紅い花の隠れ家
*
火事の後、リオンを背負ったチカゲが医療所の扉を叩いたのは真夜中だった。
「どうしたんですか――!?」
扉を開いた医者の前でチカゲは倒れた。
目を覚ませばベッドの上にいた。副流煙を吸い込んだとか、疲労だとか、諸々説明されたがそれよりも気になることがあった。
「リオンは! リオンはどこです!?」
看護師に掴みかからんばかりに言えば、彼女はちょっと驚いたものの、落ち着いた声で言った。
「ああ、あの子なら別の部屋で応急処置受けてますよ。山火事があったみたいね、巻き込まれたのでしょう」
火をつけたのはビワだ。だが事の発端はチカゲだ。
彼女には止血をしたが、その後も血が滲んでいたような気がする。
「あの、容態は、」
「出血が酷いです。でも事前に止血してありましたから――おそらくは大丈夫かと。傷口が大きいようですから、今うちの医師が処置してるところです。命に別状はありませんよ。おそらくは」
「…………そうですか」
項垂れたチカゲを見て、看護師が椅子を勧めた。
「ベッド使っても構いませんよ。あなたも火事の被害者のようですし」
違う――違う――違う――被害者は!!
火事のせいでリオンは走った。土砂降りの後のぬかるんだ崖の端を、火に追いつかれないよう走らねばならなかった。
そして崖崩れで――落ちたのだ。
言葉を失くしたチカゲを困ったように看護師は眺めたが、椅子を置くといってしまった。
しばらくしてリオンが運ばれてきた。
四肢に包帯が巻かれていた。血が滲んでいる。
医師が告げた。
「傷口に少し泥や石が混じっていたので取り除いたのと、消毒して薬を塗りました。一部傷が大きかったので縫いましたが、跡にはならないでしょう」
「ありがとう、ございます。……いつ、目覚めますか」
「さあ。あなたもお疲れでしょう。ここまでおぶってきたのだから。どうぞ休んでください」
チカゲは項垂れて椅子に座った。時折寝て、ハッとして目覚めると、青白い血の気を失った少女が横たわっているのだった。
「リオン、さん、リオン――」
頬に触れたが体温は低かった。
殺す予定だったのに、今更心配しているらしい自分に、矛盾しているなと思った。けれどツクヨミがいなくなってから、こんな風に矛盾した思考を持つこともあったから、きっとその一端だと思った。狂人だとか異常者だとか揶揄されたことはあれど、自分が狂ってるのかさえよく分からない。
リオンは青白い頬のまま眠っていた。このまま死んでしまうんじゃないかと、殺そうとした自分がなぜかゾッとした。
おかしなことだ。入れ込みすぎだ。この子が求めた心臓の持ち主じゃないのなら、一応医療所にも運んだし、もうこれで用済みだ。去るべきだ。けれども目覚めるかだけ知りたかった。それほどに少女の沈黙は重苦しく、恐ろしかった。
そんな折、看護師から小さな手紙を渡された。なんでもチカゲへの言伝らしい。見知らぬ男に渡されたのだと言って寄越すと、看護師はさっさと行ってしまった。
紙を開いてチカゲは息を呑んだ。
『焼けた隠れ家の奥で、待ってるよ。賢者の石の材料を教えてあげる』
差出人が誰かなんて聞かなくても分かった。ビワだ。
チカゲはぐしゃりと手紙を握りつぶした。探し続けた材料のうち、二つを持っているとビワは言った。今までの研究資料があれば、数年かけてでも一人で見つけ出せたかもしれない。だがその手がかりも燃やされてしまった。
おまけに最後の一つの材料を、――誰の心臓を使うべきかを、彼は知っていると言う。
もう選択肢はなかった。
その時だった。リオンが苦しげにうなされ始めた。
「っ」
どうすればいいのか分からない。とりあえず名前を呼んだけれど、彼女はうなされたままだ。
