背伸びして、君を守るよ
背伸びして、君を守るよ
『後で電話する。起きてろよ。』
帰り際、言われた言葉。
その言葉の通り、着信音が鳴った。
「もしもし。」
「もしもし、ライか。今、話せるか?」
「はい。」
「あの後どうなった?」
「母親がセラ姉を責めてセラ姉が謝って....いつもと同じです。」
「いつからそんなんなんだ。」
「離婚当時は母は仕事の愚痴、父親の愚痴を全てセラ姉に話すぐらい....と言っても大概なんですが、働き始めてからは酷くなりました。私が役に立たないから働いてるんだろうと常に怒って嫌味を投げかけています。」
「そのことで少し話したい。今度放課後会えないか。」
「俺は仕事で....」
「1日分ぐらいなら出させてくれ。お前なら分かるはずだ。」
セラ姉は恐らくこう言われても絶対受け取らない。だがライはセラほどの感情も、信念も持っていなかった。
「俺はその辺り姉よりもの分かりいいですよ。」
「俺はお前のその辺りを見込んでるんだ。明後日、迎えに行く。頼むぞ。」
「はい。正直セラ姉は限界だと思います。.....あれ?」
「どうした?」
「いや、気のせいかもしれないんですけど」
「母さん、セラ姉は?」
「いないわよ。あんたのとこで私の悪口でも言ってたんじゃないの?」
「は?違ぇし......セラ姉がいない。」
「は?」
「いや、分かりません。ちょっと後でもう一回かけます。」
「ちょ、おい――――」
電話を切って、まず家中を探す。
「セラ姉は!?」
「知らなあい。あたし彼氏に電話中なの。邪魔。」
話にならないメアベル。
「セラ姉は?」
「は?知らないわよ。何回も聞かないでちょうだい。この部屋に入れるわけないでしょ。」
クズ以下の母親。
「嘘っ....セラ姉」
玄関を見た。セラの靴はない。
慌てて靴を履いて外に出る。この時間に行くとこなんてそんなにない。
コンビニか、公園か。
恐らくコンビニだ。以前も何度かあった。
靴を履いて、コンビニに向かう。歩いて10分ぐらいのコンビニは走れば5分だ。
コンビニ前。男たちが女を囲んでいるのが見えた。
「すいません。」
「ライ!」
「あ?なんだよ坊主」
「その人、俺の姉なんで離してもらえますか。」
「おいおい、そんなの無理でしょ。君も来る?」
「いえ。今から警察に電話します。俺がその前に相手をしてもいいですが、どうしますか?」
「ハッタリだろ。お前が俺ら3人を相手にできるとは思えねえ。」
「残念、それくらいできますよ。」
1人の男の鳩尾を突いた。あっけなく倒れた男に残りの2人が青くなる。
「警察か、俺の相手か、どっちがいいですか?」
「い、いや......今日のところは見逃してやるよ!」
「はぁ......セラ姉、行くんなら俺に言ってから行って....」
「大丈夫よ。もう、ライは手が早いんだから。あれくらいなら私でも倒せたわ。」
ライは身体が弱かった。体力作りのためにと武術を習い始め、それに姉も倣った結果2人とも結構な武術の心得がある。
「そういう問題じゃないんだよ。肝が冷えた。レオさんと電話中だったからレオさん今頃死にそうになってるんじゃない。早く電話してあげなよ。」
「ええ、そうなの.....もしもし?」
「うん、今コンビニにいて....ライも来てくれたし大丈夫だから。ごめんね、心配かけて....」
「家にはそのうち戻るつもりよ。大丈夫。ありがとう」
電話を切ったセラは少し落ち着いたようだ。
「家来たらって言われたんじゃない」
「言われたけどこんなことでお世話になるわけにはいかないわ。」
「.....俺としてはお世話になって欲しいけど。セラ姉、何か甘いもの買って帰る?」
「そうね。アイスクリームでも買おうかな。」
「今日は俺もリビングで寝るよ。いいだろ?」
「たまにはそうしましょうか。」
俺が兄だったら。弟じゃなければセラ姉を守れたんだろうか。セラ姉にとったら俺は手のかかる身体の弱い弟だ。背は越したって、その事実は変わらない。それでも。
懸命に背伸びをして、俺はセラ姉を守るよ。




