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大好きな人

大好きな人 〜 幸せな誕生日を、君に 〜(彼氏side)

作者:
掲載日:2025/09/12

この作品は「大好きな人 〜 彼がくれた幸せの物語 〜」の彼氏sideになります。

凛目線では、誕生日をスマートに演出する大人びた彼氏として映る大輔ですが、今回は本人の視点。

実は等身大の大学生らしく、余裕がなくなったり、感情に振り回されたりもしながら、

必死に彼女を喜ばせようとしています。

二つの視点をあわせて読むことで、凛の見た「大輔」と、

大輔自身の「素顔」の違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。

俺は、凛を幸せにしたい。そのために、少し無理をしてでも働くと決めた。

そう思えば思うほど、彼女の笑顔が遠ざかっていく気がして、胸がざわつく。


「お疲れー。大輔今日もシフト入ってたのか。働くねぇ〜」

「お疲れ様です。彼女が誕生日なんで稼ぎたくて。」


俺は休憩時間にスマホで予定を確認していた。凛に会いてぇなぁーー


ブーブー、ブーブー。

スマホのバイブが鳴った。

着信画面を確認すると、凛だ。


彼女の姿を思い浮かべて胸が温かくなった。


最近は会う時間があまりなく、不安にさせているかもしれない。

それを思うと少し胸が痛んだ。疲れて重くなった体に、罪悪感すら覚えた。

声聞きたいしな。


「もしもし、凛?」

「もしもし、大ちゃん?今日もバイト?」


凛の心配そうな声が聞こえてくる。

きっと俺のバイトが増えたことで、心配してくれているんだろう。

凛は、俺より3つ年下だ。それなのに、性格は俺よりずっと大人だ。

その性格のせいか、空気を読むのもうまい。


俺が時間があって、凛に会いたいと思っている時には、遠慮せず連絡してくる。

「会いたい」「寂しい」と素直に甘えてきてくれる。

そうかと思えば、大学の課題の提出などで忙しい時には連絡もあまりして来ない。

きっと今も、俺のバイトが増えていることに気づいて、何か理由があると考えて何も言わない。

連絡も今の電話は1週間ぶりだ。


俺が凛と知り合ったのは友達の紹介。初めてデートの帰り、彼女が言った。


「今日一日一緒に過ごして、大輔くんに好きになってもらいたいって思っちゃった。」


恥ずかしそうに言う彼女を見て「俺もそう思うよ」。


その日から、時間がある時は…というより優先的に彼女との時間を過ごした。


一緒にいるうちに彼女に対してある感情が湧いた。

凛には、いつも迷いがない。


外食に行けば、メニューを開いたと思った瞬間に「私決めたよ」と言う。


ショッピングモールを歩いていても、靴屋の前で立ち止まり、真っ直ぐに商品に向かって行って

「ちょっと履いてみる」。そのまま「これ買ってくる」と言って、あっという間にレジに向かう。

服を買う時も、同じ調子だ。


そんな彼女と過ごすうちに、印象は「可愛い」から「かっこいい」へ変わっていった。

同時に、不安も感じるようになった。


ーーいつか凛は、何の迷いもなく俺の前からいなくなってしまうんじゃないか。

俺は、バイトのシフトを増やす理由として、凛の誕生日を祝うという他にもう一つ目標を決めていた。

凛と一緒に暮らす。


凛にとって、もっと近い存在になりたい…


凛に一緒に暮らしたいという意向を伝えると、想像以上に喜んでくれた。

それどころか、バイトの後顔を見に行くと弁当を持ってきてくれたり、

バイトの休みの日には、疲れてしまうからと、

寂しそうな顔をしながらも、「今日は早く帰ろう」と気遣ってくれた。


彼女とは一緒に暮らしたい、でもまずは誕生日に彼女を精一杯喜ばせたい。サプライズ。


まずは、店を見つけるところからだな。

俺は「デートスポット」「夜景」などを検索ワードに店を探した。


“彼女と過ごす、夜景の綺麗なレストランで…誕生日の素敵なサプライズ…”