「リオンさん、起きてください。ただの夢です。起きて――っ」
なぜこんなにも必死になっているのか分からない。
やがて朝日が差し込む中、とうとう少女は目を覚ました。
チカゲはなぜか、酷くほっとした。
青い瞳で見つめられ、胸が締め付けられた。
「いか、ないで」
こぼれ落ちそうな青い目に、涙がたまっていた。溶けてしまいそうだとチカゲは思った。
けれどももう決心してしまったのだ。悲しげに微笑めば、彼女はまどろみへと落ちていく。
その頭を撫でた。馬鹿な娘だと思った。もう金輪際会うことはないだろう。
朝日の中、少女はもううなされてはいなかった。チカゲは静かに立ち上がり、手紙を握りしめたまま、病室を後にしたのだ。
*
洞窟に辿り着く前に、チカゲは焼けた森を通った。既に新しい芽が出始めている。村に被害が及ばなくて良かった、と思いつつ、いや関係ないことだとどうにか思いながら歩き続けた。
崖の上を歩き、隠れ家――の近くの茂みは焼け、もう隠すという役割を果たしていなかったが――そこへ辿り着くと、洞窟の中へ入った。
相変わらず暗い洞窟は、無惨な焼けた資料が散らばっていた。実験器具のガラスが溶けたものもあった。
チカゲが静かに暗闇を歩いて行くと、不意に洞窟の奥から光が差し込んできた。
「!?」
そんなはずはなかった。
この洞窟は行き止まりなのだ。訳もわからず歩いていけば、一気にあたりは開けた。
振り向けば洞窟はなくなっていた。しまった、と思うがもう遅い。帰り道が分からない。
妖術の類かと思ったが、もう後の祭りだ。
あたり一面が血のように真っ赤だった。そこはヒガンバナの花畑で、陽光に照らされながら、緩やかに不気味に、どこまでも延々と続くヒガンバナが揺れているのだった。
ざくざくとチカゲはヒガンバナの花畑を歩いて行く。不気味なこの花を皆が嫌ったが、自分は妙な親近感を覚えていた。着物もこの柄を選ぶほどには。幼い頃住んでいた村では、赤い目の子どもは異端児だった。
不気味だと揶揄されたこの花に、なんとなく親近感を覚えても仕方のないことだった。
だがこれだけ一面に生えているのはやはり普通ではない。普通は墓場などに咲くのだ。
ざくざくと、他の足音がした。ハッとすれば、ビワがこちらへ歩いてくるのだった。
「やあ、来たね。待っていたよ」
「この、このヒガンバナはなんです。ここは一体……!?」
「君と僕が安心して研究を進められるための場所。結界を作ったんだ。不気味で君らしいと思わない? 僕は気に入ってるんだ」
嫌がらせなのかなんなのかわからない。チカゲは眉を顰めたが、ビワはにこにこしながら告げた。
「おいで。君はここへ来ることを選んだんだ、ほら、あっちが新しい隠れ家さ」
見れば、花畑の中央に、木造の趣がある小屋が建っていた。彼の言う通り、もうここまで来てしまったのだ。
チカゲはとりあえず歩き出した。もう帰り道もわからないのだ。いや、そんなものいらなかった。研究の果てに賢者の石を完成させ、ツクヨミ様に会えるのなら――他のことなんてどうでも良かった。
「君も大概だね、さてと。中へどうぞ」
入ると当然の如く囲炉裏の部屋があり、さらに奥には畳の執務室のような場所があった。それぞれ襖で仕切られている。実際にはもっといろいろな部屋がありそうだった。
「必要なものは全部そろってる。ほら言ったろ?」
ビワは言いながら、ごとんと二つの石を机に置いた。チカゲは眉を顰めた。
「ワタシの持っていた材料を破壊した時、アナタ言いましたよね。材料の二つはあるって。太陽と月の雫――金と銀から抽出した、硫黄と水銀のはずです。これは確かに該当の代物ですが、原石じゃないですか」
「何か問題が? 君なら抽出だって出来るだろ? ツクヨミは偉大な錬金術師だったと聞く。その弟子の君なら」
