傷つけた。その痛みと迷う心
傷つけた。その痛みと迷う心
玄関から、動けなかった。止まらない涙は拭っても拭ってもこぼれ落ちてくる。ライが、帰ってくる時間が近づいていた。動きたがらない身体を鞭打ってご飯を作った。
疲れているから1人で食べてくれという書き置きに、ライは心配するかもしれない。
部屋に入って、気づけば止まっていた涙に放心状態になった。
誰かを、傷つけたのはいつ以来だろう。
一度だけ、幼い頃にメアと喧嘩した。あの時の不快感を、今でも覚えている。だからあれ以来、喧嘩はしなくなった。
これを、喧嘩と言うべきなのか分からない。それに、あの話に答えも結局出てないのだ。どうしたらいいのか、セラには分からなかった。音楽がやりたいと言った先に、未来は保証されていない。幼い頃の才能の保証は、18の今も効くわけじゃない。
だが会社ではその能力の保証を貰ったばかりだ。そこでしっかり学べば、レオの会社を助けることができるかもしれない。
夢と、現実と。並べた時に取るべきものが現実であることぐらいわかっていた。なのに、掴むのにこんなにも躊躇ってしまうのはどうしてなんだろう。
明日は仕事がある。レオと顔を合わさなければならない。レオは、私を嫌いになっただろうか。あんな風に拒否して、傷つけたのだ。嫌われたって、文句は言えない。
そう思うと、折角止まった涙はまた流れるのをやめてはくれなかった。