この店にしよう。

凛が行きたがっていた遊園地からもそんなに遠くない。

まずは遊園地に行って、昼は凛が好きな軽食系で済まして、夜はこの店で食事しよう。


俺はすぐに店に電話して、6月14日の予約と当日についての打ち合わせの日取りも決めた。


ーー打ち合わせ当日。


「こんにちは、電話した後藤です。」

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」


俺より、少し年上だろうか。

落ち着いた雰囲気で背が高くイケメン…

この人当日もいるのかな…くだらない嫉妬心を押し殺しながら、案内された席に着いた。


「当日についてですが、こちらでサプライズのケーキをご用意させていただきます。」

「はい、よろしくお願いします。」

「お誕生日の方は、恋人ですか?」

「はい、付き合ってもうすぐ1年です。」


まだ少し残っている嫉妬心から、少しのマウントをとってみる。


「そうですか、彼女さんのお名前をお伺いできますか?」

「えっと…」


俺の嫉妬心を煽っているのかと、言い淀んでいると、

「お名前をお伺いするのは、ケーキにお名前を添えるサービスと、

バースデーソングの時にお名前が入れられるからです」


にっこりとその男が俺に笑いかけてくる。恥ずい…そういうことね。


「はい…凛という名前です。りん です。」

「かしこまりました。大事な彼女さんなんですね。」


俺の嫉妬心が見透かされたようで、めちゃくちゃ恥ずかしい。


「はい、感動させられるくらい喜ばせたいので、よろしくお願いします。」

「お任せください。当日のお越しをお待ちしております。」


俺は打ち合わせを終えて、そのままアクセサリーショップに向かった。


「いらっしゃいませー」

俺は店内を見回して、まずは指輪のコーナーに足を向けた。


指輪…渡したいけど、ちょっと重いかなぁ。というか、そもそも凛は飲食店で働いている。

指輪だと付けづらいよなぁ…


「プレゼントですか」

「はい、彼女の誕生日プレゼントなんですけど。」


綺麗な女性の店員が話しかけてきた。


「ただ、ずっと…」いや、ずっと付けて欲しいからとか恥ずかしすぎるでしょ。

「いや、ネックレスにしようと思います。」

「かしこまりました。ネックレスはこちらになります。」

「ありがとうございます。」


ネックレスのコーナーを見ていると、ハートのペンダントトップが目についた。

ハートのペンダントトップの中央には、ピンク色の石が付いている。

これにしよう。


凛が好きそうなデザインだ。少し予算オーバーだけど…まぁ、そのためにバイト増やしたし。

プレゼントを購入して、俺はその足でまたバイトへと向かった。


ーー誕生日前日。


凛との電話を終えた後、俺は…昂っていた。

凛は明日の誕生日、普段ならバイトのシフトが入っている土曜日だ。

俺から誘われると信じてシフトを開けていたのだろうか…。かわいい…


凛は、店でのサプライズにどんな反応をするだろうか。

遊園地、あまり混んでいたら別のデート場所も考えている。

でも、行きたがってたからなぁ。


そんなことを考えながらスマホで、夜景デートスポットのページを開く。ん…?


