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御簾の中

出て行った恒が、また戻って来たかと思うと、炎嘉に告げた。

「炎嘉様、御簾へご移動ください。」

襲撃されたか…!

炎嘉は、歯軋りした。

今夜は箔炎を守っていたが、狼はどうやら狩人がまだ生きていると考え、探して炎嘉を襲撃して来たのだろう。

とはいえ、炎嘉はまた前日の駿と同じく箔炎の白先だ。

いくらなんでも、皆が気付くのではないかと思った。

御簾の中に行くと、先に追放された仁弥、塔矢、駿が揃って座っていた。

「お、炎嘉殿か。ここから見ておったら全部丸見えでなあ。」

仁弥が言う。

駿が、頷いた。

「夜時間に、外に狼達が出て来るのよ。まだ誰一人失っておらぬわ。」

炎嘉は、眉を寄せた。

「何と申した?では、維心が偽か。」

維心は、仁弥が黒だと言ったのだ。

仁弥は、頷く。

「我は村人。言うたではないか、狼ではないと。」

だったらまずい。

炎嘉は、夜が明けて箱から出て来る皆を、御簾のこちら側から見守った。

このまま、今日も狼を追放できなかった時、狂人も残っているのだからまずい事になる。

侍女が、言った。

「こちら側からは声があちらへ聴こえませぬが、あちらの声は聞こえますので、ご歓談くださっても大丈夫でございます。何か、飲み物をお持ち致しましょうか。」

炎嘉は、飲んでいないとやっていられない、と言った。

「では、酒を持て。」

侍女は、頭を下げた。

「はい。」

そうして、まんまと追放された村人達四人は、こちらでひたすらに観戦することになったのだった。


恒が、言った。

「昨夜は、炎嘉様が襲撃されました。では、本日の昼時間は7分間です。どうぞ。」

少しずつ減って来る。

皆が焦る心地になっていると、樹伊が言った。

「霊媒結果は白だった。」

昨日は先を越されたので、今回は先に言わねばと思ったらしい。

維心も、言った。

「結果は白ぞ。塔矢は、狼ではなかった。占い師の結果を聞きたい。」

すると、箔炎が言った。

「焔が白ぞ。こやつにしては黙っておるからもしやと思うたのに、こやつは狼ではなかった。」

翠明が、言った。

「我は見つけたぞ。」皆が驚いた顔をするのに、翠明はしれっと続けた。「公明が黒。狼ぞ。」

公明が、え、と目を見開いた。

「我は狼ではない!ということは、翠明が偽物か。」

箔炎が、何度も頷いた。

「だから言うたではないか。翠明は偽者で我が本物なのだ!そもそも、連続で我の白先が襲撃されておるのに、おかしいとは思わぬのか。」

しかし、漸が言った。

「分からぬぞ。白を出しておったら吊り先に指定できぬから、さっさと処理しておこうと思うて襲撃して行っておるのやも知れぬではないか。」

どちらにも取れる。

公明が、言った。

「だが、翠明が偽物ぞ!我は、本日は翠明を吊る事を主張するぞ。」

維心が、言った。

「…だが、我らから見てどちらか偽なのか分からぬ。何しろ、狼でも同じ事を言うだろうからぞ。我としては、公明を吊って色を見たいと考えておる。白なら、翠明を吊れば良いではないか。箔炎の占い結果が明日も出るだろうしの。いくら七縄五狼陣営だとしても、そのうちの一人は狂人であって、最悪もう一縄ぐらいミスしても大丈夫であろう。主らから見て、であるがの。我は、初日に黒を見ておるから、別に問題ないのだが。」

樹伊が、言った。

「我は納得できぬ!もし公明が白だったら、一気に面倒な事になるのだぞ。狂人が生きているのだろう?それとも、維心殿も狼で、翠明も狼という事はあるのか。狂人は、もう襲撃されたか吊られたかしておるとか。」

蒼が、首を振った。

「それは分からない。誰がどう騙っているのかなど村人からは分からないから。狼には分かっているだろうけど。」

維心が、言った。

「ならば、我はもう黒を一つ知っておるから我を吊り、明日樹伊を吊るでも良いがの。」え、と皆が維心を見ると、維心は言った。「そうであろう?我目線では、まだ縄に余裕があるのだ。なので、我が吊られても終わる事はない。なので、我を落としてから、我目線で必ず狼陣営である樹伊を落とす。そうしたら、必ず村目線では一狼陣営が落ちる。両方を必ず吊り切ることが肝要ぞ。そうでないと、また狼に有利な事になるやもしれぬのであろうが。」

