楽しい試着地獄と、増えていくアザラシ
楽しい試着地獄と、増えていくアザラシ
「まずは一式揃えないとね。何が映えるかしら?このスカートにトップもいいわね。それから靴.....」
一軒目に入った店は大きめのブティック。値段なんて見たくもない。
「ちょっとエッジを効かせても似合うと思うのよ。レオを泣かせなくちゃ!」
気合いがどんどん変な方向へ向かっている気がする。
「店員さん、ちょっと試着を。それからこの服に合う靴を一通り持って来てくださる?」
「かしこまりました。」
「それ、全部試着するんですか....?」
「当たり前よ。今日は試着ダイエットだと思って臨みなさい!」
軍のノリで言われてついノリで返してしまう。
「イエッサー!」
「.....セラちゃんて実はノリいいでしょ。もっと弾けていいのよ?」
「そ、それは.....そのうちに。」
「楽しみにしてるわ。さ、行ってらっしゃい。ちゃんと1着ごとに出てくるのよ〜」
「はあい〜」
もう何でも良くなって来た。レオの時もそうなのだがあの心から楽しそうな顔を見るとどうでもよくなってしまうのはあの2人の才能だろう。
まずはサテンのベージュパンツにクロップ丈の黒のタンクトップ。羽織に薄めの緩いカーディガン。
こんなの着たことがないけれど。
「どう?」
「どうでしょうか....?」
「いいわ!ぐっと大人っぽくなるわね!パンプスにすれば色気も出るわ。次!」
ロングの花柄のレーススカートにオフショルのニット。
「あら、これならレオが砕け散るわね。次よ!」
自分が普段絶対選ばない服。最初は怖かったけれど鏡を見るたび見たことのない自分に会える気がして楽しくなって来た。
「どれもいいわ。あのシャツとボーダーだけは辞めましょう。セラちゃんシャツとボーダーは似合わないわね。」
「そうなんです。なにかがおかしくなります。」
「私もボーダーはテニス選手になるのよ。あるものね。人それぞれ。じゃ、それ全部お会計お願い。」
「!?全部!?」
「ええ、もちろんよ。まだ一軒目なのになに驚いてるの。」
「そ、それは流石に......」
「未来の娘に投資したい母親の楽しみを奪わないでくれるかしら?」
「は、はい。ありがとうございます.....」
ずっと、貰ってばかりだ。いつか私はこの人たちに恩返しが出来るんだろうか。
「さ、2軒目よ!問題!服の次はなんでしょう?」
「あ、あくせさりー....?」
「大正解よ!ここからは歩けるから歩きましょ。」
「はい。」
「セラちゃん学校でレオとのこと隠してるの?」
「はい、今のところは。」
「レオの周りの女が怖いから?」
「それもあるのと単純に恥ずかしいのとで。」
「レオよく聞いてるわねー。女ならレオに相手させなさい。あんなのに付き合ったら負けよ。」
「その意気で生きてみたいです。」
「貴女ならやれるわ。元は強いもの。」
「ありがとうございます。」
「.....レオ、セラの部屋をぬいぐるみで埋めるつもりなの?アザラシ、4つはいらないだろ。」
「好きだと張り付いていたし可愛いものが好きだと言っていた。」
「レオがこんなにアホだとは知らなかった。」
「黙れ。次シューティングやるか?ジュース賭けて。」
「乗った。」