へぇ、なんかちょっと恥ずかしいけど、明日は特別だしな。

紳士になってみましょうかね。


ーー誕生日当日。


「凛、誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」


今日は久々に一日中凛と一緒だ。

俺たちは遊園地に向かった。


まだ午前中だからか、人もそこまで多くない。

凛も、嬉しそうにキョロキョロしながら、目を輝かせている。

これなら、午前中のうちに凛の好きな乗り物に乗って楽しもう。


午後はだいぶ人が増えて、乗り物の待ち時間も長くなってきた。

それでも凛と一緒の待ち時間は憂鬱どころか、ゆっくり話せることに嬉しさすら感じていた。

凛も楽しそうに笑っている。寂しい思いさせてたからなぁ…


夕方になって、俺たちは予約した店へと車を走らせていた。


「あそこの店だよ」

「へぇーなんか、おしゃれだね」


俺は、これから始まるサプライズへの期待と、凛の反応を見る楽しみで胸が高鳴っていた。

それを悟られないよう、店の中へと入っていく。


「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」

「はい、予約した後藤です。」

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」


まずは、いつもなら凛は迷わず窓際の席に座る。今日も多分…あ、やっぱり。

俺は咄嗟に凛の腕を掴みながら、「凛」と声をかけた。


間に合ったとばかりに、ほっとして、静かに凛を通路側の席に誘導した。

凛は不思議そうに俺を見ながら席についた。あ…理由を告げられないまま俺も席に着く。


「彼氏さん、さすがですね。」

「え…」

「こちら側からだと、綺麗な夜景がよく見えますから。」

「あ…はい」


この男は…さすがはあなたの方ですよ。

俺のこの行動には理由があったのだ。


昨日寝る前に夜景デートスポットのページを見ていた時、そのページに書かれていた。


「夜景が見えるお店に行ったら、彼女を夜景が見える通路側にスマートにエスコートしよう!」


あのページ見直しておいてよかったな。


席に着いた俺は、自分の意図が凛に伝わったことにほっとしつつ、凛の横顔を見つめた。

すると、彼女の瞳は夜景が反射するように輝いていた。


「わぁ…綺麗だね…」


そう囁いて、すぐに凛の真っ直ぐな瞳が俺へと向けられた。

その瞬間、「気に入った? 凛と一緒に来てみたかったんだ。この店」

ここに一緒に来られてよかったと心からそう思った。


食事は、凛の好きなものを食べさせてやりたかったので、コースの予約はしなかった。

その意図を汲んだのか、嬉しそうにメニューを見ながらいつも通りスムーズに注文を終えた。


食事をした後は、今日のメインイベントであるバースデーケーキサプライズだ。


俺は食事を終え落ち着いて夜景を眺めている凛に「トイレに行ってくる」と席を立ち、

サプライズのゴーサインを出しに向かった。


「すいません、自分が席に戻ったら飲み物注文します。その時で大丈夫ですか?」

「はい、打ち合わせで伺っておりましたので、準備は整っております。」

「じゃあ、よろしくお願いします。」


俺は席に戻り、紅茶とコーヒーを注文した。少しすると、バースデーソングが聞こえてくる。

始まった。俺は、凛を見つめる。


驚いた表情をしたかと思ったら、ジュワジュワと凛の目に涙が溜まっていく。

両手で口元を隠しながら、運ばれてくるケーキを見つめている。


俺も凛を見つめながら、バースデーソングを一緒に口ずさむ。

店内に拍手と、口々におめでとうという声が響いた。


その時、凛の目に溜まっていた涙がポロポロと溢れた。


その表情を見た時、俺まで泣きそうになった。

こんなふうに感動して涙を流す凛を愛おしいと、心から思った。


「大ちゃん、私.…すっっっごい幸せっ」俺もだよ。凛。


その夜、公園のベンチに並んで座った時、俺は心に決めた。

掛け持ちのバイトはやめよう。焦らなくていい。

学生のうちは、一緒にいられる時間を大事にすればいい。


ただ一つ、凛に伝え続けよう。


「大好きだよ、凛」


俺の大好きな人。この気持ちが、届きますように。

読んでくださり、本当にありがとうございました。

大輔目線を書くと、スマートに見える行動の裏にある、大学生らしい迷いや必死さが微笑ましかったです。

凛目線と合わせて読んでいただけた方には、二人の関係の奥行きや可愛らしさを感じてもらえたら、

とても嬉しいです。


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