「いいですか! 都合のいいようにツクヨミ様の名前を使わないでください!」
チカゲは赤い瞳でビワを睨みつけながら声を上げた。
「できますよ! けれどもこうした原石からそれぞれ必要な物質を、それも適量――できるだけ多く取り出すのは細かい調整が必要なんです」
「だからここに錬金術で使うと言われている道具は皆揃えたよ。問題ないだろ?」
「大アリですよ! 細かい調整に必要な数字は隠れ家の資料に書いてあったんです! 他の石での実験結果でしたが、大事な資料だったんですよ。あんな細かいものをすべては覚えていません! また一からやり直しです!」
「ああそうか、それは失礼した。謝るよ。その辺は詳しくなくて――でも君ならできるでしょ? 一度自分でその資料を作り出したんだものね?」
「ええそうですね。ですが時間がかかるでしょう。それにこの原石は未知のものです」
「かかるとして、どれくらい?」
「さあね」
イライラしながらチカゲは言った。
「似たような鉱物で再度実験します。失敗した時のために。現物は一つずつしかないのでしょう?」
「そうだね。思ったよりも面倒なものを燃やしちゃったみたいだ。ごめんよ、君の頭に全部入ってると思ったんだ」
肩をすくめる彼は、あまり反省していないようだった。
「ああもう! まあいいです。原石があるなら――とりあえず他のもので試して――はあ、どれくらいかかるか知れませんよ。アナタが資料を燃やさなければ、もっと早く、」
「分かった分かったよ錬金術師殿。僕は待てるよ。だって君十年くらい石探してたんでしょ? さらに探索に十年ぐらいかかるかもしれなかったのに、その現物がここにあるんだよ? それってとっても重要なことには違いないでしょ?」
まあ彼の言う通りだった。研究にどれくらいかかるか分からないが、一年はしないはずだ。だがチカゲはイライラしていたから、それを明言はしなかった。
「仕方ないだろ。君はああでもしなきゃ協力してくれそうになかったから」
「仕方なくな――」
「最後の材料を教えると言っただろ。知りたくないかい?」
チカゲはハッとした。ビワがにっこりと耳元でささやいた。
「竜の血を引く心臓に目をつけたのは良かったが、もうその竜は死んでいて、信仰もされていない。材料の条件は神の力を持つ心臓――と言ったら、該当は一つだろう」
謳うようにビワは言ってのけた。
「帝の祖先は神と何やらやりとりして、不思議な力を得たと言うじゃないか。予知の力を」
その話はチカゲも知っているが、まさかとは思った。
東雲大陸には伝説がある。遠い昔、一人の男がいた。男は酷い災害が起こった際、石の下敷きになっている天女を見つけた。彼は石をどかそうとしたが、それはなかなか叶わなかった。自分も貧しいのに、必死に色々と持ってきて、水や食べ物を渡し、それでいながらただ一人、必死で石をどかそうと、色々な方法を使って頑張ったのだ。
ある日とうとう石をどかすことに成功し、救われた天女は大層感謝した。
彼女は礼を言って、何か一つ欲しいものを与えると男に言った。
男は美しい天女の微笑みを見られたのだから、何もいらないと答えた。
天女は礼を言って天に帰っていたが、翌日夢の中に現れた。
「私があなたのことを話すと、一人の神があなたに感心し、力を与えると言いました。あなたは予知をすることができるようになるでしょう。すべてではありません。些細なことから、今回のような災害まで。これはいわゆる神の力と呼ばれるものです。その力は子々孫々まで、あなたの血を引く最初の子どもに引き継がれていくのです」
その男は予知の力を使って、災害などを予言し、人々を救って行った。やがて彼は人々に讃えられ、帝となったのだ。
これが始まりの神話である。
