傾いた天秤、まだ言えない答え
傾いた天秤、まだ言えない答え
いつものように仕事に行くと、グレータが待っている。
「今回のレポート、更に精度が上がっていたわね。前回の件の打ち合わせも残ってるわ。忙しいわよ。」
「望むところです。」
仕事が忙しいのはいいことだ。集中して、うるさい外のノイズをシャット出来る。
仕事終わりに、グレータはまたお菓子をくれた。
温かい魔法のかかったお菓子は、食べた時、不思議な甘さをくれた。
「顔が変わってきたわね。気づいてる?」
「え?」
「分かってきたんじゃない?受け取ることの意味が。」
「あ……」
グレータから受け取るお菓子への抵抗感がいつの間にか消えていた。それはグレータがお菓子を受け取って食べるセラを嬉しそうに見てくれているから。
その顔を見て、気づいてしまう。自分がかけていた天秤がいつの間にか自分の思っていなかった方へ傾いていることに。
「本当に大切な人にはね。全てをあげても嬉しいと思うものなのよ。相手が笑顔になるならね。」
「……何故グレータさんがこんなに私を気遣ってくださるんですか?」
「そうねえ。坊ちゃんとその可愛い恋人に対する老婆心よ。それだけ。」
「……ありがとうございます。」
「坊ちゃんには、ちゃんと話してあげてね。ああ見えて凄く気にしてるから。」
「分かって、いるつもりなんですが、私はいつも言葉が足りません。」
「大丈夫。そのうち出てくるようになるわ。」
「帰るぞ。」
「あ、レオ……」
「じゃあまたね。セラちゃん」
「はい、また。失礼します。」
歩きながら、レオが聞いた。
「今日うち来るか?あれから来てないだろ。文句言われてんだよ。」
「お邪魔じゃないなら……」
「こっちが来て欲しいんだから邪魔なわけないだろ。ライには言っといたから。」
「もう?」
「早めに言ってやらないとご飯のことがあるだろ。」
「確かにそれはそうだけど。」
「とりあえず行くか。……大丈夫か?」
「うん。大丈夫。」
「……なんかあったら言えよ。」
気付いてしまった事実をどうやって伝えよう。伝えても、いいんだろうか。隠して、なかったことにしてしまいたい。そう思うのは私の過去のせいなのか、それとも正しい選択なのか。答えが、出なかった。




