竜騎士の嘆き
梅雨ですね。
雨が降っていた。
竜の体に叩きつけるように雨が降る。
埋葬するために土の上に寝かされ、跳ね返った泥で美しい鱗が汚されていく。
雨が止んだら、火の魔法使いによって焼かれる体。
美しい鱗は鋭い刃物となり、私には素手で触れることさえできない。
いつも厚い革の手袋をはめて、慎重にゆっくりとなでるだけで精一杯。
そんな、ささやかな触れあいに、目を細めて喉を鳴らしたお前が、無残に泥にまみれていく。
あれほど高く飛んだ空が、懐かしくはないのか。
光の反射が目を焼くようだった、あの海を忘れてしまったのか。
アンデッドにならぬよう、業火で焼くという。
いっそ、アンデッドになって、深い森に潜んで共に生きよう。
お前さえいれば私は幸せだった。
降るような矢をかいくぐり、敵の砦に舞い降りた瞬間、歓喜が体を貫いた。
味方の陣に戻ったときの、地を割るような歓声に、お前の体が一瞬驚いたことを私は覚えているぞ。
あれを、お前は覚えていないのか。
全ては、お前が共にいたから。
これほどまでの喪失感を何で埋めろというのか。
沸騰するような血が喉を焼き、頭にこもる。
圧迫された喉からは、嘆きも叫びも出すことができない。
苦しい。
苦しいんだ。
息ができない。
独りにしないでくれ。
こんなことなら、共に敵の刃に倒れたかった。
お前が最期に上げた、か細い鳴き声が耳から離れない。
誰か助けてくれ。
私を支えてくれた最愛が、手の届かないところへ行ってしまう。
ああ、雨よ。
止まないでくれ。
どうか、このまま。
マクド○ルドにジュラ○ックバーガーを買い行ったら、お店が閉まっていた。
バーガーが食べたかった、紡里の嘆き。