第81話 お姫様と鷹 2
※2025年2月17日
改稿いたしました。
「それで……、何を話してくれるの?」
アリアは固唾をのんで、ロードに尋ねた。
「ニセモノノ騎士、ドウナッタカ、知ッテル?」
(その話!)
聞きたかった話にアリアの心拍数が上がる。
「亡くなったとは、聞いてるけど……」
「ドウヤッテ、死ンダカ、知ッテル?」
「それは聞いてない。不明瞭な点が多いって殿下が言ってたけど、それ以上は教えてもらえなかったの。あ、化学物質の毒に意識が向いたのは、あの偽騎士の死因が理由みたいなことは言ってたかな」
「フーン。ヤッパリ、過保護ダネー。アノネー。気ヅイタ時ニハ、死ンデ燃エタミタイニ、灰ニナッテ消エテタヨ」
「気づいた時には、死んで灰になって消えてた? 牢の中で? ロードも見たの?」
「ウン。セッカク、オレガ捕マエタノニ」
「やっぱりあの後、ロードが捕まえてくれたんだ?」
「ソウダヨ。エライー?」
「うん。いいこいいこ。ロードはすごいね」
「フフフー。オレ、イイコ」
(本当に可愛いわ、ロード。殿下に返したくなくなってきた……。それにしても――)
口封じにしても自害にしても、遺体くらいは残るだろう。
ロードが言ったことが事実であれば、周囲の人間に気づかれないような短時間で、人間を骨ごと消せる方法があるということだ。
(殿下とリラが隠したかったのは、こういう部分か……。別に、これくらいで怖がったりしないのに。本当に過保護ね)
それでも、アリアの心を守ろうとしてくれたことについては、口元がほころぶ。
「その人、本当に死んでたの? 灰を撒いてから逃げたとか……」
「ウーウン。灰カラ、アイツノ匂イガシタカラ、間違イナイ」
「そう……」
(火葬しても骨は残るしなぁ。でも、もっと火力を上げたら……? 残り方は一定じゃないよね。水死のご遺体の場合は燃えにくいから、火葬場でも温度上げたり、時間を調整したりするって聞いたことあるし。火力……。異世界……。サラマンダーとか?)
「ねぇ、ロード。この世界にサラマンダーっている?」
「イルヨー。オレノ友ダチ」
「友だち!?」
「全部ジャナイヨ? ボスダケ。勝負シテ、勝ッタホウノ言ウコト聞ク約束シタ。オレガ勝ッタカラ、悪イコトスルナッテ言ッテオイタ。デモ、ボスダカラ、全部ノサラマンダーニ、命令シテタヨ」
(うわー、『王太子殿下の愛鳥はチートでした』か。しっかり魔獣討伐のお手伝いできてるよ。でも、それって本当に友だちなんだろうか……。まぁ、お互いに傷つけないなら和平ってところかな)
アリアは苦笑しながらも、ロードの話を受け入れた。
「悪いことするなって、『人間や建物を襲うな』とか?」
「ソウ。アトハ、『動物ヤ森ヲ、不必要二燃ヤスナ』ッテ」
「そう……」
(その約束を守ってるなら、サラマンダーは人を襲わない。っていうか、そもそも城の中でサラマンダーが火を吹いたら、人ひとりの被害で済まないし、誰かが気づくよね? うーん、じゃあ、やっぱり魔法か薬品なのかなぁ)
「偽騎士が生きてるところを、最後に見たのは誰かわかる?」
「牢屋ヲ見張ッテタ騎士ト、キュウテイイ」
「宮廷医……」
「アイツ、アヤシイヨネー」
「怪しいよねー。ロードは、殿下から宮廷医の見張りを頼まれてるの?」
「ウーウン。アイツ、オレノ気配ニ気ヅク。マーリンガ、シバラク泳ガセルッテ言ッてタカラ、警戒サレナイヨウニ、オレハ離レテル」
「そっか……。殿下から、宮廷医のことで他にも何か聞いてる?」
「ウーン……。アーヴィンハ、オレガ話セルコト知ラナイカラ。人間ノ言葉ヲ、理解デキルノハ知ッテルケド。長イ付キ合イダシ」
鷹の口から『長い付き合い』という言葉を聞くと、何とも不思議な気分になる。
「ロードが話せること、殿下は知らないんだね……。私以外には誰かと話すの?」
「シェリルト、メリッサトハ、話スヨ。アトハ……、マーリントモ話ス」
『マーリンとも話す』と言った表情や口調が、何とも不服そうだ。
「殿下とは話さないけど、マーリン様とは話すんだ?」
「バレチャッタカラ……。スゴク、オモシロガッテタ」
そう言うと、月明かりの中でロードの目がうるうると光った。
「あー……、なるほど。それは大変だったね」
(サラマンダーを倒せる魔獣の鷹まで遊び相手にしてるのか、あの人……)
「大変ダッタヨ……」
「よしよし。いいこ、いいこ」
アリアはあらためてロードを抱きしめて、背中を撫でた。ぽすんと頭を預けてくるロードが可愛くて仕方がない。
「つらいことがあったら、いつでも遊びにおいで。夜なら、この部屋には私しかいないから」
「ウン。アリガトー」
こうして、アリアは貴重な情報源と、もふもふの癒やしを手に入れた。
お読みくださり、ありがとうございました。
ロードの話し方は幼児のイメージです。
亡くなってしまいましたが、作者が飼っていたインコも少しだけモデルにしています。
オウムと同じ位の知能があったようで、一回聞いただけで言葉を覚えたり、とても感情表現が豊かな子でした。
「賢いー?」「可愛いー?」と聞いてくるので、「賢いよ。可愛いよ」と返事をすると喜ぶような感じで。
体調が悪いと、「どしたん?」と聞いてくれたり、小さいおじさんでも入ってるのでは……と本気で考えたことも、しばしば。
そんなこともあり、ロードはお気に入りのキャラクターです。
読者様にも気に入っていただけたら嬉しいです(ꈍᴗꈍ)
次話もどうぞよろしくお願いいたします。




