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王弟が愛した娘ー音に響く運命ー現代パロ  作者:


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駆ける庭園、祝われる喜び

駆ける庭園、祝われる喜び

白い像に出迎えられ、入った庭園は幾何学模様に整備された芝生や色とりどりの花が咲き乱れ、足を踏み入れた途端、別世界に来たみたいだ。

「わあっ……!」

思わず駆け出したセラを慌てて追いかけるレオ。こんな場所に来るとクルクルと回って踊ったり、一つを眺めて思考の海に入ったり、色んなことがしたくなる。

忙しなく感動していると横から呆れたレオの声が聞こえてきた。

「お前なあ、写真撮るんじゃなかったのか。」

「あ、忘れてた。」

そうだった。写真映えしそうだからとここに来たんだった。忘れたこともどうでもよくなるようなお伽のような庭園。

「なんかお前の楽しそうな顔見てたら写真なんかどうでもよくなってきた。」

「そう?でも折角だから撮ろうよ。あ!あの上に行けば一望出来るんじゃない?」

「あ、おい!」

駆け上がった階段の先には庭を一望できる小さなデッキ。こんな風に、自由に美しいと喜ぶことが許されてる。それって、なんて贅沢なんだろう。

パシャッ

写真を撮る音に驚いて振り向けば再びなるシャッター音。

「あ!なんで勝手に撮るの!」

「いいだろ。写真撮りに来たんだから。お前の嬉しそうな顔、可愛くて撮りたい。」

慌てて見回したデッキには幸い人は殆どいなかった。こんなの聞かれたら恥ずかしくてデッキから身を投げてしまう。

「もう……私もレオの写真撮る。」

「お前は景色を楽しめよ。気が向いたら撮ればいい。でも折角だから……」

肩を寄せて、二人の写真。

「よく考えたら初めてじゃない?」

「そうなんだよ。この間スマホの待ち受け変えようとしたらないことに気づいた。」

「私が写真忘れちゃうもんねえ。」

「その代わりお前は今この瞬間を味わえる。写真は俺に任せてお前は味わえ。そしたらいいインスピレーションになんだろ。」

「確かにこんなとこ来た後は帰ったらすぐ防音室行きたくなる。」

何気なく漏らした言葉に後悔した。あの時の話が終わったわけじゃないのに。

「それならそうしたらいい。ご飯は食べて帰って、ライの分も買って帰ろう。」

ただ何ともないようにしてくれる肯定の言葉。私が漏らした言葉を実現させてくれるこの人に、甘えたくなってしまう。

「さっきまでの勢いはどうした?見て回るんだろ。行くぞ。」

つい入り込みそうになった思考の渦から抜け出し、繋いだ手を時に駆け出して離したって、また戻ってこれる。

「噴水だ!」

駆け回るセラを見守りながら写真を撮るレオ。たまに感想を言い合いながら、また手を繋いでゆっくり歩いて。ランチはカフェで済ませて。幸せな時間の流れる時は早い。博物館を一周して出てくると奥まったところに静かな絶景スポットがあった。

