恋人になった男は、甘い。
恋人になった男は、甘い。
恋人になった男は甘かった。これでは女が落ちるのも無理はないと思う程に。
「セラ、こっち。」
屋上に行く度甘い声で呼ばれて抱き締められてキスをされる。こんなの本当に――――
「ずるい.....」
「何が?」
「レオくんが....」
「俺はセラの方がずるいと思うけどな。」
「何でよ。」
「俺の名前を呼ぶだけで俺を乱せるんだ。なあ、ところでそのレオ”くん”てのやめないか?」
「え?」
「レオでいいだろ。恋人なんだし。」
改めて言われるとなんだか気恥ずかしい。人生で恋人が出来たのは実は2回目だ。1度目は恋人と呼んでもよかったのか分からないレベルで終わったのだけど。
「えっと....レオ....?」
「....やばいな。」
欲に満ちた目で、欲に満ちたキスをされる。
何で、嫌じゃないんだろう。
「もう、レオくんが言わせたのに...」
「また戻った。ダメだろ?」
「レオのバカ....」
「そんな顔で言われても煽ってることにしかならない。チッ....もう時間だな。」
やっと解放される。この時間が甘くて幸せなのにどこか怖くもあった。
「また明日な。」
約束通り、レオは屋上以外では変わらずいてくれた。お陰でまだ誰にもバレずに済んでいる。
教室に戻るとアメリスが話しかけてきた。
「ねえ、セラなんか最近綺麗になった?」
「そんなことないと思うけど」
「少し前からよ。貴女、恋でもしてるんじゃない?」
動揺を悟られてはいけない。赤くなりそうな頬を押さえつける。
「してないよ。アメリスは?いい感じだった人どうなったの?」
「悪くはないのよ。でも押しが弱いわ!」
「うーん、優しそうなのにね」
「優しいのよ。それはいいんだけどね。でもセラ、気をつけなさいよ。」
「何で?」
「貴女の雰囲気が柔らかくなったって噂なのよ。最近男がよく話しかけてこない?」
「ああ、なんか来るけど皆用事ばっかだよ?」
「わざと用事を作ってるに決まってるでしょうが!」
「ええ、そんなめんどくさいことするかな....」
「貴女はこれだから....ほんとにいないの?彼氏。」
「いや、えっと....」
「いるんでしょ。隠したって無駄よ。」
アメリスの好きな男はこの押しの強さに押せないのではなかろうか。
「.....誰にも言わない?」
「エリシアには言うわ。」
これがアメリスを信頼できる理由だと思う。素直だが、嘘はつかない。
「.....確かに彼氏はいるけど。」
「誰?レオくん?」
「....分かるの?」
「女の勘を舐めちゃダメよ。なら尚更気をつけなきゃ。レオくんの周りの女怖いわよ。」
「そうなのよねえ...」
「しっかしあのレオくんを落とすとは....流石だわ。」
「別に落としたわけじゃ....」
「勝手に落ちてきたんでしょ。あの話しかけて来た日からレオくん、意識してたものね。」
「そう?」
「気づかなかったのあんただけじゃない?まあいいわ、行きましょ。授業遅れるわ。」
「うん。」




