【Two Hundred Party -200文字小説-】
――宇宙人は、きっとどこかに。
遠い遠い星からやってきて、ひょっとしたら人間に姿を変えているのかもしれませんね。
――ある日あるところに、男の人が咳きこんでいました。
彼は会社を一度も休んだことがないのがとりえでした。だけど今日は高熱に倒れてしまい、しかも会社に報告も出来なかったのです。
全快して会社に行ってみると、上司はぽんと彼の肩を叩きました。
「昨日はよくやったな」
「そーら、ポチ。行ってこーい」
男は棒切れを投げて、愛犬とたわむれている。
走っていった愛犬とすれ違うように助手がやってくる。
「博士。ダイナマイトが完成したというのは本当なんですか?」
「あぁ、この筒だよ。ひとつ試してみよう」
言うと博士はダイナマイトに火をつけて、窓の向こうに投げ捨てる。
しばらくたつと、愛犬ポチが棒きれをくわえて帰ってきたではないか。
その棒きれは、ぱちぱちと火花を吹いていた。
「ねぇあなた。赤と青、どっちが好き?」
女子トイレでいきなりぶしつけなことを聞かれた。
いわゆるトイレの花子さんというやつだ。赤と答えれば血まみれ。青なら血を抜かれるという面倒な幽霊。
とりあえずあたしは答えてやった。
「じゃあ、ギャラクシーシルバー」
「え?」
「クールパープル」
「??」
「フロスティピンク」
「あの、ちょ……」
ドアの向こうから泣き声が聞こえ始める。
ふん、美大出身をなめんなよ。
彼女はサキュバスでした。
男を貪り、夢を見せる生き物です。
ある日彼女は男の子に出会いました。
まだ年端もいかない小さな子供です。
だから餌としてではなく、ただの話相手として接していました。
他愛もない話をして、互いに笑い合う関係です。
次第に男の子は大きくなっていって、やがて手足が伸びきるほどの年頃になりました。
サキュバスの眼の色が変わります。
どうしよう。
最近、彼の夢ばかり見る……。
私はもうすぐ死ぬ。
朦朧とする意識の中で、そんなことを考えていた。
視界の片隅で、旦那が泣きながら私の手を握っている。
だけど、ふと考える。
本当に旦那は旦那なのだろうか? ひょっとしたら宇宙人が化けているのでは?
どうでもいいか、と私は思う。
人間であれ何であれ、彼は長年わたしと連れ添ってくれた。一緒に笑ってくれた。それでいいじゃないか。
だから旦那に言った。
夢を見せてくれてありがとう、と。