「ここ、いいスポットだね。バックに建物もあって。」

「ここはウェディングフォトにも使われるらしいぞ。」

「なんか納得。こういう場所でのウェディングフォトいいなあ。」

「ならここか似た場所を探すか。折角だし今日もここで一枚撮ろう。」

今さらりととんでもないことを言った気がする。いや今までも未来の嫁がどうとかは言っていたのだけど。レオはといえばいつの間にか近くにいた人に写真をお願いしていた。

「あら、可愛いカップル!さ、並んで!」

気のいいおばさんはさっさと写真を撮ってくれた。

「ここは結婚の写真にも使われるから縁起がいいわ。」

「そう聞いて僕らもこんなところがいいなと話してたんですよ。」

おい、私は会話に参加したつもりはないぞ。そんな心の声が発せられるわけもない。

「あらまだ若いのにそんなことまで考えてるの?いいわねえ。お似合いよ。」

「ありがとうございます。」

にこやかなおばさん去っていくとつい心の声が出てきてしまう。

「ちょっと、なんて先の話してるの」

「お前は嫌なのか?」

返ってきたのは予想外に真剣な顔。

「嫌って……先の話をするのが?」

「いや、俺と結婚するのが。」

まだ付き合って大して経ってないのだ。なのになんでこの人はこんなに本気で未来を私と見据えてるんだろう。

「嫌……なわけじゃないけど。なんだか現実味がなくて。」

「今はそれでいい。でも忘れるなよ。俺は本気だ。」

そんなの、その顔を見れば嫌でも本気だって分かる。いつも軽く茶化して回るくせにこんな時は信じられないほど本気の顔をする。

「さて、そろそろ行くか。夕飯食べて、帰ってピアノ弾くんだろ。」

「あ……うん」

選んでくれたのは美味しいイタリアンのレストラン。レオと食べるご飯は美味しく感じる。レオと見る景色はいつもより綺麗に見える。きっと、私にとってレオは私が思う以上に特別な人だ。

食べ終え感傷に浸っていると、テーブルの上には一つの箱が置かれていた。

「セラ、誕生日おめでとう。」

「知ってたの……」

実は少しだけ気にしていたのは内緒。誕生日の話なんてしたことがなかったから仕方がないと思っていた。

「当たり前だろ。お前の誕生日を祝わず誰のを祝うんだ。ほら、開けてみろよ。」

「うん」

そーっと開けた箱に入っていたのは綺麗なピアス。

「わあ、綺麗……!」

「好きなんだろ?アルコールインクで出来てるらしい。珍しいと思って。」

「こんな模様どうやって出来るのかと思ったらアルコールインクなんだ!すごい綺麗」

「気に入ってくれたならよかった。」

「つけてもいい?」

「ああ、もちろん」

嬉しくなって付け替えたピアスは揺れるたび、気分が良くなる気がする。

「どう?」

「すげえ似合う。大きめ選んだけど正解だったな。」

「ありがとう、レオ。」

「お前が喜んでくれたら俺は嬉しい。……そろそろ行くか。」

「うん。」

帰りの車内で今日撮った写真を見ながら話をして。こんな幸せな誕生日、いつ以来だろう。

「じゃあまた明日な。」

「うん。レオ、今日はほんとにありがとう。最高の誕生日だった。」

「それならいい。またな。」

「またね。お休み」

「お休み、セラ」

足取り軽く家のドアを開けた――――

パンッッ!!

「きゃあっ!?」

鳴った音に足が固まった。

「あっはっは!セラ姉、その反応最高だよ!」

「ライ!」

「誕生日おめでとうセラ姉!ケーキ買ってきたよ!」

「え、嘘ありがとう……」

「やっとセラ姉の誕生日を祝っても嫌味を言われない!この日を待ちわびてたよ!」

「確かに酷かったものねえ……」

ある年ライがケーキとプレゼントを買ってきた。

母親はといえば

『弟に買わせるなんて酷い姉ね。その上ケーキなんて昨今高いのにそんな贅沢までして。年を一つとったぐらいで大げさね。』

切り分けたケーキも

『あら、セラが先なの?誕生日なんだから生んでくれた親に先に感謝すべきじゃないの?』

今から考えれば母が言っていた言葉はおかしかったと思える。だけど当時、その言葉を私は本気で受け取っていた。

それ以来、ライはケーキを買うのをやめて、こっそりプレゼントだけ渡すようになった。

「セラ姉何ボーっとしてるのさ!ケーキ食べよ!」

セラが好きな、チョコレートケーキ。好きな人に祝ってもらって、弟にまで祝ってもらって。

「私明日死ぬのかしら……」

「なに縁起でもないこと言ってんの。今日はたらふく食べよ。誰も咎めたりしない!」

「そうね。食べつくしましょ。」

ケーキを食べすぎてお腹が一杯になった。太ることが心配になった。夜、ピアノを弾いた。引いた音色は自分でも音の温度を感じられるほど、温かい。天秤がまた大きく傾いたことに、セラは気づいていなかった。


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