呪縛解除は腹ごしらえのあとで
「これはなんという料理なの?」
数分待っておぼんに運ばれてきたのは汁物に漬物、白飯に焼き魚と卵。伝統的な日本の朝ご飯だった。
「あさていだよ」
「アサテイ?」
「朝定食だよ、帝都のエルフ街やメイン通りにも似たようなやつあるだろ」
「コースのこと? あるけど主食と一緒に前菜やスープがでてくるなんて聞いたことないの」
アンリエッタは不思議なものを見るように湯気が立つ料理を見つめている。そんな彼女を横目にセトマルは手を合わせて、おぼんにそえてあった箸を手に取ると慣れた手つきで白飯をつまみ上げ口に運んだ。
「う、うまい、この米の艶とか炊き加減とか、なにもかも完璧だよ」
厨房からチクヨに満足そうな笑みが見える。
「セトマルそれなんなの?」
アンリエッタの疑問符はセトマルの手に握られていた箸に向けられる。
「これは箸っていう料理をいただくための道具だよ」
「ハシ?」
「そう、でもこれは扱いが難しいからフォークとスプーンで食べなよ」
そうたしなめてセトマルは苦戦しているスフレに食べ方を教えようと席をよせた。
「スフレこれは手でつかんで食べるものじゃないんだ、慣れないうちはスプーンですくって……そうそのまま口に運んで……」
丁寧に伝える。スフレは言われた通りに白飯をすくい律儀に一粒ずつ小さな口で味わっていた。
「おいしい」
「だろぉ」
味噌汁をそそるアンリエッタは仲睦まじい二人の姿を遠い目をしながら見ている。
「あっおいしい」
「でしょ」
出てしまった言葉にセトマルは反応した。
「チクヨさん旨いってさ」
「よかった、口にあわんかったらどないしよか思ったけん」
「ちょっとそんな恰好でこっち来ないでほしいの!」
厨房から出てこようとしたチクヨをアンリエッタは執拗に止めに入る。
「セトマルさっさと食べてチクヨの呪縛解除するの!」
「えぇせっかくだから味わって食べたいのに」
机の下で蹴りをくらう。
「はやく食べて、子どもの教育上にもよくないんだからね!」
セトマルは痛めた足をさすりながらスフレと目を合わす。二人はがつがつと料理を平らげるアンリエッタがどうして不機嫌なのかよく分かっていなかった。




