理解する姉の言葉
理解する姉の言葉
「中々筋がいいぞ。本格的にやったらどうだ?」
「ちょっと……やってみたいです。」
フェルが連れてきてくれた乗馬クラブで人生初の乗馬を楽しんでいた。馬に跨ると、全ての景色が変わる。馬が歩く度揺れる景色と感じる風は本当に病みつきになりそうだ。
「なら定期的に来るか。最近ピアノで家にいるんだろう?いい気晴らしになる。」
「本当に気が晴れます。馬セラピーなんてのがあるのも頷けますね。」
「そうだろ。私は息が詰まるとここに来る。普段からよく来てるけどな。」
「走れるようになったら最高でしょうね。」
「それはいい気分だ。楽しみにしておけ。」
「そうします。」
「少し休憩するか。あそこのカフェのコーヒーは美味しい。サンドイッチなんかもあるしな。」
サンドイッチを頬張り、コーヒーを飲む。馬から降りて地に着いた足は残る浮遊感に戸惑っている。
「レオとは上手くいってるのか?」
そう聞く表情は笑ってしまうほどレオそっくりだ。
「なんだ」
「いえ、あまりにも表情が似ていて……」
「似ているのは認めよう。だが先に生まれたのは私だ。真似したのはあいつだな。で、上手くいってるのか?」
「いっている……とは思うんですが。」
「なにか思うところがありそうだな。」
「気のせいかもしれないんですが、最近少し避けられているような気がしていて……単に仕事が忙しくて疲れているだけかもしれないんですけど。」
「仕事?仕事は……」
フェルは眉間にしわを寄せて悩んでいるようだ。似た者同士、行動原理が分かるのかもしれない。
「セラ。」
「はい。」
「レオは情けない見栄っ張りで意地っ張りな男だ。忘れるな。」
突然の容赦ない悪口だが意味なく発されたとは思えない。
「……ある程度、分かっているつもりではあるんですが。レオはあまり見せたがらないし言ったら傷つけちゃう気がして。」
「あいつは寛容だが器の狭い男だ。おまけに怖がりだ。小さい頃お化け屋敷で泣いていた。」
「それはちょっと可愛いかも」
「今度証拠写真も見せてやる。だが一つだけ言えるのはそんな馬鹿な男だがお前には本気で惚れているということだ。」
「……なんで分かるんですか?」
「私があいつの姉だからだ。初めて本気で惚れた女に嫌われたくなくて必死なんだよ。全く情けない。」
フェルはセラが見えていない何かが見えているようだった。それがなんなのか、レオが話してくれる日は来るんだろうか。
「まあこんなことを言うのは癪だがあいつがお前を愛しているという点に関しては信じてやってくれ。」
「フェルさんが言うと説得力がありますね。」
「そうだろ。可愛くない弟のために言ってやってるんだ。私としても変なのが妹になられたら困る。」
「……私変かもしれないですけど大丈夫ですか」
「頭がお花畑みたいな女という意味だ。お前の頭は正常だろ。」
「お花畑ではないと思いたいですね。」
「違うから安心しろ。」
フェルはレオとはまた違った安心感があった。今頃レオとライは何を話しているんだろうか。
互いの家と思いが交錯する一日が過ぎていった。




