「いや、まだ....」

「もう、ダメじゃない!男が廃るわ!」

「シーワールド?」

「後で話すから気にするな....」

「じゃあ私は行くからごゆっくりしてくださいな。」

「ありがとうございます。」

本当にこのためだけに来たらしい。それにしても見事にいらないことだけを喋ってくれた。

「可愛いね〜妹さん。シャッツェル?」

「そう。普段はな。普段は可愛い妹なんだよ....」

「今日は違うの?」

「まあ色々あって今日は悪魔だな....とりあえず行くか。」



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