予知の力は前代の帝には確かにあった。
だが暴君で、悪い噂が絶えなかったという。側室という名の愛人を幾人も持ち、まあそれだけならまだしも、暴力を振るう乱暴な人間だったとか。
だが予知の力があるから、人々は帝をその座から引き摺り下ろすことはできなかったのだ。最初の子どもにしか与えられない神の力。そして彼が亡くなった後、新しく即位したトキワ帝は、まだ幼く、残念ながら予知の力を発揮できなかった。
伝承によると、最初の子どもであったとしても、力を発揮できない者もおり、その多くが病弱であったと聞く。トキワ帝も例に漏れず病弱だった。
チカゲは研究の傍ら、ふと帝の心臓を考えたことはあったものの、現帝は力がないし、そもそも帝の心臓を取るなど不可能だと考え、別の可能性を探していたのだ。
チカゲはビワを見た。
「まさかトキワ帝のことを言っているのですか? 彼には予知の力はありませんよ。うまく引き継がれなかったのかは知りませんが――」
「違うよチカゲ。帝の心臓に勝る材料はないよ。確実に神の力を受け継ぐものだ。君は知らないだろうが、僕はあちこちで情報収集をしていてね。帝のそばには陰陽師がいて、彼がお目付け役なんだって。で、まあ極秘の話だけど、予知ができない代々の帝が皆病弱だったのは、身体が神力の負荷に耐えられないからだそうだ。つまり前代は使いこなせたけど、今回は力に呑まれちゃって使いこなせてないってだけ。潜在的にその力はあるんだ」
「……本気で言ってますか? 帝の心臓を狙うと?」
「君こそ一度は考えたことはないの? 怖がって思考放棄しただけじゃない?」
半分当たりで半分違う。相手の立場を恐れたのは確かだ。だが今代には神力はないと思っていた。
「……ワタシに、帝の心臓を取ってこいと?」
「そんなことは言ってないよ。必要になったら頼むかもだけど。言ったじゃないか、材料はこちらで用意すると。まあだから君の研究も待てる。帝の心臓を無理矢理奪ったら、帝都中の人から追われる人生になる。それより合法的に奪うのさ。それには時間がかかる」
「合法もクソもないでしょう。自分が何を言っているのかお分かりで?」
「ふふ、君には分からないだろう。ま、いいや。リオンを殺そうとした君と僕と何が違う? 僕は賢者の石の奇跡が見たい。この世の理がひっくり返るのをね。そして君はツクヨミ様に会いたい。目的は一致してる。僕は材料集め、君は錬金術で賢者の石を作る。本来なら探索だけで、君一人の寿命で成し遂げられなかったかもしれないんだ。その材料のうち現物が二つここにある。重要なことだ。君はその研究をするんだ。いいね?」
「……」
チカゲは大人しく座り、必要な実験器具を並べ始めた。長くかかるであろう実験すら、この男の言葉を聞けば、些細なことに思えた。
自分達はとんでもないことをしようとしているのではないか。
いや、罪なき少女の心臓を取ろうとした時に、その自覚はなかった。
今更だ。ビワには何やら心臓を手に入れるための計画があるらしい。それを邪魔せず、大人しくここで太陽と月の雫――金と銀から硫黄と水銀の抽出を行うことにした。
机に向かったチカゲは、いつのまにか研究に没頭し始める。
ビワはそれを見て少し笑うと、部屋を出て行った。
それにも気づかず、チカゲは他の鉱石で、試しに実験をしながら、細かい数字やら何やらを紙に書き込んでいった。
しばらくして、ふと、息抜きに外へ出ようかと立ち上がると、障子のそばに見知らぬ女が立っているのに気づいた。大人というには幼い、けれど子どもと称するような雰囲気でもない、妙な娘だった。作業に没頭するあまりいつのまにそこに来たのかも自分は気づかなかったらしい。
