レオが入れない世界
レオが入れない世界
教室の前に、知らない男が立っていた。
前でキョロキョロと誰かを探しているらしい。
目で追っていたセラが立ち上がりその男の元へ向かった。
「あら、アレス。どうしたの?」
「セラ!この前借りてたやつ」
「ああ、ありがとう。」
「今回のバトルシーンやばいよ。特にあの見開きがさ....」
「酷い殺気だよ、レオ。なに、あれ見てるの?」
クシェルが呆れたように言う。長い付き合いのクシェルはレオの最近の様子の変化に確実に気づいている。
「....あれ、誰だ。」
「3組のアレスだね。割と顔もいいし女子にそれなりに人気あるよ?セラと仲良かったんだ。」
「あいつ....埋めるか?」
「彼氏でもない君がそんなことしたらセラに嫌われるのは君の方だろうけどね。」
レオは無言になった。分かっている。漫画のことがよく分からないレオはあの世界に入れない。
アレスは漫画のことで一通り盛り上がると去っていった。
「おい」
「え?」
「...仲良いのか?」
「誰?アレス?」
「他にいないだろ。」
「まあそれなりに。好みの漫画が似てるのよ。」
「どんなんだ。」
「呪領開戦とか....知ってるの?」
「知らん。俺も読む。貸せ。」
「ほんと?別にいいけど...」
セラの顔は困惑に満ちている。歴史書と哲学書が好きな男がいきなり漫画といえば当然かもしれない。
「読んだら話し相手になってくれるんだろう?」
「まあ気に入ったなら....アレスも好きみたいだし話してみたら?」
「あいつとだけは死んでも話さん。」
「あっそう....じゃあこれ、返せる時でいいから。」
「ああ、ありがとう」




