表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

どうにかするから

「あの……怖くはないの?」


 一方的に話し始めて十分ほどした時だった。スフレが自分から口を開き恐るおそる質問する。


「怖いって?」


「ボクのこと」


「怖くないとは言えないけど、でもスフレの方がもっと怖いでしょ」


「……」


「グラディウス卿から俺のことをなんて聞いてるの?」


「ボクにかけられた呪いを解いてくれる人だと、それ以上は聞いてない」


「そうか……]


「でも、あのエルフはあなたのことをすごい人だとも言っていた……あなたは何をしている人なの?」


 たどたどしいがスフレは机に身を乗り出してセトマルに顔を近づけてきた。


「ただのしがない魔道具買取専門店の雇われ店長だよ。特技といえば呪われた魔道具とか装備品とかの除呪や装備したはいいものの自力で解除できなくなってしまった呪われ装備の呪縛解除。そのくらいさ、俺はきみたちエルフみたいに魔法も使えなければ戦士のような強さもない」


「でも……それはすごいことだと思う」


「ありがと」


 とりあえず笑って見せる。こんな幼い子に気を使わせてしまうとは、と自分に呆れながらセトマルは少し慣れてきたスフレに踏み込んでみることにする。


「スフレは呪われた原因って思い出せる?」


「わかんない、この服を着るまでの記憶が曖昧で、思い出せない」


「それを着ていると精神が安定するとか?」


「うん、少しだけ不安じゃなくなる」


 僅かに口角が上がった気がした。


 ――呪着とスフレの身体が良い感じに中和しているのか?


「まさかな」


 セトマルは彼女の身体を触ろうとした右腕の動きを止めた。


「どうしたの?」


「いやなんでもないよ、でもその服も喜んでる。俺の力不足で除呪できなかったから、ずっとクローゼットの中だった」


「この服の気持ちがわかるの?」


「少しだけね」


 指をスフレの前で動かして薄っすらドヤる。こんな男でも唯一無二のスキルはある。と心の中で言い放った後で世界を救うほどのことでもないけど。と付け加えた。


「まだ俺にはスフレの呪いをどうにかする力はないけど、どうにかするからさ」


「……でも嫌になったら捨ててもいいから」


「どうしてそんなこと言うんだ?」


「みんなそうしてきたから」


 脳裏にあの時のトラウマが蘇った。うかつに素手で触れば今度こそ呪いに殺されかねない。しかしセトマルはスフレの呪いについて探求したい気持ちでいっぱいであった。


 セトマルは呪い除けのグローブをはめてスフレの頭をなでた。


「きっと大丈夫だ」


「……」


「さぁ腹いっぱいになったらぐっすり寝よう。どんなに強い呪いだって健康な身体には弱いはずさ」


 セトマルは空になった食器をそのままに彼女の手を引いて階段を登っていく。


「あの……みんなあなたのことをなんと呼んでいるの?」


「あぁ俺のこと?」


「うん」


 ベッドにスフレが横になったとき不意に尋ねられたセトマルは一通り悩んだ後で、


「だいたいは店長(マスター)かな」


 彼女に呼ばれて誇らしい名称を答えていた。


「じゃあそう呼んでいい?」


「うん」


「マスター……」


 小さな声でつぶやく。 


「おやすみスフレ」


 毛布をかけて明かりを消す。


 ――とりあえず、やるべきことをやろう。


 心の中で頷きながら後片付けのため階段を下りて行った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