長く白い髪に、白い翼を生やした、まあどう見ても人間ではない生き物だった。着物まで白い。
「どこへ行くの?」
美しい娘が、つまらなそうな目をして尋ねた。
「アナタは?」
「私はシラサギ。ビワ様に作られたの」
「作られた?」
「幻術に、より強い妖力を込められてね。生まれた時は鳥の姿だったけど、こうして人にもなれるの」
「翼を隠せてはいませんが」
「細かいことはいいわ、これが私の姿なの。どこへ行くのかと聞いているの」
「息抜きに外に出ようかと」
「駄目よ」
強い口調でシラサギは言った。
「ビワ様の命令であなたを一歩たりとも外へ出すなと言われているの。屋敷の中ならある程度うろつかせてもいいけど、目を離すなと」
「つまりは監視ですか」
「そうよ、いけない?」
まあ、のこのこと手紙に書かれた場所へやって来てしまった手前、こんなことをされても仕方ないとは思った。だが少々硬すぎると思った。
「ただの散歩です」
「どうしてそれが信用できると」
「裏切る理由が、今のところありません」
「あなたは必要な人材だとビワ様が言ってたわ。気が変わって逃げられても困るの」
「お言葉ですが、ワタシは帰り道を知らないのです。ここへ来た洞窟は、振り返った時消えていましたから」
「ああ言えばこういう。あなた不愉快な男ね」
シラサギが鋭い目で言ったが、だからなんだとチカゲは思った。人から嫌われるのには慣れていたので、どうとも思わなかった。
「どうでもいいです。散歩もいけないのですか? 作業には息抜きが必要です」
「コイツの言うとーりだよ」
横から口を挟む者がいた。ビワではない。これも見知らぬ若者で、シラサギに似た黒い羽根を持っていた。黒髪は肩まであった。やはりこれまた黒い着物を着ている。
「ご兄弟か何かですか」
黒い翼を見てチカゲは言った。
「俺はクロサギ。兄妹というか、姉弟というか、まあその通りかもしれない。俺らは一緒に作られたんだ」
シラサギが冷たい雰囲気を放つ一方で、クロサギはどこか、人懐っこい空気を漂わせていた。だが人外であるのだ。警戒するに越したことはない。
「そんな顔するなよおにーさん。チカゲだっけ? シラサギ、俺が見張りをするから。散歩くらいさせてやればいいだろ。コイツ逃げられやしないよ。結界の中にいるんだから」
「勝手にすれば? ビワ様に怒られても知らないから」
そういうわけで、チカゲはクロサギに見張られながら、外へ足を踏み出した。
そこでは夕日が落ちていくところだった。
鮮血のような赤いヒガンバナの地平線に、橙に光る眩しい太陽が沈んでいく。
現実離れした光景だった。
「あんた錬金術師だろ? 自分で来たんだって? よくもまあビワの誘いに乗ったね」
クロサギが小屋の屋根に飛び乗り、座りながら話しかけてくる。翼があると便利だななどと思いながら、チカゲは夕日を眺めつつ返した。
「アナタはビワの――いわば部下なのでしょう? 主人の事をそんな風に言って良いのですか?」
「そう、確かに俺とシラサギはビワの部下だ。シラサギはアイツに陶酔しているけどね、俺は逆だよ。キライだ」
「…………」
「あんた馬鹿だね。ここから逃げられやしないよ」
「逃げようなどとは思っていません。賢者の石を完成させるのが目的です。ビワは食えない男ですが、目的は一致しています」
「あそ。まあ勝手にしなよ。そのうち後悔しても遅いよ」
「どういう意味です」
「一度ここに入ったら、普通の人間は出られないんだ。あんたの気が変わったとしても」
「ワタシの気は変わりませんよ」
「……そう。聞いてはいたけど変人だね」
「よく言われます」
チカゲはクロサギと共に夕陽を眺めていた。それはやがて沈み、空は黄昏に染まった。紫がだんだんと橙を覆いつくしていく。もうすぐ、夜が来る。




