甘さに紛れた不安
甘さに紛れる不安
「楽しかったか?ショッピング。行ってきたんだろ?」
エリシアたちと出かけた次の週。珍しく早帰り出来たらしいレオが家に来た。
「うん、楽しかったよ。アメリスもエリシアもデート行くって」
「へえ、彼氏いんのか?」
「まだ。それにエリシアの相手アレスだって。なんか意外だった。あ、レオ誰にも言わないよね?」
「お前が言うなって言ったらクシェルにも言わねえよ。つーかアレスか。それなら安心だな。あの睨みが効いたか。」
「睨んだの?」
どことなく気まずそうなレオ。
「……」
「なによ。アメリスが言ってたよ?私のとこ来る男の子殺しそうな目で見てるって。」
「いや、まあそれは間違ってないんだが。……あの保健室連れて行ってもらった日、覚えてるか?」
「保健室?……ああ、あの頭痛かった日?」
「そう。あの時アレスが話に来てただろ。お前が馴れ馴れしくあいつと話すのに腹が立って頭痛いなんて仮病を使ってあいつを睨んだんだ。」
こんなことをする人間のどこが完璧なんだ。
「呆れた。仮病だったの?変なことばっかり言ってると思ってたけど。」
「……俺も必死だったんだ。お前が鈍いから。」
「そんなに鈍かった?レオは女の子に慣れてると思ってたからよく分からなかったのよ。」
「分かってるよ。過去の俺の悪行が招いたんだろ……でも惚れた女に明らかにお前を狙ってる男と仲良くしたらと言われたらショックなんだよ。」
「アレスは単に漫画の話がしたくて来てたのかと思ってたの。」
「そんなわけがあるか。お前夏休み明けの学園祭、どうするつもりだ。」
「どうするって……普通に働くけど。」
「正直隠しておくのは難しいぞ。」
「分かってるけど……出来るだけ頑張るの。どうしても無理なら諦める。」
「全く……分かったよ。セラ、こっち向け。」
言われた通りレオの方を向けば降ってくるのはキス。引き寄せられた腰にある手は強くて、離してくれそうにない。頬に添えられた手が首筋をなぞって、降りていく。その瞬間ハッとしたようにセラを引き離した。
アメリスの言葉がよぎってしまう。
『手、出されてないの?』
聞きたくなる。でも聞くのはどうしたって恥ずかしい気がした。
その時買った物の存在を思い出す。
「あ……」
「どうした?」
「レオ、待ってて。」
包んでもらった物を部屋から持ってくる。
「これ、プレゼント。ほんとに気持ちだけなんだけど。」
「俺、誕生日じゃないぞ?」
「レオには沢山してもらったから何かしたくて。」
「そんなこといいのに。……開けていいか?」
「うん。」
プレゼントを開けてもらう時は緊張する。人が、いつだって喜んでくれるとは限らないから。
緊張するセラに反してレオは嬉しそうに
包みを開けていく。出てきたものを見たレオの顔が綻んだのを見て、セラの緊張も解けた。
「キーケースか。お前がこうやって気にしてくれるの、すげえ嬉しい。大事にする」
「それなら仕事にも使えるかと思って……喜んでくれてよかった。」
「ああ、使う。セラ、愛してる。」
「なに急に……ん……ゃ……」
レオの、鋭い目。そこに愛が混じると妙に色気があって、いつも心臓は甘く跳ねてしまう。
「私も、レオが好きだよ。」
「なあ、いつか愛してるって言ってくれるか?」
「がんばる……」
「はあ……俺そろそろ限界かも。」
「なにが……」
その時、ドアが開く音がしてライが帰ってきた。
「ただいまーあ、レオさんお久しぶりです。俺、また邪魔しました?」
「いや、俺はお前に救われてる。」
「んー、俺的にはレオさん我慢しすぎな気もしますけど。」
「それ弟が言う言葉じゃないぞ……」
なんの話をしているのかは分からないがレオが来る前に仕込んだご飯の続きを作ってしまう。
三人で食べるご飯は美味しい。ライと二人も平和だけど三人になると賑やかになって、楽しくなる。
レオを見送るとピアノを弾いた。楽しさと賑やかさは浮かびかけた不安を、沈み込ませていた。