む、と皆が黙る。

すると、漸が言った。

「…自分を吊っても良いと言うということは、維心は真なのではないのか。縄に余裕があることを知っておるから、そう言えるのでは。我としては、維心が生きている間に公明を吊って色を見てもらい、どちらが真占い師なのか確定させたい。そうしたら、明日からが楽になろう。維心が白だと言ったら翠明が黒、箔炎が真。黒だと言ったら翠明が真箔炎が偽ぞ。それで行こう。」

樹伊が、言った。

「我目線では苦しいのだ!己を吊っても良いというからには、維心殿は狂人なのではないのか。狼さえ生き残ったら良いと考えておるからでは。」

焔が言った。

「なぜにそんなに公明を吊る事を否と申すのよ。まるで庇っておるようであるな。そも、公明は箔炎目線でもまだ占っておらぬのだから、もしかしたら翠明が狂人で間違って正しい結果を言うておる可能性もあるのではないのか?吊って見るべきだと我も思う。維心の意見は白く見える。」

皆の表情は迷っている。

蒼は、もう一押しだと言った。

「…狂人が残っていたとしても、狂人には焔が言うように狼が誰なのかわからないんだ。狼からも、まだ狂人がわからないんじゃないかな。ここは、黒結果が出ているんだから公明を吊ってみて、色を見よう。その上で、明日誰を吊るのか考えたら良いと思う。でないと、霊媒から吊って間違ったら、正確な色がもう分からなくなる。リスクは高いと思う。」

渡が、息をついた。

「…確かに、箔炎は白ばかりで黒結果が出ておらぬし、ここは黒が出た公明をとりあえず吊るのが良いのではないかの。箔炎目線での黒がまだわからないのだから、ここは翠明目線の方を吊るべきだろう。」

樹伊が、言った。

「…ならば、明日の霊媒結果は維心殿が先に。」皆が樹伊を見ると、樹伊は続けた。「色が白であろうと黒であろうと、もし維心殿が狂人であったらどちらか分からぬから、我と結果を違えることができぬ。先に出せば、我が白と言ったら黒と、黒と言ったら白と変えることができぬから。」

維心は、言った。

「そっくりそのまま返そうぞ。我とて主に有利なことはしたくない。」

すると、蒼が言った。

「せーのっで、一緒に言えば良いんです。」と、維心を見つめた。「信じてますから。」

維心は、分かっているのかいないのかわからないが、蒼の目を見返して頷いた。

「ならばそれで。明日の結果は同時に出そう。」

蒼は、内心ほくそえんだ。

何を言おうとここで公明を吊れたら、今夜狩人の護衛さえ何とかできたら狼陣営の数が多くなる。

なぜなら四人が消えて、今11人、公明が吊れて10人、今夜襲撃して九人。

全員が生き残っている狼陣営は、数で押せる。

パワープレイに、持ち込めるのだ。

仮に狩人が生きていて護衛成功しても、半分なので同票になり、吊りナシになってその夜襲撃して、次の日勝ちだ。

この投票さえ乗りきれば終わりなのだ。

「…時間です。投票を始めてください。」

恒が言う。

皆は、粛々と投票を始めたのだった。


「…ならぬと言うに!」炎嘉が、御簾の中で叫んだ。「維心が狂人であろうが!このままでは明日が!」

仁弥が、諦めたように言った。

「無理ぞ。聴こえぬし、我らにはどうしようもない。このゲームは負けよ。ほんに人はこんな騙し合いの遊びをよく思い付くものよな。狩人が居ったら何とかなるのかも知れぬが。」

炎嘉は、むっつりと言った。

「…我ぞ。我が狩人。」

すると、駿が言った。

「誠か!ならばもう無理よ。困ったものよなあ。踊らされたわ。もう無理よ、次があれば勝つしかないわ。」

炎嘉は、拳を握りしめた。

…成す術なく負けるしかないとは…!

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