秘密はペンキの蓋と一緒に開いた
秘密はペンキの蓋と一緒に開いた
あれこれという間に夏休みは終わりを告げた。
あの後、一度だけ家に来たレオはピアノを聴いて、ご飯を食べて帰って行った。
夏休み明けは色んな話が飛び交う。どこに行っただの誰と誰が付き合っただの。
早速、ホームルームで学園祭の話になる。
「模擬店、劇、展示どれがいいですか」
結局模擬店でテーマはワンダーランド。役割分担でセラは厨房に入ろうとした。
「セラは表。異論は認めません。」
このクラスのまとめ役、アンナの言うことには敵わない。
「……はい。」
この日から昼休み、放課後は学園祭の準備一色になる。
今日は材料集めから。木や段ボールなど再利用で貰えるものは貰って、ペンキなどは買い出し。
学園祭なんて国内でやるところは殆どない。なんでも日本に姉妹校があるこの学園はある年日本の文化祭なるものを取り入れてみたところ、大好評だったため今も伝統となって続いているそうだ。
余っている木材や段ボールを使って枠組みを作っていく。そんなことをしていれば買い出し班が帰ってきた。
「買ってきたよー!」
「お、ナイス」
「ありがとう~」
これによって登場したペンキを塗るのだが。
生憎セラはペンキなるものを使ったことがない。
(蓋、どうやって開けるんだろ)
手近にあったドライバーに目が入った。
(あれならいけるかも)
ドライバーで思いっきり蓋を突き刺してみる作戦だ。
「えいっ」
カン!
いい音を立てるのだが開く気配はなかった。
(もう一回)
「あ、あの」
近くの男の子が声をかけてきた瞬間すごい形相で向かってきたのはレオ。
「馬鹿!ドライバーでペンキの蓋をぶっ刺すやつがどこにいる!」
「いや、開くかなと思って……」
「ほんっとにお前は……蓋はこうやって開けるんだ。ほら。」
「あれ、簡単に開いたね。」
「当たり前だ!お前やる前に調べるとかなんとかしろ。指飛ばすつもりか。」
「レオだって包丁で指飛ばしそうになってた癖に……あ。」
クラスの視線に気づいていなかった。確実に聞かれた会話。自分の失態に気づいたところでもう遅い。
「え、なにレオくんとセラ付き合ってるの?」
クラスを代弁するがごとく聞いてきたのはアンナだ。
「あ、いやそういうわけでは……」
「ああ、付き合ってる。見ての通りだ。」
「あ、ちょっと……」
「え、嘘いつの間に?」
「レオとセラとかビッグカップルじゃん」
「マジかよどっちが先に惚れたんだよ」
クラス中の口々の言葉に穴があったら入りたい気分になる。
「俺が惚れて落とした。数か月前な。お前ら黙れ。」
「は?お前が?」
「なんでだよ。一人の女なんか興味ねえって言ってたじゃん。」
「過去の話蒸し返すんじゃねえよ。今は一途なの。」
男子の矛先はレオに、女子の矛先は当然セラに向かってくる。
「え、セラどうやってレオくん落としたの!?」
「本読んでばっかなのに!」
「どうやってって……よくわかんないけど。」
「レオくんがある日セラに話しかけてきたのよ。話しているうちに好きになって付き合ったんですって。」
ナイスアメリス。噂好きのアメリスが言うと皆黙ってくれた。
「流石裏の高嶺の花ってことか……」
「はいはい作業ー遅れちゃうよ。」
アンナの一声で作業に戻る。隅で作業をしているとクシェルがやってきた。
「バレちゃったね。」
「自爆したから文句も言えないわ……」
「いいんじゃない?レオそろそろキレそうだったよ。」
「騒ぎになるから嫌だったの。」
楽しそうに揶揄っていたクシェルが真顔になった。
「まあね。気をつけなよ。明日には学園中で噂になる。そしたら黙ってない女がいるだろうからさ。」
「ありがと。気を付ける。」
クシェルの警告が明日には現実になることを、セラはまだ知らなかった。




