表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『キミガスキ』  作者:
1/7

「告白」

ころりと消しゴムが机から転がり落ちる。


響は反射的にそれを拾った。


「あ…わりぃ。どーも」


基樹は受け取ろうと手を差し出す。


「どういたしまして」


そう言って、響は基樹の掌に消しゴムを置いた。


その時、微かに触れ合った肌に、基樹は言い様のない感情を覚えた。






それから二年後の春ー。校舎裏の桜の木の下に、基樹は響を呼び出した。





「俺、あんたのこと好きなんだけど」


基樹と響の間に、一陣の風がさっと通り過ぎる。


「………………………………………………………………僕は男ですので。じゃ」


「っ!!ちょっと待て!!」


去って行こうとする響の腕を、基樹が乱暴に掴んだ。

響は怪訝そうに縁のない眼鏡を押し上げる。


「まだ何か?」


「人の一世一代の告白に、なんつーリアクションだ!!!?」


「そう言われても…。あなたが勝手にしたことじゃないですか」


「そ…それは」


「それから、僕は男だから無理という反応、非常に理にかなってませんか?」


響の言葉に、基樹はぎっと唇を噛みしめた。


「…じゃあ、俺があんたのこと好きっていう感情は、理にかなってねぇってことかよ!?」



それまで無表情だった響の顔に、困惑の色が滲んだ。


「俺はずっとずっとあんたのことが好きだったんだ!ワリぃか!!」


感情が昂って、基樹の目頭があつくなる。


「誰も…悪い、とは言ってないんですが」


「うるせぇっ!!」


「まったく…」


目尻にたまった涙の粒を隠すために俯いていた基樹の顎に、ふと響の手が伸びる。

ぐいと顔を持ち上げられて、響の方を向かされた。

突然の事態に、基樹は赤らんだ目を丸くした。

そうしているうちに桜の木に体が押し付けられた。


いつの間にか、響の片手が腰に回されている。


「なッ…なんだよ!!」


声が上擦る。

響はくすと笑うと、基樹に口づけた。

基樹が目をむいて響の背中を叩いて抗議するが、聞き入れられない。そのうち、固く閉じた基樹のそれを響が啄むようにすると、徐々に体の力が抜けた。

気がつくと、基樹は夢中になって響の唇に応じていた。

響が唇を離す度、基樹の口から吐息が漏れる。

基樹の中に響の舌が入ってきて、甘く撫でるーと、基樹は膝から崩れ落ちた。


とっさに響の手が基樹の身体を抱きとめる。


「顔に似合わず随分純心で…正直驚きました」


響は苦笑して、基樹の耳元で囁いた。

基樹は赤くなる。


「うるせぇ…!中村、一体何のつもりだ!?意味分かんねぇ!!!!」


響は軽く蔑むように基樹を見やる。


「この状況で分からない?…じゃあ、鈍い頭でよーく考えることですね」


「おまっ…!」


「早くしないと帰りますよ」


そう言って基樹の身体から離れてしまおうとする。

基樹は慌てて響の背中に腕を回して、それを阻んだ。


「…つまり、こうしていいってことか?」


「さあ」


「~~~っ!ワケ分かんねぇ!!」


「あんまり大きい声出さないでくれますか?」


「あ、ワリ…って違うっ!!時間無駄にしたくなきゃ、話をそ…」


基樹の言葉を響のキスが塞いだ。


「じゃ、単刀直入に。僕もあなたが好きみたいです」


響のセリフに、基樹の頭は真っ白になる。

ただただ嬉しさが込み上げて、基樹は響の背中に回した腕に力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