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サービス

 ごった返す人込みを避けながら裏路地をひたすらに進んでいく。


「よくこんな抜け道知ってるの」

「帝都暮らしも長いとね」


 セトマルとアンリエッタはスフレの手を握ってすたこらと歩いて行く。これからセトマルが向かおうとしているお店は観光客や地方で活躍する冒険者は知らない、帝都の商工会に属している商人たちや異世界転移民の憩いの場である。


「ここだよ」


 古びた建物を視界にとらえて指をさす。それは古民家をリフォームしたような風体であり、メイン通りから少し離れたところにひっそりと構えていた。


「えぇ~こんな小汚いとこ嫌なの」


「文句言うな、俺の行きつけだぞ。ちょっと古めかしいけど味はめちゃくちゃ旨いんだ」


「でもまだ準備中って書いてあるの」


「一般客にはね、でも常連さんは別だ。とびきりのサービスがある」


 セトマルは常連であることを遠回しに自慢するもアンリエッタは冷ややかな目でスフレの顔を覗いた。


「それでジャンルはなんなの?」

「日本食」

「ニ、ニホン?」

「いいやこっちのはなし」


 追及されるのを避けるようにセトマルは店に入っていく。


「チクヨーさーん」

「はーい!」


 厨房から元気な声が聞こえてきた。どうやら彼女は仕込み中のようだ。


「チクヨさんちょっと遅めの朝ご……は」


 厨房から姿を現したヤナの格好にセトマルはフリーズする。


「セトマルくんいらっしゃい、あら今日はお友達も一緒?」


 アンリエッタは急いでスフレの目を両手で覆った。


「あれどげんしたと?」


 きょとんと小首を傾げる。今この瞬間に鏡でもあればセトマルたちの反応は正当性を保たれるに違いない。


「どげんもなにもなんですかその恰好は!」


 声を張り上げる。フライパンを片手に持って立っているチクヨの服装は裸にエプロンを装備したまごうことなき裸エプロンであり、アンリエッタは軽蔑の視線をセトマルに向けるのであった。


「サイテーなの……常連さんのサービスがこれ?」


「ち、ちがうよ、ちょっと二人とも距離取らないで、チクヨさんそのいかがわしい格好は? ここ数日でなにがあったの?」


「あぁこれ?」


 しかしチクヨは気にも留めない態度でピンク色のエプロンの肩ひもをつまんだ。


「今朝、市場に買い出しに行った帰りに旅商人もろたとよ、特別なアイテムだけどお姉さん愛らしかけんタダで譲っちゃるって、そげんこと言われたらもらうやろ」


「それでなんのためらいもなく装備しちゃったの?」


「そう、でもこれ着けたらその他の服着れんくなるけん。こげん姿になっとうよ」


「じゃ、じゃあなおさら俺が呪縛解除してあげるからはやくこっちへ」


 万能ジャケットの内にある収納ポケットから聖書を取り出そうとすると、彼女は慌てて首を横に振った。


「やけん、これ着てからばり調子良かよ! むしろいつもより美味しくつくれたけん。食べてって」

 豊満な胸を揺らしながら迫ってくるチクヨにセトマルはおされ気味だったが、しっかりとスフレの手はつないでいた。


「アンリエッタそんな目をして俺を見ないで、いかがわしい店じゃないんだ」


「どうだか、信用できないの」


 アンリエッタはそっぽを向いて店を出ようとしたが、そんなときスフレのお腹が鳴った。


「マスター」


「そうだよね、お腹減ったよね。アンリエッタ、スフレもそういってるし、付き合ってくれよ」


 アンリエッタは不服そうにセトマルを眺める。その先にいる同じ黒髪のチクヨの自信満々の笑みを見て息をついた。


「まぁいいの、どうせ奢ってもらえるし」


 席に座った彼女にチクヨーは嬉しそうにフライパンを天井にかがげ、


「最高んの朝飯つくっちゃるよ」


 そう言って背中を向けると彼女の綺麗なお尻が丸見えになっている。セトマルがつい目で追うと、後ろから重い鉄拳を背中に喰らった。






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