心が軽くなるケーキと重くなる胃袋
心が軽くなるケーキ、重くなるレオの胃袋
「疲れたわね。そろそろ休みましょうか。」
「はい....」
2軒。テンション高く買い物を済ませるとどっと疲れが押し寄せて来た。
「カフェにしましょうか?あそこならケーキもあるわよ。」
「ケーキ!」
「本当に好きねえ。好きなの食べなさい。遠慮は禁物よ。」
「ありがとうございます。」
カフェに入ると甘いデザートとコーヒーの苦い匂いが入り混じる。
「コーヒー2つ。それからチョコレートケーキでいいかしら?」
「はい。」
「じゃあそれで。」
「ふぅ.....楽しかったわぁ。女の子が化けるのっていつ見てもいいわよねえ。」
「ジーナさんじゃなければあの服は選べませんでした。」
「年の功よ。でも本当によかったわ。レオが選んだ子がセラちゃんで。」
「そうでしょうか....」
「うち男の子はレオだけでしょう?嫁姑問題にはなりたくないし、気が合わなかったらどうしようかと思ってたのよ。」
「うちもそれで大変なことになってました。」
「でしょう?だからセラちゃんなら安心だわ。遠慮なく娘として扱わせてもらうわね。」
「何だか人生の徳を使い果たしてしまった気分です。」
「何言ってるの。今やっとスタートラインに立ったのよ。」
「.....私には一生母親はいないものだと思っていました。ジーナさんといると、本当にお母さんといるような気持ちになります。」
「まあっ.....そう言ってくれるなら嬉しいわ。何でも話していいのよ。学校のことも、仕事のことも、レオのことも。特にレオがしょうもないことしたらいいなさい。この母が許さないわ。」
母親とは本来こう言うものなんだろうか。無条件に愛してくれて、認めてくれて、受け入れてくれて。
そんなの、あまりにも贅沢じゃないか。
「.....レオも、ジーナさんも皆私を家族として扱ってくれます。それが本当に嬉しくて、ずっと続けばいいと思うけれど、レオの気持ちが離れたらそれもなくなるんだなと思うと、少し、心が折れそうになる時があるんです。」
「レオのこと、信じるのは難しい?」
「信じて.....いる、とは思うんですが。何かが変わらず続くと言うことに対する信仰?はあまりないと思います。」
「そうねえ.......セラちゃん、私も親に虐待されてたって聞いたらびっくりする?」
「えっ?」
「見えないでしょ。今こんなに幸せそうで、家族もいて。でもほんと。私はセラちゃんみたいに内側に貯める子じゃなかったから中高時代荒れてね。喧嘩ばっかりしてたのよ。」
「そうなんですか........」
「でも夫と出会って変わったわ。不思議よね。人間って変われるのよ。セラちゃんも、今すぐにはきっと難しいわ。でも必ず変われる。貴女が変わるまで、そして変わってもレオは貴女を見捨てたりしないわ。」
続かない絶望を、知っている人の言葉だった。いつも人が慰める時は必ずこう言う。
『お母さんだって苦労してるんだから。』
私が、変わっても許されるんだろうか。そうやって変わっても、レオは私を愛してくれる?
まだ、私には分からない。でもジーナさんの言う通りなら――――
「このままは嫌です。変わりたい。」
「それでいいのよ。貴女は強いわ。....さ、行きましょ。そろそろ帰さなきゃレオに怒られちゃうわ。」
「あの、ジーナさん。」
「なあに?」
「今日、ありがとうございました。私、何も持ってないけどせめて会社でしっかり働きます。」
「.......レオは、いい子に好きになってもらえてよかったわね。行きましょう。」
「まだ食べるの?レオ、やけ食いし過ぎだよ。」
「こんなとこで滅多に食べん。たまに食べると美味い。」
「幸せ太りするんじゃない?身体、気をつけなよ。」
「運動はしてるんだ。セラに見合わん男にはなれんだろ。」
「口を開けばセラってほんと.....で、そのぬいぐるみ渡しに行かなくていいの?」
「.......行く。」
「今更恥ずかしくなって来たとかいわないでよ。大の男がUFOキャッチャー必死になってる時点で恥ずかしかったんだから。」
「黙れ。......行くか。」
「俺も乗せてってよ。別に俺にまで敵意向けないだろ。いくらお前でも。」
「いいぞ。お前だけは信用してる。」
「はいはい。」




