叶わぬ願いを、見透かす瞳
叶わぬ願いを、見透かす瞳
屋上に行くとレオが既に来て空を眺めていた。いつもそうしているのは自分なのにレオがそうしていると不思議な気がする。
(綺麗な横顔....)
軽いと思っていた男は意外にも繊細で、不器用な顔をする。その癖たまに異様な静けさと深さを纏う瞬間もあった。
「レオくん」
「セラ、来たか。」
「空、眺めてたの?」
「ああ、確かに楽しくはないが落ち着くな。」
「昨日、ありがとね。楽しかった。」
「社員たちも喜んでた。また気が向いたら来てくれ。」
「そうなの?もしまた機会があったらね。」
「お前は、将来は何になりたいんだ?」
「急だな....ピアノか医療系かで迷ってるけど音大は生活が安定しないからなあ。医療系でピアノは趣味が現実的かな。」
「制約がなければやりたいのは音楽か?」
「まあそうかな。でも今更だよ。実技も理論も間に合わない。ていうかやる気もないしね。」
本当はやりたい。でもそう思ったらしんどくなる。
「あれだけ弾けてもダメなのか?」
「練習時間が足りないからね。仕方ない。レオくんは会社を継ぐんでしょ?」
「そのつもりだな。」
「嫌だとか、思ったことないの?」
「決められていたことには反発したが仕事自体が性に合ってな。それに気づいてからは特に不満はないな。」
「それはラッキーだったね。」
「そうなんだろうな。お前のピアノ、綺麗なのにな。勿体無い。」
...あんまり、言われたくない言葉だ。嬉しくとも、その願いが叶うことはない。
「...ありがとね。でもまあ納得してるから。」
「そうか。」
目を射抜くように見るレオはセラの嘘に気づいているんだろうか。
吹き抜ける風は本音を透かしていくようだ。
「....髪、綺麗だな。」
「そう?何の手入れもしてないけど。」
「髪型変えないのか?編み込んだりしたら似合いそうだぞ。」
「そういうの苦手なのよ。手先が不器用で。」
「なんだ、ピアノ弾くのに?」
「皆そう言うけどあれ器用さとは関係ないと思う。」
「なら俺が編んでやろうか?妹のもよくやってた。」
「出来るの?」
「動画一回見たら覚えた。」
どんな手先をしてるんだ。器用とは程遠いセラには理解出来ない感覚だった。
「わけわかんない。私なんて妹の髪編もうとして無惨な結果に終わったよ。」
「なら俺がやってやる。」
「ダメ。教室戻ったらアメリス辺りに騒がれるから。」
断ると肩を落としている。髪を編むのはそんなに楽しいんだろうか。
「妹さんの髪編めばいいじゃない。」
「そこじゃない。」
しょんぼりと垂れた耳が見える気がする。なんだか可愛くて笑ってしまった。
「....なに笑ってる。」
「だってこんなことで落ち込んでるから。変なの。」
恨みがましい視線は驚くほど怖くない。
誰かといる時間を穏やかに感じるなんて。
(人生分かんないもんだな。)
機嫌の良いセラに不思議そうな顔をしているレオを、空が眺めていた。




