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チートで怠惰な聖女様のために、私は召喚されたそうです。〜テンプレ大好き女子が異世界転移した場合〜  作者: 櫻月そら
【第1章】異世界ものは大好きですが、フィクションで間に合ってます。
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第9話 王家の秘密


 柔らかな笑みを浮かべたまま、アルフォンスは話を続ける。しかし、その表情はどこか悲しげでもあった。


「一週間後にリカードが目を覚ました時は、城中(しろじゅう)が大騒ぎでした。幸い、命に別状はなく、その後も王太子としての政務も問題なく行っていました。しかし、聖女についての記憶や知識が抜け落ちていることに、私と妻が気づいたのです」


「チエさんのものだけではなく……、ということですか?」


「その通りです。王族、王太子として幼い頃から学んでいたはずの聖女に関することのほとんどを忘れていたのです。覚えていたのは、『聖女と呼ばれる人が存在する』『異世界からやってくる女性』『聖女は国を助けてくれる存在である』ということだけでした」


「それだけでは足りないの?」


 スズが不思議そうに尋ねた。


「そうですね……。まずは、アリア様がお怒りになった通り、自分たちと同じ生身の人間だと認識できないこと。そのため、自分たちよりも多くのことができると思い込んでいます。まるで、神のように。そして、スズ様が『一休みしたら、お役目に戻る』とお伝えになった内容を忘れていることなど、問題は少なくありません」


「え、じゃあ、私が伝えたことを陛下が忘れたから、アリアちゃんを呼んだの?」


「そのようです。リカードは、いずれスズ様が復帰してくださると会話の内容を忘れ、その焦りや不安を孫のアーヴィンにこぼしたようです。そして、召喚の儀式がアーヴィンの指揮により執り行われてしまいました」


(とりあえず、私が召喚された理由は分かったけど……。なんか、この親子三代の連携が取れてなくてスッキリしないんだよね)


「リカードの状態について、表向きには魔力や巫女の力による忘却ではなく『(やまい)』で、という理由になっています。そして、どうやら新しい記憶から失わていく傾向があるようです。もしかしたら、アリア様の存在、召喚の儀式が行われたことすら今頃は忘れているかもしれません」


(え、そこまで……? 短期記憶から消える、か。認知症の症状に似てるのかも)


「周囲には十分注意を促しておきますが、もし、失礼があった場合はご容赦いただけないでしょうか。お怒りはどうぞ、すべて私に。退位したとはいえ、儀式が行われることを直前になるまで把握できなかった。私の失態です。リカードの事情を知っているのは私と私の妻、そして、メリッサだけだというのに」


「殿下も知らないの? 一年ここにいるけど、そんな話、殿下から聞いたことないよ」


 スズはそう言いながら、頬杖をついた。


「その……。恥ずかしながら、『母親の嫉妬によって、父親の脳や記憶に障害が……』とは誰も話せなかったのです。当時、メリッサは自ら命を絶とうとしました。しかし、私の妻が常に寄り添っていたこと。そして、幸いにもアーヴィンを授かったことにより、何とか踏み留まることができました」


 アリアもスズも絶句したが、アルフォンスの『妻』という言葉にアリアは反応した。


「アルフォンス様のお妃様は、今もご健在なのですか?」

「存命ではあります。しかし、自らの足で歩くことができず、視力も光を感じる程度となっています。妻の側にいることを私が望んたため、退位することを決めました。しかし、それがアリア様の人生を左右するような事態になってしまうとは……。本当に申し訳ございません」


 アルフォンスは、深く深く頭を下げた。


「アルフォンス様、私にはー?」

「スズ様が聖女として選ばれて、こちらにお越しになった理由は分かりませんが……。国の安寧のためにと、スズ様のお力や存在に甘えて無理を強いていることは事実。本当に申し訳なく思っております。すべて至らない王家の責任です」


 その言葉を聞いたスズは、ニヤッと笑った。


「ごめんね、言ってみただけ。私はアリアちゃんみたいに魔法で無理矢理連れてこられたわけじゃないし。こっちの世界も、わりと気に入ってるしね。ただ、サークル活動だけがね………っ!」


 スズはテーブルに頬を付けるように伏せると、拳でテーブルをドンッと叩いた。


「はは、スズ様は本当に『ドウジンシ』という物がお好きなのですね」

「好きなんてレベルじゃ済まないんですー」

「これは失礼しました」


(サークル活動と同人誌って言葉も通じるのか……)


 アリアは二人のやり取りを微笑ましく見つめていたが、まだ気になることは多く残っている。


「メリッサ様も、お体の調子が悪いんですよね?」

「……はい」


 アルフォンスは表情を陰らせると、窓から見える庭園に視線を向けた。

お読みくださり、ありがとうございました。



追記 2023年 12月14日


チエは召喚ではなく、純粋(自然?)な転移です。

食中毒と心が弱っていたことが転移の原因。


スズも召喚ではなく、転移です。

転移した理由は、両親との関係と推測されているけれど、現状は正確には分かりません。


ただ、国がひどく荒れていたため聖女は必要でした。

スズが来なければ、おそらく別の誰かが転移していました。(召喚と転移の半々くらいの状態)


スズについて、召喚なのか転移なのかの描写があやふやで、ぶれている部分がありましたので修正いたしました。


混乱させてしまい、申し訳ありません。

今回以降も、ぶれている箇所があれば修正していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] えっと、 S(せ)I(い)J(じょ)48(フォーティエイト)です( ´∀` )
[一言] こりゃあ近い内また、油断してっと聖女召喚されてしまうとかSIJ48とか結成あるんじゃね(ォィ
[良い点] まだまだなんか事情がありそうな雰囲気ですね。
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