追えなかった背中
追えなかった背中
クシェルが慌てた様子でレオのところにやってきた。クシェルが慌てるなんて珍しい。
「どうしたんだ?」
「セラが、トイレに行ったっきり戻ってこない。5分なら分かるけどもう15分近くなる。昨日の今日だ。何かあったとしか思えない。」
油断した。クシェルと一緒なら大丈夫だと思った。それがたった数分でやられるとは――――
女の嫉妬は侮れない。慌てて教室を出てトイレ付近にいた生徒に片っ端から声をかけてみる。
「おい、セラ見てないか。」
殆どが見てないと答えた。ダメ元でもうひ一人聞くと、欲していた答えが聞けた。
「なんか女たちと下の方歩いて行ったけど。」
下。ド定番だが体育館裏か。
校内をこんなに走ったことなんてない。必死に向かうと人影が見えた。影は抵抗もせず殴られようとしている。
見えた光景に血が沸騰するのを感じながら女の腕を掴んだ。
「お前……死にたいか?」
レオがキレていることを察した女は怯えながら、それでも高飛車に言う。
「だってレオくんこの女抱いてもないんでしょう?それなら私たちの方がいいってことじゃない!」
「あ?何勘違いしてんだ?もし次セラに手出したらお前ら全員社会的に殺してやるから覚悟しとけ。それから周りの女どもにも伝えろ。……俺は本気だぞ。」
殺気を放てばたまらず女たちは逃げて行った。流石にこれ以上はないと信じたい。
「セラ」
呼びかけても反応がない。余程怖かったのだろうか。
「セラ、大丈夫か?悪かった。来るのが遅れて……」
「ねえレオ。マンションって何?私はレオにとって手を出す価値もないの?」
「は?待て、あの女たちに言われたのか?」
「レオはあの女の子たち全員マンション連れて行って抱いたんでしょ……私だけ、馬鹿みたい。」
セラの頬には涙がつたっていた。震えた声に弁明しようとした声は遮られた。
「違う、セラ。それは……」
「聞きたくない。帰る。皆には体調悪くなったって言っといて。」
セラを追いたかった。だがその背はレオが追うことを拒絶していた。




