差し出された未来を、受け取る覚悟
差し出された未来を、受ける覚悟
『昼休み、すぐ屋上に来い。』
言われなくたって行くのに。わざわざ送られたメッセージに何か不穏なものを感じながら屋上へ向かった。
「セラ。」
「レオ、何かあったの?わざわざメッセージまで寄越して。」
「ああ。少し話がある。」
恋人で話と言えば別れ話が定番な気がした。付き合ってまだ間もない。けれどレオは我が家の内情を見過ぎた。どう考えても社長一家に相応しい家じゃない。1人でに想像が膨らみ、気が重くなった。
「ライには話したんだが....っておい、どうした。」
「ライ?」
「ああ。ライも関わってるからな。先に了解を得たいと思ってだな。おい、マジでどうしたんだ。」
ライにも関わる話。既に母親が迷惑でもかけたんだろうか。
「何でもない....続けて。」
「いや、無理だ。その顔してるお前に話せるわけないだろ。顔上げろ。」
そろりと顔を上げると目が合った。なんとなく合いたくないその目につい逸らしてしまう。
「セラ、何か変な勘違いしてないか?」
「わ、分かんない.....」
「まさかとは思うが、別れ話だとか思ってないよな?」
「違うの.....?」
レオの顔が一気に青ざめていく。
「思ってたのか......」
「だって、恋人で話なんて。私の家、レオも見たでしょう?社長の息子さんと付き合えるような家じゃないのよ。」
言いながら、悲しくなる。もし生まれが違えば私はこの人の隣にいられたんだろうか。
「待て、落ち着けセラ。第一に別れ話じゃない。断じてない。そんなことになれば俺が死んでる。第二に家だ。言っただろ。うちは代々恋愛結婚主義だ。家の事情は捻じ伏せて結婚する。これが流儀だ。だからお前はそんなこと気にしなくていい。」
必死。に、見える。レオはあんなのを見てもまだ私といたいと思ってくれるの?
「じゃあ何.....?」
「父さんと話してな、お前とライはすぐにでもあの家から出るべきだと言う話になった。うちで家借りるからそこにライとお前が住めば良い。ライはうちの会社で働くことになった。来年になれば社員寮に入れて、お前は俺と暮らせばいい。」
何を、言っているんだ。
言われた話は確かに実現不可能ではない。だが付き合って間もない恋人のためにここまでするのか普通。
「いや、え....?それ、私とレオが別れたらどうなるの....?」
「お前、別れるつもりなのか?」
「いや、だって高校生でそんなの分からないじゃない。私は別れるなんて考えたくないけど.....」
「俺は残念ながらお前を離すつもりはない。お前に惚れた瞬間からだ。お前がこの提案に少しでも安心を感じるなら俺は即実行する。」
「でもどうやるの?お母さん怒り出しちゃうよ。」
「母親が出かける日に学校を休んで引っ越す。怒り狂った母親が学校に来たら即俺に連絡しろ。うちの弁護士が養育費の件諸々まとめて話せるよう手配してある。」
「そこまで......」
「やるからには完璧にやる。お前の身は必ず守るから安心しろ。」
「本当にそこまでしてもらってもいいの....?」
「.....お前には少し負担の重い言葉かもしれないが、うちの家族はお前を未来の嫁だと思ってる。つまり会社に取ってもお前の身の安全と生活の保障は大事な要素なわけだ。」
未来の嫁。サラリと言うけれどそれが何を意味しているのか分かっているのだろうか。
たまに、レオが理解できない。私を好きだと言ってくれるのは嘘ではないんだと思う。だけどそこまで執着する理由はなんなんだろう。私なんて、いなくなったって替の効く人間でしかないのに。
それでも、ここで進むことを選べなければ、私はきっと立ち止まったままだ。
「あり......がとう.....。ほんとにごめんね。こんなに迷惑かけて。絶対恩返しするからね。」
「ライも言ってたから言ったんだがお前が俺といてくれること自体が恩返しみたいなもんだからそう気合い入れんなよ。お前も異論がないなら来週にでも計画を進める。ちょっと会社連れていくのは先延ばしだな。落ち着いてからの方がいいだろ。」
「うん。レオ、本当にありがとう。」
「俺はただお前に笑ってて欲しい。それだけだ。」
短いキスはその望みを叶えてくれた。




