退屈が、なくなる予感
退屈が、なくなる予感
セラ・ベルシュタイン。
スモーキーグリーンの瞳とダークブロンドの髪に美しい顔立ち。柔らかい雰囲気で噂では裏の高嶺の花。話しかければ穏やかにも関わらず、結界でも張られたように人を寄せ付けない存在感。遠目に見たことしかない彼女は確かに雰囲気があり、近寄り易いとは言い難かった。3年で同じクラスになったら自然と目がいくようになった。授業中でも本を読み続けているのに、友達とは意外にもテンション高く笑顔で話している。話しかけたらどんな顔をするのだろう。ただ、気になっただけだ。
「何読んでんの?」
「んー?恋愛小説。」
(なんだこの女。顔見もせず喋んのかよ...)
「面白いわけ?」
やっとセラが顔を上げ、パタンと本を閉じた。
「いや、友達に薦められたけどこれは無理だわ。甘すぎ。ていうかこれ知らない?映画かなんかになってたはずだけど。」
「え?ああ、確かになってたな。あのドロッドロのやつか。」
「そうそう。開始20ページであのドロドロ。無理だって。」
「なら何が好きなわけ?」
「ミステリーとか、文豪系とかも気が向いたら読むかなあ。あとはテキトーに気になったの。レオくん....だよね?本読むの?」
不意に呼ばれる名前は妙に耳障りがいい。
(俺の名前すら認識が怪しいレベルなのかよ)
「読むけど。あんま小説とかは読まないな。歴史系とか哲学書みたいなんばっか。」
「ああいうのも面白いけどね。入り込みすぎなかったら。」
「あれはこいつこんなこと言ってんなぐらいでいいんだよ。」
「じゃあなんで読むの?」
「人間が訳わかんねえこと考えてるの読むと退屈しないだろ。」
「まあね。1人の視点じゃ限界があるしね。」
レオの話を否定も肯定もしない、あまりにも普通になされる会話。
「ところでお前、授業中本読んでるだろ。」
「ゲッ....何で知ってるの?」
「この前気づいた。見かけによらないな。」
「真面目だって思ってるのは周りだけなの。もう、2年間バレたことなかったのに....ねえ、お願いだから」
セラが唇を尖らせて、小さく肩をすくめた。
拗ねて頼む顔に、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「言わないでいて欲しいか?」
「それはそりゃ....」
「ならたまには俺の相手でもしろ。退屈してるんだ。」
「相手って...何すりゃいいのよ」
「たまにここに来るから話し相手になれ。無視するなよ?」
「....本がいいとこだったらキレるかも。」
「....流石にその時は諦めてやるよ。」
振り向いて欲しい。どうしたって悟られたくない気持ちをプライドで覆い隠した。
制服妄想から始まった現パロが長くなりました。こちらもお付き合いいただけると嬉しいです。




